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「本物の温泉」や「美肌効果」を知るために 温泉分析書を読むポイント

ウェザーニュース / 2022年12月3日 9時10分

ウェザーニュース

寒くなってくると、シャワー浴では物足りなくなり、湯船に浸かりたくなります。同時に、温泉に行きたいという気分になる人も多いのではないでしょうか。

また冬期は乾燥が厳しく、お肌のダメージが気になる季節でもあります。そこで、温泉紀行ライター歴30年超、温泉達人の飯出敏夫さんに、美肌効果抜群の泉質を選べる温泉分析書の読み方を聞きました。

本物の温泉を見極めるには?

温泉選びで大切なことは何でしょうか?

「日本の温泉法では、泉温が25℃以上あり、19の温泉成分のうち1つ以上含まれていれば温泉と認められます。しかし、泉温は水道水を沸かしても保てますし、温泉成分も持ってきて加えればいいことになります。

それではニセモノとしか言えないので、本物と呼ぶには深い地中から湧き出した“自然湧出泉(しぜんゆうしゅつせん)”か、少し掘って湯脈が通る岩盤に穴を開けて噴出させた“掘削自噴泉(くっさくじふんせん)”が信頼できる温泉と言えると思います。さらに、ちゃんとした泉質名が付いていることが必須です」(飯出さん)

泉質名というのは何ですか?

「“鉱泉分析法指針”で療養泉と認められると、泉質名が付きます。例えば含有する硫黄成分が1kg中に2mg以上あれば療養泉となり、硫黄泉という泉質名が付きます。泉質名が付くと“適応症”もうたえるので、本物の温泉の条件を満たすことになります」(飯出さん)

それはどこでわかるのでしょうか?

「脱衣所などに掲示してある“温泉分析書”、または“温泉成分表”でわかります。これを提示することは温泉施設の義務とされているので、これがない温泉施設は怪しいと思われてもやむをえませんね」(飯出さん)

温泉分析書の注目ポイントは

温泉分析書には細かい情報がたくさん載っています。特に注目すべきポイントは何でしょうか?

「一般的には温泉の“効能”と言いますが、これは“適応症”が正しい呼び名です。温泉分析書には、“一般適応症”と“泉質別適応症”が掲げられています。

このうち注目すべきは“泉質別適応症”です。その温泉の薬理効果を知りたければ、ここを見なければなりません。

例えば“硫黄泉”の“泉質別適応症”には、末梢循環障害(硫化水素型の場合)、アトピー性皮膚炎、慢性湿疹などが掲げられています」(飯出さん)

美肌効果のある「三大美人泉質」とは?

乾燥して肌へのダメージが増える冬は、特に美肌効果が気になる人も少なくありません。美肌効果は温泉分析書にもないので、そうした温泉を探すときには注意が必要だといいます。

「美肌効果は療養とは無関係なので、適応症としては認められていません。しかし実際には、入るとお肌がツルツルしたり、角質が柔らかくなったり、毛穴の汚れがとれたりする温泉があるものです。これらの効果は、各温泉の自己申告によって“美肌の湯”として宣伝されています。

客観的な情報から美肌の湯を探すには、まずは泉質名に注目してください。具体的には、“炭酸水素塩泉”、“硫酸塩泉”、“硫黄泉”の3つの泉質が美肌の湯で、“三大美人泉質”と呼ばれています。

具体的には、乳頭温泉郷(秋田県)、川古温泉(群馬県)、小谷温泉(長野県)などが、美肌の湯として有名です」(飯出さん)

美肌効果のある温泉は「pH(ペーハー)値」にも注目

ほかにも美肌効果を示す基準はありますか?

「大まかにいえば、酸性の温泉が殺菌効果を持ち皮膚病などに効くのに比べ、アルカリ性の温泉には美肌効果があります。具体的にはpH7.5以上の温泉には、美肌効果があると考えていいでしょう。上記の“炭酸水素塩泉”、“硫酸塩泉”、“硫黄泉”のほか、“アルカリ性単純温泉”が美人泉質に相当します」(飯出さん)

これから忙しい年末に向かいますが、できればゆっくりと温泉に浸かって、1年の疲れを取りたいものです。そんなチャンスが巡ってきたら、ぜひ温泉分析書の読み方を覚えて、一緒に行くお友達やご家族に説明してあげるといいでしょう。

参考資料など

飯出敏夫:1947年、群馬県生まれの温泉紀行ライター。温泉取材歴40年、訪ねた温泉は3000湯以上。著書に『温泉百名山』(集英社インターナショナル)、『名湯・秘湯の山旅』(JTB)、『達人の秘湯宿』(交通新聞社)など多数。

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