コロナ禍で引きこもり増加!? 五月病がきっかけになることも
ウェザーニュース / 2021年5月21日 5時1分
ゴールデンウィーク(GW)が明けた5月のこの時期は、毎年大学1年生や新入社員など新たな生活を迎えた人たちに「五月病」の患者が増加するといわれています。特に昨年、今年は新型コロナウイルス感染症の終息が見えないこともあり、これまでとは違った形での発症のきっかけや症状が現れているようです。
五月病はいつ頃から広まったのか、またコロナ禍の下での五月病の特徴や対処法について、横浜鶴見リハビリテーション病院(横浜市鶴見区)の吉田勝明院長に伺いました。
団塊の世代が厳しい受験競争を終えた1960年代に流行
「五月病にあたる症例が医学界で最初に報告されたのは、1961年のこととされています。アメリカの精神科医が入学から1ヵ月ほどたった大学生に見られる無気力や無関心などを、『軽度のうつ症状』として報告しています。
1960年代半ばには団塊の世代が大学受験期を迎え、受験競争が厳しくなっていきます。激しい受験競争を終えた後の虚脱感や抑うつ気分を抱えた大学1年生の間に広がった無気力、無関心といった傾向がGW後の5月に顕著に現れたことから、千葉大学の望月衛教授(心理学)が最初に『五月病』という言葉を使ったといわれています。
その後無気力、無関心は新入社員にも現れるようになり、1968年頃には五月病が流行語になっています」(吉田院長)
コロナ禍の五月病に顕著な特徴は見られますか。
「大学2年生と2年目の社会人に、うつや体調不良といった五月病の症状が増えていることです。大学ではオンライン授業が続き、入学した年には思い描いていた大学生活を送れないなどの不満感を抱えた2年生が多くいます。今年度もせっかく対面授業が開始されたのに、すぐに緊急事態宣言が再発出され、再びオンライン授業に逆戻りと、なかなか環境が落ち着かない上に、GWの帰省もかないませんでした。
2年目の社会人も同様です。仕事に十分慣れず不安が残った状態で新入社員に比べれば責任が増え、とくにリモート勤務で業務について教わったり、相談したりできる上司や同僚に恵まれないことによる不安感と孤独感で、例年より『2年目の五月病』の発生が増えているようです。
新入社員については『コロナ不況』で例年より厳しかった就職戦線を勝ち抜いたことで、五月病が言われ出した1960年代の激しい受験競争後と似た状況が生じているかもしれません」(吉田院長)
五月病がきっかけとなって引きこもりに?
気をつけたいのは大学生や新入社員だけではありません。
「コロナ禍のストレスによる不満感もあって社会全体のゆとりがなくなっています。こういう状況から、中堅社員、さらに非正規雇用やフリーランスも含めて、昨年からさまざまな『過剰適応』を強いられた人たちが疲弊しきって、五月病増加につながる心配もあります。
また、名古屋大学大学院医学系研究科精神健康医学/総合保健体育科学センターの古橋忠晃准教授ら日英共同の研究チームは、新型コロナウイルス感染症の経済的・社会的な影響により、世界的に『引きこもり』が増加している可能性があると報告しています。世界各国でロックダウンが行われ、解除された後も社会へと戻ることができず、『引きこもり』リスクが高くなっているそうです。
この時期は、五月病がきっかけとなって『引きこもり』を発症する危険性も高く、注意が必要です。若年層ばかりでなく、コロナ禍により生活リズムが大幅に乱れてしまった中高齢者にも増えています」(吉田院長)
五月病の危険度をセルフチェック
「引きこもり」にもつながりかねない五月病は、どのように予防すればいいのでしょうか? 次のチェックリストで 4つ以上当てはまるようなら、五月病の可能性があります。
【五月病チェックリスト】
・朝、寝床の中でグズグズしている時間が多い
・起きても身体がだるく感じる
・歯磨きや整髪、身だしなみを気にしなくなった
・通学・通勤電車に乗るのが苦痛に感じられる
・電話に着信があってもすぐにとらない
・トイレに必要以上長くいることがある
・他人が自分のことを軽視しているように思える
・自分の能力が会社で活かされていないと感じる
・身近な人に八つ当たりする
・自分に自信がもてない
・知らず知らずのうちに、ため息をついている
「無理な計画を立てて、バリバリ頑張りすぎないようにしましょう。いろいろと頭で考えず、行動本位になることも大切です。とりあえず起きて、洗顔し、歯磨きして……など、行動を主体に考える。そうしていると、最初はいやだと思っていたことも忘れていつの間にか体がなじんでいくものです。
もちろん、栄養バランスのとれた食事や質の良い睡眠といった毎日の生活習慣を整えることも大切です。また、悩みを話すことでストレス解消にもつながるので、家族や友人などと積極的にコミュニケーションをとって、リラックスできる時間を増やすことを心がけましょう」(吉田院長)
五月病が広まってからすでに50年以上が経過しています。コロナ禍特有の状況にも気を配り、行動主体の生活を心がけましょう。
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