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熱中症に負けない体づくり、「暑熱順化」がもたらす4つの効果

ウェザーニュース / 2021年5月19日 11時10分

ウェザーニュース

今年は西日本ですでに梅雨入りし、熱中症が心配される季節を迎えました。環境省は暑さに強い体をつくる暑熱順化(しょねつじゅんか)を推奨しています。なぜ暑熱順化は熱中症のリスクを減らすのでしょうか。どうしたら暑さに強い体を作れるのでしょうか。

2週間でできる「暑熱順化」

環境省は「やや暑い環境」で「ややきつい」と感じる程度の運動(ウォーキングなど)を毎日30分ほど続けると、暑熱順化が約2週間で完成するとしています。なぜ暑熱順化で夏の暑さに強くなるのでしょうか。

「環境省の報告書によると、暑熱順化した体は、(1)発汗量が増え、(2)汗に含まれる塩分濃度が低下し、(3)皮膚血管が拡張し、(4)循環血液量も増加する、という4つの効果をあげています」と言うのは、横浜鶴見リハビリテーション病院(横浜市鶴見区)の吉田勝明院長です。

なぜ発汗量が増えたり、汗の塩分濃度が低下すると、暑さに強い体になるのでしょうか。

体温上昇を防ぐメカニズム

「運動を続けていると、さほど体温が上昇しなくても汗をかきやすくなります。汗をかけば皮膚の表面から気化熱が奪われるため、体温の上昇を防げます。熱中症は体温が上昇することで起こりますから、汗をかきやすくなれば熱中症になりにくくなるのです」(吉田院長)

では、汗に含まれる塩分濃度が低下すると、なぜ熱中症になりにくくなるのでしょうか。

「暑熱順化すると、暑熱順化する以前に比べて汗に含まれるナトリウムイオン濃度が30〜40%低下することが観察されています。血液中のナトリウムなどミネラルが汗と一緒に大量に排出されると、ケイレンや意識障害など熱中症特有の症状がでるので、汗に含まれる塩分濃度が下がれば熱中症になるリスクも低下するのです」(吉田院長)

体のラジエター機能を高める

環境省の報告書には、皮膚血管が拡張し、循環血液量が増加すると、暑さに強い体になるそうですが、それはなぜでしょうか。

「暑熱順化すると、体温がそれほど上昇しなくても皮膚血管が拡張し、放熱しやすくなります。また、報告書によると循環血液量が約10%増加するため、運動機能を向上させるとともに体内の熱の放出を促します。暑熱順化は、いわば人体のラジエター(放熱器)機能を高め、暑さに強い体になるというのです」(吉田院長)

運動のほかにも入浴で暑熱順化

どうしたら暑熱順化できるのでしょうか。

「最高気温が25℃前後になったら、早足ウォーキングや軽いジョギングを毎日続けてください。体力には個人差があるので、“ややきつい”と感じるペースで、時間は30分を目安にしてください。2週間ほどで体が暑熱順化します」(吉田院長)

足が弱くてウォーキングが難しい人はどうしたらよいのでしょうか。

「毎日の入浴でも暑熱順化することができます。40℃程度の湯温の湯船に浸かります。汗をかく体にすることがポイントなので、汗が出るまで浸かってください。10〜15分が目安ですが、体の負担がかかるようなら短縮してください。これも2週間くらいで暑熱順化できます」(吉田院長)

暑くなればいやおうなしに熱中症の危険があります。今から体を暑熱順化させて熱中症を予防してください。

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