清少納言も「かき氷」を食べていた!? 平安貴族の夏の過ごし方とは?
ウェザーニュース / 2021年8月30日 5時0分
「春はあけぼの」で始まる『枕草子』で、清少納言は「夏は夜」と綴っています。「夏は夜がステキね」と書いているのですね。
清少納言は平安時代中期の女房(宮中で天皇や后に仕えた女性)で、歌人・随筆家です。
清少納言は夏をどのようにとらえていたのか、さらに、平安貴族は夏をどう乗り切ったのか見てみましょう。
夏は夜と蛍が最高ね!
「夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし」
これは『枕草子』の夏に関する一節です。言葉を補いつつ、ポップに訳してみましょう。
「夏は夜がいちばんステキ! 月が出ているころはもちろん、真っ暗闇でも、蛍がたくさん乱れ飛んでいるのがステキなのよ。蛍は多くなくてもいいわ。一匹、二匹、ほのかに光って、飛んでいくのも、いいわね。雨なんか、降るのも、ステキよね」
夏は夜で決まり! といった感じですね。そして、月夜でも、闇夜でも、蛍を見られれば、サイコー! といった清少納言の気持ちが伝わります。
現代日本の都市に住んでいると、蛍に日常的に接するのは難しいだけに、蛍舞う森閑(しんかん)とした景色は少しうらやましくもあります。
氷水に手を入れて、「つめたーい!」
「夏は夜がステキ!」といっても、夏はやはり暑い。この点は清少納言も同じように感じていたようです。
「いみじう暑き昼中(ひるなか)に、いかなるわざをせむと、扇の風もぬるし、氷水(ひみず)に手をひたし、もてさわぐほどに~~~」
こんなことを『枕草子』に書いています。どういう意味でしょうか。意訳してみましょう。
「ひどく暑い日中は、どうしたら涼しくなるんだろう。扇の風も生ぬるいし、氷水(こおりみず)に手をつけたり、氷を持って騒いだりしているところに~~~」
平安時代だから、扇風機もクーラーも冷蔵庫も、ありません。当然、冷凍庫もないから、夏に氷を作ることはできません。
そうした中、どうやって、夏に氷を調達したかというと、氷室(ひむろ)を使ったのです。
氷室は氷を蓄えておく小屋や穴で、冬から氷室に保管しておいた氷を削って、天皇に献上したり、貴族たちが使ったりしていました。
だから、誰もが夏に氷を手に入れられたわけではないのですが、一条天皇の皇后である藤原定子(ふじわらのていし)に仕えた清少納言は、氷に触れることができたのです。
『枕草子』の上の文章は、手紙が届いた話につながります。
清少納言に届いた手紙は真っ赤に染められた和紙に書かれていて、鮮やかな赤色の花に結びつけられていました。
それを見た清少納言は「この暑さに合わせて真っ赤な紙や花を選んでくれたのね。書いているときも暑かったでしょう。私のことを思ってくれてのことね」と思うのでした。
清少納言も食べた!? 夏のかき氷
清少納言はかき氷も食べていたようです。
『枕草子』には「あてなるもの(上品なもの)」の一つとして「削り氷に甘葛(あまずら)入れて新しき鋺(かなまり)に入れたる」ものが書かれています。
これは、削った氷に甘葛という植物の汁をかけて、新しい金属のお椀に入れたもののことを指しています。
ということは、これはかき氷!? 清少納言は今で言うかき氷も食べていたのでしょうね。
およそ1000年前に生きた人たちも、どうしたら夏の暑さをしのげ、楽しみに変えることができるかを考えて、いろいろ試みていたのですね。
酷暑続きの現代日本ですが、冷蔵庫も冷凍庫も、扇風機もエアコンもあるのだから、やはりとても恵まれているといえるでしょう。
参考資料など
『枕草子 いとめでたし!』(著者/天野慶、監修/赤間恵都子、絵/睦月ムンク、朝日学生新聞社)、『新版 枕草子 上下巻』(訳注/石田穣二、角川書店)、『枕草子 増補改訂版 絵で見てわかる はじめての古典③』(監修/田中貴子・石井正己、学研プラス)
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