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時差わずか4秒!? 世界一正確な「小原型日時計」を知っていますか?

ウェザーニュース / 2022年9月24日 5時0分

ウェザーニュース

今年の夏も全国各地で真夏日や猛暑日の連続記録を更新しましたが、さすがに中秋の名月(今年は9月10日)を過ぎると秋の気配が漂いはじめ、季節の節目である秋分の日も過ぎ、本格的な秋の季節に入りました。

今回は秋分にあわせ、太陽の日周運動と関連する「日時計」についてご紹介します。

季節の移ろいを強く感じる「秋分」

この秋分の日の「秋分」とは、立春から数えて二十四節気の16番目の節気のことです。二十四節気は1年を春夏秋冬の4つに分け、さらにそれぞれを6等分した季節の区分法。中国から伝来したもので、太陽の日周運動(天球上の太陽運行)を24分割しています。

中・近世、日本でこれが取り入れられたのは、季節の移ろいとずれが生じる太陰太陽暦(9世紀頃に渡来)を補うためで、二十四節気は「生活の暦」として定着したのです。

二十四節気のなかでも、もっとも季節の移ろいを感じるのが、二至二分(冬至・夏至・春分・秋分)といわれています。

ちなみに秋分の日には、昼と夜の時間がほぼ同じになります(厳密には昼がわずかに長い)。どうして日照時間が同じなのでしょうか。

秋分の日には地球の自転軸(地球が回転する中心軸)が、太陽の光を真横から受けています。東京では水平線に対し約55度の角度で南中(高度が一番高い真南のときの太陽)し、これは春分の日もまったく同じ。だから日照時間が等しくなるのです。

日周運動と密接に関係

曆は月の満ち欠け周期に基づく太陰暦、太陽の日周運動に基づく太陽暦、2つを合わせた太陰太陽暦に大別されます。太陽を崇めていた古代エジプトでは、早くも紀元前数千年前から太陽暦(エジプト暦)が採択されていました。

同時に簡易的な日時計が使われていた記録も残っています。精度が向上して広く用いられるようになったのは、時代が下った古代ギリシアや古代ローマの時代です。日本では奈良時代、遣唐使として唐に渡った吉備真備が持ち帰った日時計が最初といわれています。

庶民文化研究家の町田忍さんは、この日時計を自著『町田忍の昭和遺産100』(天夢人刊)のなかで、令和に伝えていきたい「昭和遺産」に認定しています。町田さんが注目したのが、小原型と呼ばれる日時計です。

「現在、日時計は公園などを飾るモニュメントという感覚ですが、日時計自体は近代になっても使用されていました。明治時代には、誤差が大きい機械式時計の時間合わせに正午計(日時計の一種)が用いられていたのです。

日時計は緯度・経度によって指針の方角や傾きを調整する必要がありますが、諸条件をクリアして設置するとかなり正確な時間が計れます。なかでも小原銀之介が考案した小原型日時計の精度は抜きん出ています」(町田さん)

ギネスブックにも登録された

明治・大正・昭和を生きた小原銀之介(昭和58年没)は、美術書の編集者時代に西洋の庭園美術として紹介されていた日時計に魅せられ、独学で天文学や数学の研究を始めました。

「正確な日時計を設計するためには、太陽の動きや緯度・経度の計測といった複雑な計算が不可欠だからです。昭和30年代後半、研究成果が実って東京学芸大学付属小学校や国立科学博物館に最初の小原型日時計が設置され、注目されたのです。

その後、1973(昭和48)年にドイツのハンブルクに小原型日時計が設置されると、世界がその正確性に驚いて『世界一正確な日時計』としてギネスブックに登録されました。

国立科学博物館に設置されたものがもっとも正確で、時差わずか4秒といわれています。驚きですね。

小原さんが生前に設置した小原型日時計は全部で400基以上(日本はもとよりアメリカ・ヨーロッパ諸国・中国なども含まれる)で、現在では『日時計の王様』としてその業績が称えられています」(町田さん)

計算しつくされた唯一無二の日時計

小原型日時計の素材は真鍮・石・ステンレスなどと多彩で、多くの日時計の目盛りは5分刻み。付帯情報として東西南北八方位、磁北、緯度・経度、標高、二至二分の日の出・日の入り方位なども刻まれています。

「日時計の先に小さな地球儀が取り付けられているのも特徴。その地球儀の日照範囲は本物の地球と同じ! つまり、日時計の指針が示す時刻の、同角度・同方向の太陽光が地球儀にあたるように取り付けられているのです。

まさに計算しつくされた唯一無二の存在です。私はこの日時計に魅せられ、全国に設置された小原型日時計を追いかけて写真を撮影してきました」(町田さん)

小原さんの没後は、娘の小原輝子さんがその遺志を受け継いで、国内外に70基以上の小原型日時計を制作。日時計作家の第一人者として活躍しています。

小原型日時計で時刻を読むと、ゆっくりと動く影から地球や天体の動き、自然の摂理が伝わってくるような気がしてくるから不思議です。読者のみなさんの近くにも、きっと小原型日時計が置かれている場所があるはず。ぜひ探してみてはいかがでしょうか。

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