二十四節気「白露」 9月9日が“たいへん縁起がよい”理由
ウェザーニュース / 2022年9月8日 5時0分
早朝などに草木の先や花に露(つゆ)が結び、白く光って見える――。「白露(はくろ)」はそんな時季です。今年(2022年)は9月8日(木)から9月22日(木)までとなります。
残暑は遠のき、秋の気配が色濃くなっていく白露。私たちはどんな景色を見て、どんな体験をすることができるでしょうか。
縁起のよい「重陽の節句」
9月9日(金)は五節句の一つ「重陽(ちょうよう)の節句」です。
五節句は季節ごとの食べ物を神様に供えて祝う行事で、ほかに「端午の節句(5月5日)」「七夕の節句(7月7日)」などがあります。いずれも本来は旧暦の行事でしたが、新暦に変わった時、日にちをそのまま新暦(現在の暦)に移して行われることになりました。
9月9日は、中国で縁起がよいとされる陽数(ようすう/奇数のこと)のうち、最も大きい「9」が重なる日です。そのため、たいへん縁起がよい日と考えられてきました。
この日、中国では、小高い山に登って、菊の花を浸した菊酒(きくざけ)を飲んで、健康や長寿を願ったといわれます。菊の花には、長生きの効能があると考えられていたからです。そのため「菊の節句」ともいいます。
この風習は奈良時代ごろに日本に伝わり、平安時代には「重陽の節句」として宮中行事になりました。
江戸時代には、庶民の間にも菊酒などが広まりましたが、現在ではあまり見聞きしなくなりました。
菊を浮かべたお酒を飲むかどうかはともかく、「縁起のよい日」や「健康を願う日」として9月9日を意識してみるのもよいでしょう。
今年の「中秋の名月」は満月
旧暦8月15日の月を「中秋の名月」といいます。
「中秋」は旧暦8月15日の別称で、今年は9月10日(土)が中秋にあたります。
カレンダーなどでは、「中秋の名月」と書かずに「十五夜」と書いてあるものもあります。
十五夜は旧暦で毎月15日の夜のことですが、単に「十五夜」というと、旧暦8月15日の夜を指すことが多いからです。
中秋の名月は「芋名月(いもめいげつ)」ともいいます。これは中秋の名月にサトイモを供えたことに由来します。サトイモのほかに、団子、栗、ススキなどもいっしょに供えます。
「中秋の名月=満月」と思っている人もいるかもしれませんが、そうとは限りません。中秋の名月と満月の日がずれることは、しばしばあります。
しかし、今年の中秋の名月は満月!
お団子とお茶、あるいは、サトイモの煮物と月見酒。そんな十五夜もいいですね。
郷愁を誘う「赤とんぼ」
白露のころは、赤とんぼを見かける機会が増える時期でもあります。
赤とんぼを見ると、どうしたわけか、郷愁にかられる人もいるのではないでしょうか。「夕焼けの空に赤とんぼ」となれば、なおさらですね。
さらに、童謡『赤とんぼ』(作詞/三木露風、作曲/山田耕筰)を聴くと、心地よい懐かしさに包まれる人もいるでしょう。
♪
一 夕焼、小焼の、あかとんぼ、負われて見たのは、いつの日か。
二 山の畑の、桑の実を、小籠(こかご)に、つんだは、まぼろしか。
三 十五で、姐(ねえ)やは、嫁にゆき、お里の、たよりも、たえはてた。
四 夕やけ、小やけの、赤とんぼ。とまっているよ、竿の先。
♪
一番の歌詞は少しわかりにくいかもしれません。
「負われて見たのは」は「背負われて、肩越しに見たのは」という意味で、背負っているのは、三番に出てくる「姐や(子守のお姉さん)」です。
明治から大正にかけて活躍した文豪、夏目漱石には、次の一句もあります。
〜生きて仰ぐ空の高さよ赤蜻蛉(あかとんぼ)〜
満49歳で亡くなった夏目漱石は、胃病などにたいそう苦しめられていました。そうした背景を知ると、なおさら胸を衝く句です。
美しく、たくましい「コスモス」
秋の花といえば、「コスモス」を思い浮かべる人も多いでしょう。
「秋桜(あきざくら)」の異称もある花で、この名称は秋に花が咲くこととその花の形が桜に似ていることに由来します。
コスモスはメキシコ原産のキク科の一年草です。
ピンク、赤、白、黄など、色とりどりのコスモスの花々を見ると、明るく、さわやかな気持ちになる人もいるでしょう。
美しく可憐な花ですが、コスモスの生命力は強く、道ばたなどに散りこぼれた種からも、ぐんぐんと、たくましく伸びていきます。
美しく可憐に、そして、強くたくましく――。見習いたいあり方ですね。
白露の前の「立秋」と「処暑」は、暦の上では秋といっても、地域などによっては、秋を実感できない日も多かったでしょう。
しかし、白露は「まさに秋」「これぞ秋」という日が増えてきます。
スマートフォンの小さな画面から目を離して、ときには、秋の花々や飛び交うトンボ、夜空に輝く星々や月をゆっくりと眺めてみてはいかがでしょうか。
参考資料など
監修/山下景子:作家。『二十四節気と七十二候の季節手帖』(成美堂出版)や『日本美人の七十二候』(PHP研究所)など、和暦などから日本語や言葉の美しさをテーマとした著書が多数ある。
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