今日は防災の日 96年前の関東大震災、被害拡大の要因は
ウェザーニュース / 2019年9月1日 9時30分
9月1日は「防災の日」です。「国民が台風、高潮、津波、地震等の災害についての認識を深め、これに対処する心構えを準備する」ことを啓発するために1960年に制定されました。日付は96年前に発生した関東大震災にちなんでいます。
関東大震災による影響は、揺れによる被害だけではありませんでした。
震源は「相模トラフ」の海溝型地震
関東大震災は相模湾沖にある「相模トラフ」を震源とするM7.9の海溝型地震でした。
最大震度6でしたが、当時は震度7が設定されていませんでした。現在の基準では、相模湾岸地域や房総半島南部は震度7、東京(千代田区大手町)は震度6と推定されています。
相模トラフ周辺のプレート境界
思い違いをしている人も多いと思いますが、関東大震災は内閣府地震対策本部が想定する「首都直下地震」(30年以内に70%の確率で発生するM7級の地震)とは違う海溝型地震でした。
犠牲者の多くは焼死、火災旋風も
地震発生が午前11時28分で昼食の時間帯だったため、各地で火災が発生しました。当時、能登半島付近にあった台風が、関東全域に強風をもたらしたため、旧東京市内の43%を焼失し、46時間後に鎮火しました。犠牲者は約10万5000人(東京府約7万人、神奈川県約3万3000人など)、犠牲者の9割は焼死でした。
被服廠跡に逃げ込んだ約3万8000人は焼死した
なかでも本所被服廠(ひふくしょう)跡(現在の東京都墨田区)の公園に避難していた人々を火災旋風が襲い、約3万8000人が犠牲になりました。火災旋風とは、大規模な火災が発生すると周囲から空気を取り込んで上昇気流が発生し、炎を伴った旋風になるのです。この旋風に巻き込まれた犠牲者の一人は、15km離れた千葉県市川市まで飛ばされたそうです。
高さ12mの津波が発生していた
関東大震災は巨大な海溝型地震だったため津波が発生しました。震源に近い静岡県熱海市では地震後5、6分で引き波となり間もなく第1波が到達し、さらに5、6分後に第2波が7〜8mの高さで襲いました。局地的には津波高は12mに及び、家屋流失162戸、死者行方不明者92名の犠牲者が出ました。
ほかにも伊豆半島東岸、相模湾沿岸、房総半島に津波被害をもたらし、津波による犠牲者は1000人前後におよびました。東京湾内では津波が減衰して振幅1mほどになり大きな被害はありませんでした。
膨大なガレキで運河埋立、公園造成
関東大震災は膨大な量のがれきを発生させました。そのがれきを使って東京湾沿岸や運河を埋め立てました。
たとえば築地市場が移転した豊洲(とよす)。関東大震災の直後からがれきを使った埋立が始まり、14年後の1937年に埋立工事が完了します。また、東京の下町には江戸時代につくられた運河が縦横無尽に走っていましたが、水運から陸運に変わる時代だったので、関東大震災で出たがれきが運河の埋立に使われました。
横浜市のシンボル、山下公園も関東大震災のがれきを埋立てて造成されました。横浜市は震源に近かったため、がれきは膨大な量にのぼり、横浜港付近にがれきの集積場が設けらました。震災から7年後の1930年に山下公園が完成。1935年には復興記念横浜大博覧会が山下公園で開催されました。
関東大震災の教訓
関東大震災から得られる教訓は、人口密集地を襲う巨大地震は、家屋の倒壊だけでなく、火災が各地で同時に発生して避難経路を絶たれる可能性があることです。また、関東大震災では最大で10mを越える津波が沿岸部を襲いましたが、次にくる巨大地震では津波避難が必要な地域があるかもしれません。
がれきの処理も大きな問題です。関東大震災ではがれきを使って埋立をしましたが、首都圏で巨大地震が発生した場合のがれき処理方法をあらかじめ決めておく必要があります。96年前に首都圏を襲った巨大地震は、いくつもの教訓を残しました。それを無駄にしたくないものです。
参考資料など
『東京大学地震研究所彙報』(第48冊第2号、東京大学地震研究所、1970年6月10日)、『東京震災録』(東京市役所編刊、1926年)、『関東大震災 学ぶべき教訓』(朝日新聞)
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