高層気象観測で使われるラジオゾンデとは アメリカで目撃された気球との違い
ウェザーニュース / 2023年2月5日 15時30分
気象庁をはじめ世界の気象機関等では、ラジオゾンデと呼ばれる気球を用いて大気圏内の気象状況を定期的に観測しています。
数日前からアメリカを浮揚していた気球がラジオゾンデに似ているとの声がありましたが、ゾンデとは大きく異なる特徴がありました。
ゾンデ 通常の滞空時間は約1時間半
一般的な気象観測用気球・ラジオゾンデはゴム製で、内部には水素が詰められています。地上での直径は1.5mほどで、上空3万メートル程度まで上昇し、直径8メートルほどにまで膨らんだところで破裂して落下します。
ゾンデはほぼ一定の速度で上昇するようにつくられていて、3万メートル上空に達するまでにおよそ1時間半ほどかかります。気圧、気温、湿度等の気象要素を測定しながら上昇し、随時無線でデータを地上に送信しています。
気象庁では日本国内の16か所と南極昭和基地で、毎日9時と21時に放球を行い観測を行っています。この観測結果は正確な気象予測を行う上では欠かすことができず、世界中のおよそ800か所で毎日同じ時間に放球されています。
アメリカを浮揚していた気球は
米本土上空を飛行する気球(米西部モンタナ州)AFP=時事
アメリカでは数日前から高高度を浮揚する白い気球が目撃されていました。報道によると、浮揚高度は2万メートル前後とのことで、旅客機の飛ぶ1万メートル強の高度よりは高く、雲よりも高い「成層圏」と呼ばれる高度です。
この高度はラジオゾンデの飛揚する高度にも含まれますが、滞空時間が大きく異なるため通常のゾンデとは違う機器であることが推定されます。ゾンデであれば同じ高度にとどまることなく上昇し、2時間以内には破裂して落下するはずです。
また、旅客機よりも高いこの高度の気球を地上から視認できたということは、通常のラジオゾンデよりもかなり大型であったとも考えられます。
2020年6月17日の目撃情報
これに似た浮揚物体は2020年6月に日本でも目撃されていて、東北地方の上空を半日程度かけて東進していました。当時は旅客機の飛ぶ高度以下では強い西風が吹いていたため、それよりも高い成層圏で滞空していることが推定されていました。
国立天文台の平松正顕さんによると、天文観測の分野では同様の高度に大きな気球を揚げる事例があるとのことです。
天文観測でも、大気に邪魔されずに観測したい場合に望遠鏡を大きな気球で上げることがある。ガンマ線観測のNuclear Compton Telescopeとか、太陽紫外線観測のSunriseとか。飛行高度は40km近くで1週間くらい飛ぶことも。 https://t.co/MhVR74Au1r
— Masaaki Hiramatsu / 平松正顕 (@parsonii) February 5, 2023
参考:気象庁 高層気象台
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