二十四節気「立秋」 真夏の暑さが続く中でも、暦の上では今日から秋
ウェザーニュース / 2023年8月8日 5時20分
8月8日(火)から二十四節気の一つである「立秋」に入ります。
暦の上では、この立秋から立冬(2023年は11月8日)の前日までを「秋」としています。
まだまだ暑い日が続いているため、「秋の実感なんて、まったくないよ」と思う人が多いでしょう。
とはいえ、秋の兆しや気配が感じられるのが立秋でもあります。どんな時季か、見ていきましょう。
「スイカ」はどうして「西瓜」と書く?
暑い日に「スイカ」にかぶりつくと、えもいわれぬ幸せを感じる人もいるでしょう。
スイカは漢字では「西瓜」と書きますね。どうして、スイカは「西の瓜(うり)」と書くのでしょうか。
日本の西側にある中国から日本に伝わった瓜だから「西瓜」?
うーん、残念。ハズレです。
スイカは中国よりも西方の地域から中国に伝わった瓜だから「西瓜」と書くのです。
スイカはアフリカ原産。そのスイカが中国の西に位置するウイグルから中国に伝わり、のちに(室町時代などの説があります)日本にも伝わりました。
実は「西瓜」は、秋の季語。意外に思われるかもしれませんが、本来は初秋のものであったそうです。
水分が豊富なスイカは、良質な水分補給にうってつけ。熱中症の予防にもオススメです。
初秋に感じる「新涼(しんりょう)」
秋の初めに感じる涼気を「新涼」といいます。
「涼風(すずかぜ)」や「涼し」は、俳句では夏の季語ですが、「新涼」は秋の季語です。
「涼風」や「涼し」は、暑さの中にわずかに感じられる涼しさを表したものですが、「新涼」は初秋の新たな涼しさを含意しています。
たとえば、「新涼の候、朝夕の風に秋の気配が漂う今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか」などと手紙にしたためることもできます。
〜新涼や白きてのひらあしのうら〜
これは、高浜虚子に師事した俳人、川端茅舎(かわばたぼうしゃ)の句です。
自分の白い手のひらと足のうら。夏の間に日に当たって焼けた箇所と比較しているのでしょう。そして、新涼を感じ取ったときに詠んだ一句なのでしょう。
「藪入(やぶい)り」とは、何?
最近では、めっきり聞くことの少なくなった言葉の一つに「藪入り」があります。
奉公人が正月と盆の16日前後に、主家から休みをもらって親元などに帰ることが「藪入り」です。
なぜ「藪入り」というかというと、「草深い土地に帰るから」という説が有力です。
単に「藪入り」というと、新年の季語になり、盆の藪入りをさす場合は、「後(のち)の藪入り」「秋の藪入り」などといいます。
藪入りは、年少の奉公人にとっても、その親にとっても、うれしい日でした。
山本有三の小説『路傍の石』に次の一節があります。母のおれんが、一人息子のお盆の藪入りを待ち焦(こ)がれている場面です。
「〜あづき煮(に)てやぶ入り待つや母ひとり〜
いくらか、ちがっているかもしれないが、だれかの句に、こういうのがあったように思う。おれんはその朝、特別はやく起きて、ゆうべのうちに買ってきておいた、アズキを火にかけた。」
藪入りに母が子を思う気持ちがよく伝わってきます。
「ヒグラシ(蜩)」のカナカナカナ……に感じる哀愁
カナカナカナ……。もの悲しさを帯びた音色と旋律。朝に夕に、ヒグラシが鳴く時季です。
ヒグラシは全長約5cmで、全体は栗褐色、緑や黒の斑紋のあるセミです。スギ、ヒノキ、ケヤキ、ブナなどの木で確認することができます。
ヒグラシという名は、日暮れに鳴くことに由来しています。
〜日ぐらしや急に明(あかる)き湖(うみ)の方(ほう)〜
これは、江戸時代後期の俳人、小林一茶の句です。
「日ぐらし」はセミのヒグラシのことで、「湖(うみ)」は現在の長野県北部にある野尻湖のことです。
「急に明るくなった湖のほうで、ヒグラシが鳴き始めたよ」。そう詠んだ一茶の心からは、どこかすがすがしさが感じられます。
今年(2023年)の立秋は8月22日(火)までです。山の日(8月11日)が過ぎ、お盆が過ぎ、8月下旬にさしかかると、地域によっては、秋の風情がかなり感じられるようになりそうです。
暑い日が続いていますが、ときおり漂う秋の趣に触れつつ、時の移ろいを楽しむのもよいかもしれません。
写真:ウェザーリポート(ウェザーニュースアプリからの投稿)
参考資料など
監修/山下景子:作家。『二十四節気と七十二候の季節手帖』(成美堂出版)や『日本美人の七十二候』(PHP研究所)など、和暦などから日本語や言葉の美しさをテーマとした著書が多数ある。
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