七十二候「雷乃発声」 雷には植物を育てる力がある?
ウェザーニュース / 2020年3月30日 4時0分
30日からは「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」です。季節の変わり目で、遠くで雷が鳴り始める頃と言われますが、そんな雷が私たちの食生活に欠かせないあるものの成長を助けていたってご存じですか?
雷の多い年は豊作!?
雷には、実は植物を育てる力があります。日本人の主食とも言えるお米も例外ではありません。先人の言葉に「稲妻ひと光で稲が一寸伸びる」というものがあります。一寸は約3cm。
流石に一度の雷でそこまでの成長は難しいですが、この言葉の背景にはきちんとした理由があるようです。
自然の肥料を与える雷様
植物の成長に欠かせない三大要素は窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)と言われています。これらを外部からバランスよく施すことが、稲の収穫量を上げるうえで大切になります。
この三大要素の中で特に注目して頂きたいのが「窒素」。私たちが生活する上で必要な空気には、酸素の他に窒素が含まれています。割合を見ると、窒素は約8割を占めているのです。もし、この空気中の窒素を植物に与えることができたら…。これを実現しているのがなんと雷。
雷放電により空気中の窒素は酸素と結びつき、窒素酸化物となります。これが雨に溶けて降り注ぐと、稲の肥料となり成長を促進させるとのこと。
そこまで多い供給量ではないものの、稲が成長する上で雷は非常に重要な存在のようです。
雷が発生しやすい天候だからこそ!
雷が多いと豊作になると言われる理由にはもう一つあります。
稲が最も成長するのは7月から8月上旬とされています。そのため、この時期に外気温が低すぎたり、雨が少なかったりすると、稲の成長に大きな影響が出てしまいます。
夏の天候がカギを握っていると言っても過言ではありませんが、なぜ雷が多いほうが良いのでしょうか。
そもそも夏の雷というのは、強い太陽の光で地表が温められる→上昇気流が発生する→積乱雲が作られ、雷及び雨となる、というパターンがほとんどです。
つまり、雷が発生する時は、稲にとって十分な日照・気温・降水がもたらされることになります。
そこから、雷が多い=稲にとって都合の良い気象条件ということで、豊作になると言われるようになりました。
雷は大事なパートナー
雷によって生じる電光を「稲妻」と言いますが、この言葉も雷と稲が切っても切り離せない関係であることを表しています。
稲の実が結実するのは、雷が多く発生する夏頃。そのため、昔は雷が稲に実をつけてくれる(孕ませてくれる)ものだと思っていました。そこから稲の妻→稲妻と呼ばれるようになったそうです。
私たち人間にとっては、ゴロゴロと恐ろしい音を鳴らし、家屋に被害をもたらすような存在でしかなかった雷。しかし、植物からすれば自分たちの成長を手助けしてくれるありがたい存在なんですね。
今年は雷が多くて嫌だな・・・と思った時は、今回のことをちょっと思い出して頂けると、見方が変わるかもしれません。
七十二候とは?
1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、それぞれをさらに6つに分けた24の期間を「二十四節気」といいます。
そしてこれをさらに初候、次候、末候の5日ずつにわけて、気象の動きや動植物の変化を知らせるのが七十二候です。
二十四節気と七十二候は、その日だけではなく、二十四節気であれば15日間、七十二候であれば5日間の期間も指しています。
次回は、「清明の初候、玄鳥至(つばめきたる)」についてご紹介します。
参考資料など
【参考・参照元】
一般社団法人日本植物生理学会「雨の成長促進効果について」jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=3293
JAみな穂「特集 落雷に備える」www.ja-minaho.or.jp/koho/1209/2p.html
HARVEST21「土・肥料の豆知識」www.harvest21.jp/contents/2015/01/post-11.php
JLPA「雷についての"お話し”」www.jlpa.jp/04/04_4.html
庄内平野のホームページ-おいしい国庄内〜美味しい庄内米”はえぬき”ができるまで〜「庄内米おもしろ質問箱」shonai.zennoh-yamagata.or.jp/situmon/fqa/s_18.html
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