『万葉集』にも歌われたヤマブキの花で春を感じる
ウェザーニュース / 2019年4月22日 7時10分
気品と優雅な美しさとを漂わせる花の一つに、ヤマブキがあります。最近ではあまり聞かれなくなりましたが、ヤマブキはかつて、美しい人のたとえにも用いられました。
日本でのヤマブキの花期(花が咲く時期)は4~5月で、地域にもよりますが、今はまさにヤマブキの花期です。
古都を彩り、万葉びとの心を揺さぶった花
古来、日本人に愛されてきたヤマブキ。優美なこの花は、新元号「令和」の出典で今、話題の『万葉集』でも何度か詠まれています。一首、紹介しましょう。
蝦(かわず)鳴く 甘奈備川(かむなびがわ)に 影見えて 今か咲くらむ 山吹(やまぶき)の花
これは厚見王(あつみのおおきみ)の歌で、蝦はカジカガエル、甘奈備川は現在の飛鳥川(あすかがわ)のことです。
「カジカガエルが鳴いている甘奈備川に影を映して、今はもうヤマブキの花は咲いているだろうか」と詠んでいるのです。作者・厚見王の古都・飛鳥への思いが、この歌には込められているようです。
カジカガエル
1200年以上の時を経た私たちが詠んでも、古(いにしえ)の都の美しく清らかな自然の風景が目に浮かぶようです。
「やまぶきいろ」はまさにヤマブキの色
ヤマブキというと、色鉛筆などでなじみ深い「やまぶきいろ」を思い出す人もいるでしょう。
やまぶきいろは文字どおりヤマブキの色で、やや赤みを帯びた黄色です。「黄金色(こがねいろ)」と説明している国語辞典もあります。
子供のころ、「やまぶき」の意味もわからず「やまぶきいろ」を覚え、大人になって初めてヤマブキを知って、「この花の色がやまぶきいろなんだ」と思った人も多いのではないでしょうか。
そうして考えると、ヤマブキはなんとなく郷愁を誘う花のようにも思えます。
春は梅に始まり、山吹に終わる
ヤマブキの花期である4~5月は、晩春にあたる地域が多く、初夏の訪れを控えている時季でもあります。
そのため、「日本の春は梅に始まり、山吹で終わる」といわれることもあります。
ヤマブキを愛(め)で、春を感じ、まもなく訪れる初夏に胸を膨らませる。ヤマブキという一つの花を通じて、日本の四季の豊かさに思いを巡らせてみるのも素敵なことではないでしょうか。
参考資料など
『色と形で見わけ 散歩を楽しむ 花図鑑』(大地佳子 著、亀田龍吉 写真、小池安比古 監修、ナツメ社)、『ときめく花図鑑』(中村文 著、水野克比古 写真、多田多恵子 監修、山と渓谷社)、『万葉集が面白いほどわかる本』(荒木清 著、中経出版)
朝日新聞デジタル ナカニシ先生の万葉こども塾(http://www.asahi.com/edu/student/manyou/OSK200905010013.html)
この記事に関連するニュース
-
清楚なナラノヤエザクラ咲き誇る、古都の華やぎを現代に 幻の能「八重桜」を復活上演
産経ニュース / 2024年4月27日 19時10分
-
バーに行くときのお供にぴったり。ロングセラーの東京書籍『カクテル手帳』が7刷に
IGNITE / 2024年4月25日 15時30分
-
光君が「まだ年端もいかぬ少女」の虜になった事情 「源氏物語」を角田光代の現代訳で読む・若紫②
東洋経済オンライン / 2024年4月22日 14時0分
-
光君が「まだ年端もいかぬ少女」の虜になった事情 「源氏物語」を角田光代の現代訳で読む・若紫②
東洋経済オンライン / 2024年4月21日 17時0分
-
二十四節気「穀雨」 初夏直前の“豊かな春”
ウェザーニュース / 2024年4月19日 5時0分
ランキング
-
1東和銀行の25歳男性行員が自殺 上司からのパワハラなどが原因として労災認定 「取り返しのつかない大変な事案」と頭取謝罪
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月9日 20時22分
-
2群馬3人死亡、トラックは事故直前90キロで走行か…運送会社社長「わだちにハンドル取られ戻れなかったのでは」
読売新聞 / 2024年5月10日 8時21分
-
3バイク同士が衝突、男性2人死亡 兵庫・西宮の県道
共同通信 / 2024年5月10日 8時23分
-
4JR東日本「みどりの窓口」削減から維持に、でも実は…並ばなくても「指定席券売機」で出来ること【Nスタ解説】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月9日 21時49分
-
5告発の兵庫県職員停職、吉村知事は「外部の通報機関も設置を」
産経ニュース / 2024年5月9日 20時47分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください