4月の呼称 「卯月」以外にもたくさんある異称
ウェザーニュース / 2023年4月1日 5時10分
春たけなわの季節になりました。新年度のスタートでもある4月。そんな4月の馴染み深い和風月名は「卯月」です。しかし、その他にも4月の異称はたくさんあります。
『二十四節気と七十二候の季節手帖』などの著者で作家の山下景子さんに、卯月の由来とその他の4月の異称について伺いました。
なぜ「卯月」と呼ぶのか?
「“卯月”の語源には、いくつかの説があります。まず、卯の花が咲く月という意味の“卯の花月”が縮まったという説。
ほかに、この月に稲の種を植えることから“植え月”となり、これが略されたという説や、卯月の“う”は、“初(うい)”や“産(うぶ)”などにつながる音だという説もあります。
その他の4月の呼び名は?
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4月の呼称
旧暦の時代は、卯月以外にも4月の異称がたくさん使われていたそうです。その中からいくつかを選んで、山下さんに解説していただきました。
【卯の花月】(うのはなづき)
卯月の語源説に登場する「卯の花月」も、実際に使われてきました。「卯の花」は「空木(うつぎ)」の異名です。5~6月頃に、真っ白な小さい花を枝いっぱいに咲かせます。古くから、初夏の代表的な花として、和歌にも数多く詠まれてきました。
旧暦では4月から夏。昔の人は、空木が咲くことで、夏の到来を知ったようです。
【夏初月】(なつはづき)
「夏初月」は、文字通り、夏の初めの月という意味で、「夏端月」とも書きます。ほかにも、旧暦4月には、夏の始まりを表す異称がたくさんあります。「孟」は初めという意味があるので、「孟夏(もうか)」。また、「初夏」「新夏(しんか)」「早夏(そうか)」「首夏(しゅか)」も、4月の異称です。
【鳥待月】(とりまちづき)
旧暦4月頃、日本に渡ってくる鳥の代表は、「時鳥(ほととぎす)」です。『万葉集』をはじめ、最も多く和歌に詠まれた鳥で、当時の人々は時鳥の初音(はつね)を心待ちにしていました。
「鳥待月」の「鳥」も、時鳥をさしているのでしょう。
渡ってきた当初は、まだ声をひそめた鳴き方で「忍び音(ね)」とも呼ばれます。
【麦秋】(ばくしゅう)
「秋」という言葉や漢字には、実りや、収穫時期という意味もあります。麦が小麦色に熟して刈り入れ時を迎えるのは、初夏。そこから、この時期を「麦秋(ばくしゅう)」「麦の秋」などと呼びました。
旧暦の時代はちょうど4月に重なるので、4月の異称としても使われた言葉です。
【乏月】(ぼうげつ)
「乏月」の「乏」は、欠乏の乏です。この時期、穀物が底をつき、食料がとぼしくなることから、「乏月」とも呼ばれました。江戸時代の文献に出てくる異称です。当時の人々は、麦の収穫が待ち遠しかったことでしょう。現代の私たちが、どんなに恵まれているかを思わずにはいられません。
【木の葉採月】(このはとりづき)
養蚕(ようさん)がさかんだった昔、各地に桑畑(くわばたけ)がありました。桑の葉の新芽が出る頃、蚕(かいこ)が孵化(ふか)します。蚕のえさは、桑の葉。その桑の葉を採る月が、旧暦4月頃だったのです。そこから、「木の葉採月」という異名もつきました。
食欲旺盛な蚕に食べさせるため、大変忙しい日が続いたそうです。
【清和】(せいわ)
「清和」の本来の意味は、空が晴れ、空気が澄んで、なごやかなことです。昔の人にとって、清和という言葉にふさわしいのは、旧暦4月頃の天候だったようで、4月の異称としても使われました。
ですが現代の4月も、すがすがしくのどかで、清和と呼びたくなる日が多いような気がします。
この4月から、新生活を始める方もいるかもしれません。そんな人はもちろん、そうでない人も、うららかな季節を、みずみずしい気持ちで過ごせるといいですね。
写真:ウェザーリポート(ウェザーニュースアプリからの投稿)
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