高速道路の渋滞、走行車線と追越車線はどちらが速い?
ウェザーニュース / 2018年12月27日 11時15分
年末年始にかけて高速道路の帰省・Uターンラッシュによる渋滞が予想されます。ウェザーニュースでは12月11日に「渋滞時、車線変更する?」というアンケートを実施しました(回答:9,828人)。
調査では男性ほど「車線変更する」
![](http://smtgvs.weathernews.jp/s/topics/img/201812/201812210145_box_img0_A.jpg?1545749084)
結果は全体の約3割が「車線変更する」と回答。さらに男女別で見ると、「車線変更する」割合が女性の26%に対して男性は36%と、男性の方が車線変更する傾向が強いようです。
「車線変更する」と回答した人には、「自分がいる車線が混んでるように思って移動したくなってしまう」「速く進みたいから!」などのコメントがありました。
では、実際に高速渋滞に巻き込まれた場合、走行車線と追越車線では、どちらが速く進むのでしょうか?
最も速く進む車線は…
![](https://smtgvs.weathernews.jp/s/topics/img/201812/201812210145_box_img1_A.jpg?1545733008)
高速で渋滞に巻き込まれたら、迷わず左端の走行車線に行きましょう。実は左車線こそ、渋滞の時に最も速く進む車線なのです。
「高速道路で平均40km/h以下での走行を余儀なくされている状態を私たちは渋滞と呼んでいますが、渋滞時の車線別平均時速で比べると、左端の走行車線が最も速いことがわかりました」と語るのは、渋滞学を研究する東京大学教授の西成活裕先生です。
上の図を見ると、平常時は平均速度が80km/hを超えている追越車線が一番速いのは一目瞭然です。
しかし、平均速度が40km/hを下回る渋滞時(図では、赤い線が引かれている部分より下のエリア)は、第一走行車線(左車線)が25.6km/h、第二走行車線(真ん中)が20.6km/h、追越車線(右)が16.3km/hとなっており、第一走行車線が最も速いという結果になっています。なぜこのような逆転現象が起きているのでしょうか。
左車線が速い理由
「それを説明するには、まず渋滞のメカニズムから話す必要があります。渋滞は、上り坂やサグ部(ドライバーが気づかないほど緩やかな上り坂)を中心に、車が密集することで起きます。
車が密集していると、前の車が何かの拍子に少しでもブレーキを踏むと、その後ろの車がもう少し強くブレーキを踏み、そしてその後ろの車がさらに強くブレーキを踏み……というようにブレーキの連鎖が起き、しまいには渋滞が起きてしまうのです。
渋滞時は、ドライバーに『速く走りたい、早く渋滞を抜けたい』という心理が働きます。そうすると、右側の追越車線に車が集中してしまうのです。
データでは渋滞直前に約4割の車が追越車線に集中しています。車が密集するようになった追越車線は、ちょっとしたきっかけでブレーキの連鎖が起きて渋滞し、結果として左側の走行車線よりも遅くなってしまうのです」(西成先生)
![](https://smtgvs.weathernews.jp/s/topics/img/201812/201812210145_box_img3_A.jpg?1545732936)
追越車線が遅くなってしまう原因が車の密集にあるのなら、渋滞時にはほとんどの車が走行車線を走るようになり、追越車線の方が速くなるのではないでしょうか。
「その通りです。本質的には『最も空いている車線』が最も速いということになります。ただし、私が研究を始めて以来『左車線が最も空いていて、最も速い』という傾向にあまり変化がないので、混み始めた時は左車線が最も速い、と思っていただいて問題ないと思います」(西成先生)
ジグザグ走行は無益
時々、渋滞で止まっている車の間を縫うように、ジグザグ走行をする車を見かけます。ジグザグ走行が危険であることはさておき、実際の速さという点ではどうなのでしょうか。
「ジグザグ走行は大変難しく危険な行為であり、しかも燃費も悪いので全くおすすめできません。しかも、あるテレビ局の協力を得て実験したことがありますが、ジグザグ走行をしたところで、左車線にずっといる車には敵わないことが分かっています。
プロのドライバーに渋滞道路をジグザグ走行してもらい、その一方で一般の方にずっと左車線で走ってもらいました。その結果、ずっと左車線にいた一般の方の方が早く目的地にたどり着いたのです」(西成先生)
目的地が比較的近い場合は、ジグザグ走行の方が早いこともあるそうですが、一定程度長距離を走るのであれば、左車線の方が速いというのが正解でした。
渋滞対策に個人ができること
最後に、渋滞対策として個人には何ができるのか、西成先生がアドバイスします。
「『スローイン・ファーストアウト』を意識して欲しいと思います。渋滞に入るときは前の車のすぐ後ろに詰め、逆に、渋滞を抜けそうになると、前の車との車間距離が充分に開いてからスピードを出す車が多いのです。しかし、これでは後ろがどんどん詰まっていき、前がなかなか空かないので、渋滞が広がってしまいます。
これとは真逆に、渋滞にはゆっくりと近づき、抜けるときはさっと抜け出すという『スローイン・ファーストアウト』を個々人が実践すれば、渋滞も少しは緩和されることと思います」(西成先生)
参考資料など
『渋滞学』(西成活裕、新潮社)/『図解雑学 よくわかる渋滞学』(西成活裕、ナツメ社)
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