温そば・温うどんで比率が違う!? それぞれの煮汁の黄金比とは
ウェザーニュース / 2022年11月10日 10時0分
秋の気配が深まるとともに、そばやうどんも冷たい「ざる」や「もり」から、温かい「かけ」などを食べたくなることが増えてきました。
そば・うどんは似たような製法で作られる麺類でも、全く違う味わいです。一般的には「東はそば、西はうどん」が好まれる傾向にあるようですが、実際のところはどうなのでしょうか。
ウェザーニュースで「うどんとそば よく食べるのはどっち?」というアンケート調査を実施したところ、次のような結果となりました。
全国的にはうどんが51%、そばが49%とほぼ拮抗していました。しかし、地域別にみると、うどんは四国が82%と圧倒的に多く、中国が71%、九州が69%、近畿が63%と続き、そばは甲信が64%、北海道が61%、東北が57%、関東が56%となりました。
やはり西南日本はうどん、東北日本はそばが好まれるという結果が如実に現れています。
寒さが増すに連れて温かいそばやうどんの需要も高まります。
温かいそばやうどんを調理する時、手軽な市販のつゆを使用しがちですが、実は温かい汁麺をおいしくいただく出汁(だし)の「比率」はそばとうどんで異なるそうです。
温かいそばやうどんをおいしく仕上げる秘訣を、日本料理の名店「分とく山」(わけとくやま・東京都港区)総料理長の野﨑洋光(のざき・ひろみつ)さんに教えていただきました。
8:1:1の八方出汁が基本
家庭で温かいそばやうどんを作ろうとする時、つい市販のつゆをそのまま使ったり、ラベルに記された割合のままで薄めたりしがちです。
「いまは市販の合わせ調味料がたくさんあって便利なようですが、温かいそばやうどんに限らず、煮汁にそれらを使うと『すっきりとした味』にはなりません。
調味料はしょうゆ、みりん、酒くらいにして、単に薄味にするのではなくほどよい塩分で、素材そのものの味を大事にしたシンプルで素朴な温かいそばやうどんを作ることを心がける必要があります」(野﨑さん)
おいしい温かなそばやうどんを作るのにふさわしい煮汁とは、どのようなものなのでしょうか。
「出汁か水を8、薄口しょうゆを1、みりんを1の比率とすることです。この『8:1:1』という比率は『八方出汁(はっぽうだし)』、または『八方地(はっぽうじ)』と呼ばれ、私たちプロの料理人が基準としているものです。
8:1:1の“黄金比”の八方出汁を作るのは、家庭でもすぐに実践することが可能です。料理店ではこの八方出汁を濃くしたり薄くしたりして、おいしい味のバランスを決めています。
温麺の場合、ベースとなる出汁は水では物足りません。旨味(うまみ)のあるかつお出汁、または煮干しや昆布などで作ります。
さらに汁とともにいただく温かい汁麺は、おいしさを際立たせるために出汁の比率をかなり高め、多めにしています。その好ましい比率は、そばとうどんで異なるのです」(野﨑さん)
温そばの場合は?
温かいそばの場合はどのような比率で汁(麺つゆ)を作っているのですか。
「そばは『15:1:0.5』が黄金比となります。2人分の場合、『かつお出汁600ml:薄口しょうゆ40ml:みりん20ml』です。
そばはうどんと違って塩気がないので、旨味をみりんで補います。『甘いはうまい』というわけです」(野﨑さん)
野﨑さんお勧めの温そばの作り方は次のとおりです。
(1)そばは袋などの記載どおりにゆで、流水で洗い、水気を切る。
(2)ワカメを一口大に切り、三つ葉は3本ずつ束ねてひと結びにする。
(3)鍋に『15:1:0.5』の煮汁を入れて温め、ひと煮立ちしたらそば、ワカメ、三つ葉(ミツバ)を加えて温める。火を止めて器に盛り、柚子(ユズ)を添える。
温うどんの場合は?
「うどんには旨味となる塩分があります。そのため出汁はそばよりも薄くして、みりんの代わりに酒を使います。
うどんの黄金比は『20:1:0.5』、2人分なら『かつお出汁600ml:薄口しょうゆ30ml:酒15ml』となります。
温うどんの作り方は次のとおりです。
(1)うどんはゆでて流水で洗い、水気を切る。
(2)ホウレンソウをゆでて冷水にとって水気を絞り、長さ4㎝に切る。ネギは両側面に4~5カ所包丁目を入れておく。
(3)『20:1:0.5』の煮汁とうどんとネギを入れて火にかけます。ひと煮立ちしてネギに火が入ったら器に盛って具を載せ、七味唐辛子(トウガラシ)を好みでふる。
冷たい麺つゆ作りには「追いがつお」を
気温が下がってきたとはいえ、冷たいそうめんやそばを食べたくなることがあります。冷たいそうめん、冷たい麺つゆの比率は温そばと異なるのですか。
「そうめんのつゆは基本の『8:1:1』に、削り節を足して煮立てる『追いがつお』をします。追いがつおをするのは、つゆにこくと深みをつけるためです。
そばはそうめんより個性がありますので、『8:1:1』の比率のまま、薄口しょうゆの代わりに濃口しょうゆを用いて、追いがつおをするのがいいでしょう」(野﨑さん)
温かいそばとうどんをそれぞれおいしく調理するには、出汁の比率とみりん、酒を違えるのが大切なことがわかりました。どれも普段の調理法にほんのひと手間加えるだけのことですので、冷え込みがきつくなったこの時季、温そばとうどんをおいしくいただきましょう。
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