1991年雲仙普賢岳の火砕流災害から今日で30年
ウェザーニュース / 2021年6月3日 9時30分
1990年〜95年の長崎県、雲仙・普賢岳の噴火活動は、死者・行方不明者44名、建物被害2500棟超という規模の火山災害に発展しました。
その中でも、今日からちょうど30年前の1991年6月3日に発生した大火砕流では、報道関係者や防災関係者など43名が犠牲となる大惨事になりました。
避難勧告範囲内で報道陣など巻き込まれ死傷
1990年11月に始まった普賢岳の噴火活動では、1991年5月からたびたび溶岩ドームの崩壊による「小規模な火砕流」が発生し、5月26日に避難勧告が出され、ほとんどの地域住民は避難していました。
6月3日に発生した火砕流は、それまでに発生していた火砕流よりは規模が大きく「大火砕流」と呼ばれていますが、それでも学術上では大規模と呼べるものではありませんでした。
当時は火砕流自体の危険性や性質などが十分に浸透しておらず、「小規模な」という表現の影響も加わって危機感が薄れていたとみられ、避難勧告地域で取材を行っていた報道関係者や、消防団員などの現場の防災関係者がこの火砕流に巻き込まれて犠牲になりました。
6月8日にはさらに大きな火砕流が発生したものの、適切な避難が幸いし、人的被害はありませんでした。このほか、1993年6月23日の火砕流で1名が亡くなり、1991〜93年にかけて発生した火砕流や土石流の影響で2500棟以上の建物被害が発生しました。
土煙のような見た目でも周囲を焼き尽くす
普賢岳で発生したようなタイプの火砕流は、熱雲とも呼ばれます。マグマの噴出量であらわされる規模としては小さいものの、破壊力は強く、発生の回数も多いことが特徴です。
見た目は土煙のようなものが山肌を流れ下ってくる現象ですが、人力では逃げ切れないほどの速度と、木々を焼き尽くすほどの高温のガスと岩屑を伴っています。
6月3日の大火砕流が発生するまでは、火砕流に遭遇してもやけどで済んだ事例などがあったため、油断が拡大していたといわれます。
大きく2種類の火砕流
火砕流と呼ばれる現象には大きく別けて2つのタイプがあります。
ひとつは普賢岳で起こったような、溶岩ドームや溶岩流が崩落することで発生するタイプで、噴出量や到達距離は限定的であるものの、繰り返し起こることが特徴です。
もう一方はプリニー式噴火による噴煙柱が崩壊して軽石が流れ下るタイプで、噴出物の量は極めて多く、時には数十kmを超えて、周囲の地形を変えてしまうこともあります。
どちらも大変危険で、発生してからでは逃げることはできないため、火山周辺に居住する場合や火山に近づくときは、あらかじめそのリスクを理解しておくことが重要です。
参考資料など
内閣府 災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 平成19年3月「1990-1995 雲仙普賢岳噴火」
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