救急搬送者数が急増 梅雨明け前後の熱中症に要注意
ウェザーニュース / 2023年7月16日 11時50分
まだ沖縄・奄美以外は梅雨明けしていませんが、最近は真夏のような暑さが続いています。特にこの3連休後半から連休明けにかけては、梅雨明け後のような猛暑となる地域が多くなります。
このような梅雨明け前や梅雨明け直後の猛暑となるタイミングでは、特に熱中症への注意が必要だそうです。
熱中症患者が急増する理由や、注意したいポイントなどについて、日本大学医学部附属板橋病院救命救急センター科長の山口順子先生に伺いました。
梅雨明け直後は熱中症に要注意
なぜ梅雨明け直後は熱中症リスクが高まるのでしょうか。
「梅雨明け直後や梅雨明け前での猛暑日など、体が暑さに慣れきっていない中で急激に蒸し暑くなると、熱中症患者が増える傾向があります。
人間の体は暑さを感じると、汗をかいて体内の熱を放出しようとしますが、体が暑さに慣れていない時期は熱を効率的に放散できない傾向があります。
加えて、湿度が高いと体温調節のための発汗がうまくできず、熱が体内にこもりがちになり、熱中症につながるリスクが高まってしまうのです」(山口先生)
梅雨明け直後の1週間は
![](https://smtgvs.cdn.weathernews.jp/s/topics/img/202307/202307100255_box_img1_A.jpg?1688977531)
体が暑さに慣れていない時期に特に熱中症が多いということはデータからもみてとれます。
「神奈川県川崎市のデータでは、2013年から2022年間の10年間で、熱中症による救急搬送者は梅雨明け直前の1週間が計100人台だったのに対し、直後の1週間は計624人と急増しています。
一方で猛暑日(気温35℃以上)の日数は、8月にあたる梅雨明け2~4週目は7月の1週目を上回っていますが、搬送者数は1週目より2~4週目のほうが少なくなっています。
環境省の『熱中症環境保健マニュアル2022』に掲載されてい2010年のデータをみてみましょう。2010年は記録的な猛暑を記録した年で、梅雨明けは7月17日でした。熱中症による搬送者・死者数ともその数日後から急増し、21日からは連日10人以上が死亡しています。
熱中症の危険度を判断する数値として、『日最高暑さ指数(WBGT)』があります。気温1、湿度7、輻射熱2の割合で算出され、特に湿度が重要な要素とされています。
このWBGTが7月後半と同じ程度かそれ以上だった8月前半に入ると、搬送者数は少なめで推移し、死者数も10人を超えた日はありませんでした。さらに、8月後半はWBGTの高い日が多かったにもかかわらず、搬送者数は減少に向かっています」(山口先生)
![](https://smtgvs.cdn.weathernews.jp/s/topics/img/202307/202307100255_box_img2_A.jpg?1688985958)
このように、猛暑の続く8月よりも梅雨明け直後の7月のほうが熱中症のリスクが高いことが分かります。
「環境省も、7月後半に多くの人が汗をかいたことでより多く汗をかける体になったため、8月の暑さに耐えられるように『暑熱順化』、つまり暑さに慣れた体になったとの見解を示しています」(山口先生)
猛暑に対応できる体づくりを心がける
まだ体が暑さに慣れないうちの熱中症対策として、注意したいポイントはどのようなことでしょうか。
「こまめな水分補給が最も大切です。人間の体の60%は水分で形成されており、2%が失われると強いのどの渇きを感じ、6%を失うと体温の上昇や頭痛といった脱水症状が現れます。これら熱中症につながる症状を予防するためには、1日あたり1.5Lの水分補給が必要とされています。
寝ている間にコップ1杯、約200mlの汗をかくとされていますので、就寝前と起床時にそれぞれコップ1杯の水を飲むようにしてください。入浴前にもコップ1杯、水を飲んでおくのがいいでしょう。
また、なるべく早いうちに、猛暑に対応できる体づくりを意識しましょう。無理のない範囲の軽い運動や半身浴などで、積極的に汗をかくようにしてください」(山口先生)
暑さに慣れていない人が暑い日の外出時に気をつけるポイントを教えてください。
「普段汗をかく機会の少ない人は汗が出にくく、体温が下がりにくい傾向にあります。気温が高いのに汗をかかないという場合は、特に注意が必要です。暑さに負けない体力づくりのため、適度な運動のほかに適切な食事と十分な睡眠も心がけましょう。
体調が優れない日や環境省のホームページに記載されているWBGT値が高い日は、できるだけ外出を控えてください。川崎市のデータでは11時台と15時台に救急搬送者が増える傾向がありますので、特にこの時間帯の外出は避けたほうがいいでしょう。
外出の際は事前に日傘と帽子、冷却グッズを準備し、通気性のいい服装で。きるだけ直射日光が当たる場所を避けて、日陰や室内などでこまめに休息を取るようにしてください」(山口先生)
もちろん、室内で過ごしていても熱中症が起きる可能性が少なくありません。扇風機やエアコンを調節して室温が高くならないよう注意しましょう。
最も熱中症の危険性が高いとされる梅雨明け前後のこの時期、十分な対策を取って予防に努めましょう。
参考資料など
環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」、厚生労働省「知っておこう! 熱中症予防のために」、川崎市「令和5年度熱中症予防啓発(3局連携)の主な取組」
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