夏の夜空を眺めてみよう 8月の星空は“夏の大三角”と“サソリの心臓”に注目
ウェザーニュース / 2020年8月2日 19時0分
関東などでも長かった梅雨がようやく終わり、8月は天体観測も楽しめそうですね。
夏の星空の象徴といえば、南の空で明るい三つの星が形づくる「夏の大三角」と、南の空に赤く光る「サソリの心臓」アンタレスが挙げられます。
それらの見つけ方や夏の星空の楽しみ方などについて、天文関連プロダクツを展開する株式会社アストロアーツの大熊正美さん(代表取締役社長)に伺いました。
織姫と彦星がつくる大三角
「夏の大三角」は、こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブという、明るい3つの1等星を結んで出来る大きな直角三角形です。気象条件さえよければ、都会でも観察することができるほど、明るい星です。
「7月下旬から8月にかけて、南の空の高いところ、ほぼ頭の真上で最も明るく輝く星が、こと座のベガです。ベガのそばには4つの星が平行四辺形をつくっていて、これが竪琴(たてごと)の形とされ、こと座の名の由来となっています。アルタイルは左右にやや暗い3等星を従え、そこから両側に『ワシの翼』が伸びています」(大熊さん)
![](https://smtgvs.weathernews.jp/s/topics/img/202007/202007280155_box_img1_A.jpg?1596167597)
「ベガとアルタイルは、中国を発祥とする七夕(たなばた)伝説で織姫(おりひめ)と彦星(ひこぼし)になぞらえられています。伝説と同様に、二つの星の間には天の川が流れています。夏の天の川は、ほかの季節より明るく見えます。月のない深夜、空気のきれいなところで頭上を見上げると、眼が漆黒(しっこく)の夜空に慣れるにつれて、頭上から南の地平線に流れ落ちる天の川がはっきりと見えるようになります。
ベガとアルタイルの東側(南を向いて左側)の、天の川の中に白く輝くのが、はくちょう座のデネブです。デネブからはベガとアルタイルの真ん中方向へ星が並び、それがハクチョウの長い首となっています。途中で天の川に橋を架けるように左右に羽が伸び、大きな十字を描いています。そのため、はくちょう座を『北十字』と呼ぶこともあります。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に登場する北十字はこの十字架です。また、デネブはアラビア語で『尾』という意味です」(大熊さん)
南の低空で輝く赤い星は「さそりの心臓」
夏の星空の象徴として、南の空の低い位置に赤く輝くさそり座のアンタレスがあります。さそり座は「黄道(こうどう)十二星座」のひとつで、10月24日~11月24日生まれの人の「誕生星座」とされています。
「ほとんどの人はさそり座の名前を知っていますが、きちんと見たことがある人は少ないかもしれません。それは、日本ではさそり座が南の空の低いところにあるためです。南側に山地や建物があると隠れてしまいますし、都会では街明かりにかき消されてしまうからです。
さそり座を確認するには、アンタレスの赤い輝きがいい目印になります。7月下旬から8月にかけての22時頃、南の空のちょっと低いところを見ると、すぐに赤くて明るい星が見つかります。これが1等星のアンタレスです。
『サソリの心臓』の位置にあるアンタレスの右上から左下に向かって2等星と3等星がカーブを描きながら並び、大きな『S字形』をつくっています。このラインが『胴体と尾』を表しています」(大熊さん)
![](https://smtgvs.weathernews.jp/s/topics/img/202007/202007280155_box_img3_A.jpg?1595905860)
南の低空を移動して行くさそり座(画像は星図表示アプリ「iステラ」より)
「アンタレスの名の由来は『アンチ・アーレス(火星に対抗するもの)』や、ギリシャ語の『火星に似たもの』とされています。これは、黄道上に位置するさそり座の近くを火星が時折通過することがあり、同じく赤いアンタレスと火星が競うように並ぶことから名づけられたといわれています。
今年は10月に火星が地球に接近しますが、8月にはさそり座が南西の空に傾くころに、東の空に昇ってきますから、アンタレスと赤さを比べてみると良いでしょう」(大熊さん)
さそり座の周囲は天の川の「濃い」部分にあたるため、たくさんの星雲や星団が観察できるそうです。アンタレスのすぐそばのM4や、お隣のいて座のM22といった球状星団や、さそりの毒針の先の散開星団M6・M7、そして、天の川の中に位置するM8干潟星雲などは双眼鏡でも十分観察できるそうです。
8月にはデネブの左(東)側、カシオペア座のさらに左手を放射点(中心点)とする「ペルセウス座流星群」も見られます。今年は12日前後が最も多くの流星を観察することができるそうです。夏の夜空の天体ショーを、存分に楽しみましょう。
参考資料など
取材協力/株式会社アストロアーツ(https://www.astroarts.co.jp/products/mobile/index-j.shtml)
画像/ステラナビゲータ11-StellaNavigator11(http://www.astroarts.co.jp/products/stlnav11/index-j.shtml)
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