爪や尿の色でも判断できる 脱水症のサインとは
ウェザーニュース / 2022年8月24日 5時0分
8月も半ばを過ぎましたが真夏日が続き、熱中症の危険性はまだまだ高いままになっています。熱中症を引き起こす大きな要因のひとつが「脱水症」ですが、高齢者に限らずその症状は意外と自覚しにくいため、注意が必要です。
脱水症が生じた際には体調不良のほか、爪や尿の色などに比較的分かりやすいいくつかの「サイン」が見られるそうです。脱水症を見逃さないためのポイントについて、日本大学医学部附属板橋病院救命救急センター科長の山口順子先生に伺いました。
高齢者や小児は脱水症を起こしやすい
まず、脱水症とはどのようなものなのでしょうか。
「脱水症とは、体内から水分だけでなく塩分などの電解質が同時に失われることによって体液が減少し、脳や消化器、筋肉などに生じる異変をいいます。
体液はおもに水と塩分で構成されていて、体温調節や栄養素・酸素の運び込み、不要な老廃物を運び出す役割をもっています。そのため、体内から体液が減少すると、脳ではめまいや立ちくらみに頭痛、意識消失やけいれんなどを引き起こす可能性が高まります。
消化器では食欲低下や嘔吐(おうと)、下痢など、筋肉では痛みに加えてしびれや麻痺(まひ)、こむら返りなどが起きやすくなります。
体液は年齢とともに減少していき、体重あたりの割合では小児が80%、成人が60%、高齢者では50%ほどまで低下します。高齢者が脱水症を起こしやすいのは、このためです。
なお、小児は体液が多い一方で、喪失する割合も多く、さらに自分の意志で水分補給できないケースもあるなど、脱水症を引き起こす原因が多くあるので、やはり注意が必要です」(山口先生)
爪の色で判断するセルフチェック法
症状が現れにくい「隠れ脱水症」は「熱中症予備軍」ともいわれているようですが、体のどの部位にどのような「サイン」が生じるのでしょうか。
「比較的わかりやくおすすめしたいのが、『爪のセルフチェック』です。
まず、手の親指の爪の色がピンクであることを確認し、爪を逆の指でつまんでみてください。つまんだ指を離したときに、白かった爪の色がもとのピンクに戻るまでに3秒以上かかるようでしたら、脱水症を起こしている疑いがあります。
CRT(Capillary Refill Time=毛細血管再充満時間)と呼ばれ、災害で大出血した際などに循環不全を簡易的に確認する指標として、指をおさえて血の巡りをみることがありますが、それと同じやり方です。
指先は細い血管が集中している部位で循環機能の変化が現れやすいため、脱水症になっているかどうかを判断する目安になるのです」(山口先生)
尿の色からも判断できる!?
爪と手の皮膚以外にはどのようなセルフチェックの方法がありますか。
「尿の色は、脱水症を判定するのにわかりやすいチェックポイントです。
正常な状態の尿の色は、薄い黄色です。ところが体内の水分量が少なくなるにつれて、尿の黄色味は濃くなっていき、オレンジ色から茶褐色へと見た目が変化します。
厚生労働省では『尿の色による脱水症状判定チャート』を発表しています。
(1)の薄い黄色なら問題はなく、ふだんどおりに水分を摂りましょう。
(2)のようにやや黄色味が濃くなって見えたら、問題はない程度ですがコップ1杯程度の水分を摂りましょう。
(3)のように濃い黄色になったら、1時間以内に約250mlの水分を摂ってください。屋外にいたり発汗していたりしたときは、500mlの水分を摂りましょう。
(4)のようにオレンジ色になったら、すぐに250ml、屋外や発汗時は500mlの水分を摂りましょう。
(5)のように茶褐色になっているようでしたら、すぐに1000ml以上の水分を摂りましょう。さらに茶褐色が濃かったり、赤色や茶色が混ざっていたりするようでしたら、脱水症以外の問題が考えられるので、すぐ病院へ行ってください。
尿の黄色は『ウロビリン(ウロビリーゲン)』という成分に由来します。正常な状態では排泄(はいせつ)時のウロビリン量はほとんど変動しません。排泄される水分量の減少、つまり脱水症が進むにつれて黄色味が濃くなっていくのです」(山口先生)
尿が黄色味ではなく、透明な場合も問題があるのですか。
「透明な場合は水分過多や腎性尿崩症(じんせいにょうほうしょう)、糖尿病などの可能性が考えられます。
そのほかにも、白濁なら膀胱炎(ぼうこうえん)や腎盂腎炎(じんうじんえん)、赤色なら血尿や尿路結石症などの疑いもあります。
ただし、睡眠中は尿を濃縮する機能が働いているため、朝起きたときに尿の黄色が濃いのは問題ありません。日中になっても朝と同じような濃い黄色の尿のままでしたら、脱水症の可能性がありますので注意が必要です」(山口先生)
手の冷たさ、舌やわきの下の乾燥も要注意
爪と尿以外に簡単にできるセルフチェックはありますか。
「手の甲の皮膚をつまんでみて、その形から3秒以上元に戻らないときも、脱水症の疑いがあります。これは、皮膚には多くの水分が含まれていて、健康であれば弾力性を有しています。ところが脱水症を起こしていると水分が減り、弾力性が失われているからです。
また、握手をしてみて、相手の手が冷たかったら注意してください。一般的に脱水症になると手や足先に血液が行かなくなって冷たくなるからです。
さらに、舌を見て乾いていたら脱水症の疑いがあります。脱水症になると口中の唾液(だえき=つば)が減少し、舌の表面が乾燥してくるからです。
その他にも、とくに高齢者の場合、わきの下を確認してみてください。通常、高齢者のわきの下は、発汗による潤いがあります。ところが脱水症だと汗が出なくなり、わきの下が乾燥していますので、発症している可能性があります」(山口先生)
さまざまな脱水症のセルフチェック法がありますが、室温の低い場所など、その人がいる環境よって誤差が生じたり、マニュキュアを塗っている爪だと色の変化がわかりにくかったりもするそうです。
セルフチェックの結果はあくまで「目安」であることを理解して、なによりもこまめな水分補給などの基本的な対策を忘れずに、熱中症につながる脱水症の予防を心がけましょう。
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