過去には1日に飛行機3機が被雷も 春の雷「春雷」
ウェザーニュース / 2019年5月7日 11時0分
「春雷」は俳句の季語でもあり、どこか風情がありますが、雷の威力はけっして侮れません。
寒冷前線で落雷が多発
春雷の大半が、日本付近にできた寒冷前線に向かって南から暖気が流れ込み、雷雲が発達して起こります。
2006年4月2日、南下した寒冷前線に南から流れ込んだ暖気が積乱雲を発達させ、西日本の全域に雷雲が発生し、奈良市では直径5mmの雹(ひょう)が降りました。幸い、地上での落雷被害はありませんでしたが、上空では大変なことが発生していました。
まず、三重県上空を飛行中の福島空港発伊丹行きのアイベックスエアラインズ3074便ボンバルディアCL600機が10時30分頃、2基あるエンジンの右側の1基が被雷して停止し、約20分後に大阪空港に緊急着陸。乗客乗員34人は無事でした。
その頃、高知空港に進入中だった伊丹発の全日空ボンバルディアDHC8-400型機が機首付近に被雷して左翼プロペラが停止しましたが、11時15分に高知空港に無事着陸。乗客乗員38人にけがはありませんでした。
さらに11時25分頃、名古屋空港の北北東20km付近で上昇中だった名古屋発山形行き日本航空4323便ボンバルディア機が落雷を受け、同空港に引き返しました。両翼の先端の一部が欠け、機体の2ヵ所に焼け焦げた跡がありましたが、乗客乗員33人にけがはありませんでした。
春雷の特徴とは?
5月4日に埼玉県川越市で撮影された雷
飛行機が飛んでいる場合は、落雷といわず被雷といいます。雷雲の上を飛んでいたら下から雷を受けるからです。飛行機が被雷しても搭乗している乗客乗員は直接の被害はありません。
飛行機が被雷して、その部分に穴が開いたり、通信装置などが故障することは珍しくありませんが、この日のように1日に3機も被雷し、しかもエンジンが停止することはまれです。
雷研究の第一人者、電気設備学会会長で東京大学名誉教授の石井勝さんは、春雷の特徴をこう指摘します。
「春雷は全国的には数は少ないのですが、太平洋側では冬よりも頻度が高く、大電荷量、正極性の落雷の割合が高いという冬の雷の特徴を持つことが多いため、時に送電線に大きな事故を発生させます。電荷のたまる高度は冬と夏の中間程度でやや低いため、冬と同様に航空機の離着陸時には警戒する必要があります」
名前は優雅ですが、決してあなどれない春雷。ゴルフ場や河川敷など周囲に高い建物がないところでゴロゴロと鳴ったら、屋外にいるのは危険です。すぐに丈夫な建物に避難したり、低地で身をかがめるなどの対策をとってください。
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