冬に多発 一酸化炭素中毒の怖さ
ウェザーニュース / 2019年2月12日 17時15分
「一酸化炭素中毒」という語句は、聞いたことのある方が多いかと思います。本人が自覚しないうちに、いつの間にか死が迫ってくる…という恐ろしい現象であることはご存知でしょうか。
一酸化炭素中毒の多くは、正しい知識を持っていれば防ぐことが可能です。しっかりと理解しておきましょう。
一酸化炭素中毒とは
一酸化炭素は炭素の酸化物の一種で、常温・常圧で無味無臭、無色、無刺激の気体です。また、空気よりやや軽く(空気=1のとき、一酸化炭素=0.967)、可燃性があります。
有機物が燃焼する際、酸素の少ない状態で燃焼したとき、つまり不完全燃焼となったときに発生します。
普通、一酸化炭素を吸っても自覚症状はなく、中毒症状も風邪に似ていて、頭痛、めまい、吐き気などがみられます。しかし、高い濃度の一酸化炭素を吸った場合は、意識不明となり、最悪の場合、死に至ります。
一酸化炭素中毒のしくみ
酸素は血液中の赤血球に含まれるヘモクロビンと結びついて全身に運ばれます。しかし、ヘモクロビンは酸素よりも一酸化炭素の方が200倍以上結びつきやすいため、一酸化炭素を吸い込むとヘモクロビンと結びついてしまいます。
すると、酸素が体内に回らなくなり酸素欠乏状態を招き、酸素を必要とする脳などがダメージを受けるのです。
どんなときに起てしまうのか
(1)車内に排気ガスが逆流
自動車の排気ガスはマフラーを通って車外に排出されます。しかし、整備不良で排気系に穴が開いてたり、大気へ放出される道筋がふさがれると、排気が車内に逆流してくることがあります。特にこの季節に気をつけたいのが地吹雪の時です。大雪で立ち往生し、そこにできた吹き溜まりにマフラーが埋もれて排気が逆流してしまうのです。
JAFによるユーザーテストでは、クルマの周囲を雪で埋め、ボンネットの上まで雪を被せた状態でエンジンをかけた状態にしておくと、10分後に一酸化炭素濃度は400ppmに上昇し、その後6分で1000ppmに達しました。この数値は、身体への影響が「3時間ほどで致死」という、非常に危険な状態になります。
予防策はエンジンを切ることですが、寒さで難しいようならマフラー周辺をこまめに除雪することです。
同ユーザーテストでは、マフラー周辺を除雪せず、運転席の窓を5cmほど開けて外気と入れ替えを行った場合の一酸化炭素濃度測定では、一酸化炭素濃度低下の効果がほとんどありませんでした。大雪予報の時は、車内に除雪用のスコップや防寒着、毛布などを用意しておくのが賢明でしょう。
(2)屋内での火器使用時
家屋内でも一酸化炭素中毒は起こります。冬に窓を閉めっぱなしにして暖房器具、カセットコンロ、ガス湯沸かし器など火器を使うことが多くなるため、一酸化炭素中毒発生件数が増加するので注意が必要です。
暖房器具などの火器は、思っている以上に酸素を消費し、容易に不完全燃焼を起こします。そうなると二酸化炭素ではなく、一酸化炭素を発生させるのです。部屋の大きさ等にもよりますが、30分に1回程度は換気するよう心がけましょう。
予防策として、一般家庭向けの一酸化炭素警報機があります。また、古くなった暖房器具も不完全燃焼している場合があります。
(3)風呂場
排気筒(煙突)が付いている風呂釜を使用している場合、換気扇をまわすなど条件が揃ってしまうと、排気が浴室内に逆流して一酸化炭素中毒を起こすことがあります。風呂を沸かしているときや、シャワーの使用中は、風呂場やキッチンなどの換気扇の使用にも注意が必要です。
(4)屋外
冬のキャンプには火が不可欠です。ただし一酸化炭素を多く発生させる七輪や練炭コンロをテント内で使用するのは絶対にやめてください。
一酸化炭素中毒は、私たちの身の回りでいつ起こってもおかしくない事故です。寒さが募る季節は特に注意するようにしてください。
参考資料など
「雪に埋まった乗用車内の一酸化炭素中毒事故防止に関する一考察 2012」(小宮山一重・牧野正敏・山崎貴志・大上哲也、寒地土木研究所)、東京消防局HP(http://www.tfd.metro.tokyo.jp/index.html)、大阪ガスHP(http://home.osakagas.co.jp/index.html)、一般社団法人 日本自動車連盟HP(http://www.jaf.or.jp/)
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