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大人が知っておきたい 子どもの熱中症リスクが高まる5つの理由

ウェザーニュース / 2021年8月21日 9時55分

ウェザーニュース

暑い日が続くなか、幼児から高齢者までのあらゆる世代に対して屋外、屋内に限らず熱中症の予防が呼びかけられています。なかでも大人に比べて「暑さに弱い」とされる15歳未満の「子ども」については、屋外での運動の機会が多いこともあって、一層の注意が必要です。

子どもが熱中症になりやすい5つの理由や予防対策などについて、2015年からラグビー日本代表などスポーツ選手・大会主催者・観客を気象面から全力でサポートしているウェザーニュースのスポーツ気象チームに聞きました。

子どもは体温が過度に上昇するリスクが高い

子どもが大人に比べて暑さの影響を受けやすいのは、どのような理由によるのでしょうか。

「子どもは大人と比べて、(1)体重あたりの体表面積が広い、(2)汗をかく能力が低い、(3)水分補給に関する意識が低い、(4)暑熱順化の獲得(暑さへの慣れ)に時間がかかる、(5)自分の体調に関してうまく自己主張ができない、といったことが熱中症にかかりやすい理由です。

体重あたりの体表面積が広いということは、外気温の影響を受けやすいということになります。例えば、外気温が高い夏などには暑さ(熱)が身体の中に入り体温が上がりやすく、逆に気温が低い時には体温が奪われやすくなります。

発汗は、運動時の熱放散に大きな役割を果たしますが、子どもは汗腺をはじめとする体温調節機能が十分に発達していません。そのため、暑い日には体温が過度に上昇してしまうリスクが高まるのです。

また、子どもは大人に比べて自己主張がうまくできず、教師や指導者、保護者などに暑さに対する自身の感覚を率直に訴えられない場合もあります。さらに、中学1年生や高校1年生における熱中症の発生件数が他の学年と比較して多い傾向にあることは、身体のつらさを伝えることを躊躇してしまうことと関係があるのかもしれません。

その他にも、脂肪量が多いことは、熱を身体の外に逃がす効率が悪くなるため、熱中症の発生リスクとして考えられています」(スポーツ気象チーム)

それでは、子どもはどうやって熱を体の外に逃がしているのでしょうか。

「子どもは体温が上昇すると、皮膚の表面に血液を移動させ熱を身体の外に逃がします。この熱放散の仕組みは放射(ほうしゃ)と呼ばれ、汗の蒸発によって体温の上昇を抑えることが未熟な子どもにとっては、重要な役割を果たします。

逆に大人になると、汗による熱放散機能が発達するので、皮膚血流量の増加による熱放散に依存する割合は減少します。つまり、子どもが顔を赤くして運動を行っているのは、血液を身体の表面に運び、熱を身体の外に逃がしているサインです」(スポーツ気象チーム)

子どもの熱中症を防ぐには?

子どもの熱中症を防ぐには、どんな対策があるのでしょうか。

「熱中症環境保健マニュアル2018」(環境省)では、(1)顔色や汗のかきかたを十分に観察する、(2)適切な飲水活動を学習させる、(3)日ごろから暑さに慣れさせる、(4)服装を選ぶこと、という4つのポイントを挙げ、次の対策を呼びかけています。

「子どもの顔が赤く、ひどく汗をかいている場合は深部温の上昇が考えられます。涼しい環境に置いて十分な休息を与えましょう。また、日ごろからのどの渇きに応じて適切な飲水ができる能力(自由飲水)能力を磨かせ、適度な外遊びを勧めるなどして暑熱への順化を促進させましょう。

とくに幼児は衣服の選択や着脱についての十分な知識がありません。保護者や指導者が気温の高い日の運動にふさわしい服装を選んだり、適切な着脱を促したりするように心がけてください」

もちろん運動時にはより注意が必要だと、ウェザーニュース・スポーツ気象チームは警戒を促します。

「まずは、水分補給をしっかりと行うことが前提です。前述のように、子どもは運動中に水分補給の必要性をあまり感じないだけでなく、運動に集中することで喉の渇きを感じにくいという側面があります。従ってスポーツ活動時には、保護者や指導者が小まめに休息を取ることをあらかじめ計画し、水分補給を行う時間をしっかり確保するなどの環境を整えることが大切です。

また、体水分の損失に見合った量の水分補給ができないことも十分に考えられますので、スポーツドリンクを冷やして飲むなど、子どもが水分を積極的に取りやすい方法で水分補給を行う必要があります。そして、水分補給だけでなく、身体を積極的に冷やすことも熱中症の予防には大変効果的です。

一方、子どもは順化の獲得までに時間がかかることが報告されていますので、熱中症の発生が急増する梅雨明け後の時期には、運動実施について、大人よりさらに注意深く運動計画を立てる必要があるでしょう」(スポーツ気象チーム)

また、集団で運動する場合は、子どもの状態を個別に確認する必要があるといいます。

「スポーツや運動を行う場合、レクリエーション目的や競技力向上目的であっても、少なからずトレーニング効果を得ることが目的となります。しかし、暑い環境の下で体力レベルや成長度合いが異なる子どもすべてに対して、たとえば『1kmを5分で走る』などといった絶対的な強度を指標として運動を行うと、体温があまり変化しない子どもと体温が大きく上昇してしまう子どもの双方が混在してしまいます。

指導者がそれぞれの個人にふさわしい運動強度を決定する『個別性の原則』を考慮せずにトレーニングを行なうと、熱中症の発症とも関連する高体温のリスクが大きく高まる可能性があるのです。子ども一人ひとりに対応することはスポーツ活動現場では難しいのも事実ですが、指導者が高体温のリスクについて理解しておくだけでも、熱中症発症の軽減に役立ちます」(スポーツ気象チーム)

「暑さ指数」の基準にも注意

近年、気温だけでなく「暑さ指数(WBGT)」が運動の可否の目安として用いられていますが。

「WBGTは各個人の体温調節機能は考慮されていないため、大人と子どもの運動可否を同一基準で判断することには注意が必要です。日本ではWBGTが31℃以上となると運動は原則中止ですが、アメリカでは子どもの場合、WBGT 29℃以上ですべての運動を行うことを見合わせることが提唱されています」(スポーツ気象チーム)

子どもが暑さに弱い理由を認識して、日常生活においても運動時においても、大人の側が適切な熱中症予防対策を心がけたいものです。

参考資料など

環境省「熱中症環境保健マニュアル2018」

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