リビア東部で大洪水 24時間で一年間の降水量を超える記録的な大雨に
ウェザーニュース / 2023年9月13日 17時30分
アフリカ北部に位置するリビアでは、10日(日)から11日(月)にかけて東部が大雨に見舞われました。
地中海から進んできた発達した低気圧による影響で、大規模な洪水が発生して甚大な被害が出ています。
24時間で400mm超 年間降水量を上回る未曽有の豪雨
![](https://smtgvs.cdn.weathernews.jp/s/topics/img/202309/202309130125_box_img1_A.jpg?1694587050)
リビア東部デルナで発生した洪水被害
世界気象機関(WMO)によると、地中海を進んできた「Storm Daniel」と呼ばれる発達した低気圧が、10日にリビア東部の沿岸部を東へと通過していきました。
リビアの気象当局によると、東部の都市では数時間で200mm前後の雨が降り、北東部の都市アル・バイダ(Al-Bayda)では24時間雨量が史上最高の414.1mmを観測。もともと普段からの雨量が少ない地域であるため、この雨量は年間降水量の2倍近くにもなる、極めて記録的な雨量です。
この記録的な大雨の影響で老朽化した2つのダムが決壊して、沿岸部の都市デルナを多量の水が襲い、多数の死者・行方不明者が出ています。
ロイター通信の報道によると2,500人が死亡、また国際赤十字・赤新月社連盟(the International Federation of Red Cross and Red Crescent Societies)によると、リビア赤新月社(the Libyan Red Crescent Society)は最大1万人が行方不明と報告しています。
地中海の嵐「メディケーン」
今回、リビアに大きな被害をもたらした「Storm Daniel」は、9月はじめに地中海を挟んだ向こう側、ギリシャで発生しました。9月5日(火)~6日(水)にかけてギリシャやブルガリア、トルコなどで記録的な大雨を降らせた後、地中海を南下してリビア北部の沿岸部に達しました。
この「Storm Daniel」は、地中海を南へ進む過程で急速に発達しました。地中海東部の海水温はこの夏、過去最も高くなっていて、それにより雨のもととなる多量の水蒸気が再び供給されました。
それにより、「Storm Daniel」は「メディケーン (MEDIterranean hurriCANE;地中海のハリケーン)」の性質を帯びたと考えられます。これは台風のような熱帯低気圧の性質と、上空に寒気を伴う温帯低気圧の性質を兼ね備えたハイブリッド型のような低気圧のことです。9月から1月に発生しやすく、一年に数個程度発生すると言われています。
今回は地中海での暖かい空気と上空の冷たい空気の温度差も、発達の一因となりました。9月に入り、ヨーロッパでは上空の偏西風が大きく蛇行していて、フランスやイギリスでは暖かな空気が居座り、9月としては異例な暑さとなりました。その一方で、その東側にあたるイタリアやギリシャ、地中海東部にかけては、上空の寒気が流れ込んでいました。
近年は地球温暖化の影響もあり、大雨や異常高温などの極端気象が世界では増加傾向にあります。気候が変わってきているこの時代、災害はいつ・どこで発生するかわかりません。それは日本においても例外ではなく、減災・防災に加えて、変わりゆく気候への対応・取り組みも進めていかなければなりません。
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