「秋桜(あきざくら)」はいつ、どうして「コスモス」になったのか?
ウェザーニュース / 2023年9月23日 10時30分
やっと少し秋らしくなってきましたね。
秋といえば、どんな花を思い出しますか? 「コスモス」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。コスモスはメキシコ原産の花で、明治時代に日本に渡来しました。可憐で鮮やかな花を咲かせます。
では「秋桜」はどうでしょうか。秋の桜? それもコスモスじゃないか、って?
確かに「秋桜」と書いて「コスモス」と読んだり、読ませたりすることもあります。
しかし「秋桜」を「コスモス」とも読むようになったのは、それほど古いことではありません。
いつから、なぜ、「秋桜」と書いて「コスモス」とも読むようになったのでしょうか。
山口百恵が歌ってヒットしたあの歌がきっかけ!?
実は「秋桜」を「コスモス」とも読むようになったのには、ある歌が関係しています。それは歌手だった山口百恵さんが歌ってヒットした歌『秋桜(コスモス)』です。
リリースされたのは1977(昭和52)年で、作詞作曲はさだまさしさんです。
「秋桜」を「コスモス」と読ませたことで、「秋桜(あきざくら)」を「コスモス」とも読むようになっていきました。
「コスモス」に「秋桜」を当てたのですね。
『秋桜』は『小春日和』のタイトルで発売される予定だった
この『秋桜(コスモス)』という歌のタイトルは当初「小春日和(こはるびより)」と付けられる予定でした。「小春日和」は歌詞の中にも出てきます。
しかし、タイトルはプロデューサーの酒井政利氏の提案で「秋桜(コスモス)」に変更となったと、さださん自身が語っています。
小春日和は晩秋から初冬にかけての暖かな晴天のことです。
山口百恵さんが歌った『秋桜』に「小春日和」という言葉が出てくることで、小春日和は春ではなく、晩秋から初冬にかけてのことだと知った人も多かったようです。
俳句では「秋桜」は「あきざくら」
「秋桜」は「コスモス」の別名で、本来「あきざくら」と読みます。
「秋桜」も「コスモス」も秋の季語になっていますが、「秋桜」を「コスモス」と詠むのは避けるべきだとする俳句の専門家もいます。「秋桜」と書いて、「コスモス」とルビを振ることなどは、少なくとも俳句では望ましくないということです。
では「秋桜」や「コスモス」を詠んだ俳句にはどのようなものがあるでしょうか。
一句ずつ紹介しましょう。
俳句に詠まれる「秋桜」と「コスモス」
~秋桜こもごもなびき皆なびき~
これは、俳人の三浦恒礼子(みうらこうれいし/1906~1990)が詠んだ一句です。
空き地や野原などで咲き誇っている秋桜が、風に吹かれて、次々に、代わる代わる、どれもこれも皆、横に倒れるように、揺れ動いているのでしょう。
美しい光景であるとともに、秋桜の力強さも感じられます。
~コスモスの押しよせてゐる厨口~
これは、俳人で国文学者だった清崎敏郎(きよさきとしお/1922~1999)が詠んだ一句です。
「厨口」は「くりやぐち」と読みます。厨は台所のことなので、厨口は台所の出入り口、勝手口のことです。
勝手口に押し寄せるように咲き乱れているコスモスの花々。「押しよせてゐる」と、コスモスを擬人化して詠んでいます。
コスモスの花言葉は「謙虚」「調和」「平和」「美しさ」などです。
穏やかで好ましいイメージのある言葉が並んでいますね。
コスモス=秋桜を愛(め)でに、高原や公園などに出かけてみてはいかがでしょうか。
参考資料など
『散歩で見かける四季の花』(著者/金田一、発行所/日本文芸社)、『美しい花言葉・花図鑑』(著者/二宮考嗣、発行所/ナツメ社)、『俳句の花図鑑』(監修/復本一郎、発行所/成美堂出版)、『まいにちの季語』(著者/辻桃子・安部元気、発行所/主婦の友社)、『鑑賞俳句歳時記 秋』(編著者/山本健吉、発行所/文藝春秋)、ソニーミュージック「秋桜(コスモス)/山口百恵」(https://www.sonymusic.co.jp/artist/MomoeYamaguchi/discography/SRDL-4131?bcRefId=83250172_SRDL-4131_01SFL)、スポニチ「さだまさし 名曲『秋桜』誕生秘話」(https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2022/07/10/kiji/20220710s00041000455000c.html)、文化庁「『小春日和』はいつ頃の天気か。」(https://www.bunka.go.jp/prmagazine/rensai/kotoba/kotoba_013.html)
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