地球温暖化でヒトスジシマカの分布域が北上!?
ウェザーニュース / 2019年9月5日 10時55分
黒い体に白い縞模様のヒトスジシマカは別名ヤブカとも呼ばれ、薮や庭木などで待ち構えて人を刺します。2014年には東京を中心にデング熱の国内感染を広めた媒介蚊でしたが、このヒトスジシマカが地球温暖化によって分布域を広げているのです。
1940年代は栃木県が北限だった
国立感染症研究所のリポートによると、ヒトスジシマカの分布北限は1946〜48年の調査では栃木県北部でしたが、2010年には青森県八戸市で初めてヒトスジシマカのコロニー(定住している集団)が確認されました。60年余りで約400kmも北上したのです。
「ヒトスジシマカは年平均気温が11℃以上で定着可能と言われています。ヒトスジシマカの分布域が北上しているのは地球温暖化などの影響と考えられます。蚊は刺されてかゆいだけではなく、デング熱などの感染症を媒介するため、生息域の把握や刺される前の対策が必要です」と言うのはアース製薬・虫ケア用品ブランドマネージャーの北口明宏さんです。
気象データを調べると、1947年の栃木県宇都宮の年平均気温は11.7℃。2018年は15.2℃なので、当時は栃木県がヒトスジシマカの分布域北限だったことがうなずけます。
2010年に初めてヒトスジシマカのコロニーが確認された青森県八戸の気象データをみると、1947年の年平均気温は8.6℃でしたが、徐々に上昇して、2010年の年平均気温が10.9℃でした。地球温暖化がヒトスジシマカの分布域を拡大したのです。
ヒトスジシマカの北海道進出も近い?
北海道・函館の街並み
ここまでヒトスジシマカの分布域の拡大を見てきましたが、すでに北海道には他の蚊がいます。
「アカイエカやチカイエカなど他の蚊は以前から生息しており、北海道だからと言って安心はできません。蚊は15℃以下の気温になると活動が鈍くなりますが、暖かい時期は活発に活動します。そのため、蚊対策商品は北海道でも売れております。
なお、冬になるとアカイエカは成虫(メス)が休眠状態で越冬します。ビルの下水槽などで発生するチカイエカは冬でも休眠せず、気温が高ければ吸血活動もします。
また、蚊の種類によって媒介する感染症は異なるのですが、近年アメリカ全土を恐怖に陥れているウエストナイル熱は170種以上の鳥を宿主とし、アカイエカなど43種以上の蚊が関与するため、日本への侵入が懸念されています」(北口さん)
ヒトスジシマカは60年余りで約400kmの分布域を拡大してきました。こうした生物は地球温暖化の「指標種」と呼ばれ注目されています。今後も温暖化が進めば、ヒトスジシマカは津軽海峡を渡って北海道に進出するのでしょうか。
ちなみに、ヒトスジシマカが生息できるのは年平均気温が11℃以上ですが、2018年の函館の年平均気温は9.8℃、北海道で一番暖かい渡島半島南端の松前の年平均気温は10.5℃です。
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