桜の開花が早まっているのは日本だけ? ワシントンの開花状況をチェック
ウェザーニュース / 2024年5月11日 5時10分
平均気温の上昇は、四季の移ろいに変化をもたらしつつあります。一例をあげると、桜の開花日があります。
今年は予想に反して、平年よりもやや遅い開花となりましたが、昨年は全国的に記録を更新する早さで開花前線が北上しました。体感的にも近年は開花が早いなと感じている方が多いのではないでしょうか。
実際、過去14年間の開花日を振り返ると、平年の開花日よりも早かった年が12回もあり、開花が早まる傾向がはっきりと読み取れます。
今回は平均気温の上昇と桜の開花について、ウェザーニュースLiVE「地球天気予報」の解説を務める、ウェザーニュース予報センターの森田清輝(以下、モリタ)と一緒に考えてみました。
平均気温の上昇で開花地図は大きく変わる
日本の「国花」は桜と菊です。厳密にいうと法的に定められたものではありませんが、「国民に最も愛好され、その国の象徴とされる花」(広辞苑)という字義に照らしてみても、誰もが納得する選定です。
春の到来、新年度、入学・入社……、桜はハレの日を想起させるめでたい花という印象を持っている人も多いのではないでしょうか。桜の開花を楽しむお花見は、季節の変化を肌で感じる風習で、平安時代に貴族の間で定着したのが始まりとされ、1200年以上も連綿と受け継がれてきました。
しかし、平均気温の上昇によって桜の開花、それに伴うお花見も大きく変わる可能性があります。
基本的に草木は外気温の上昇を感じて芽吹きます。当然のことながら桜も平均気温が上昇すれば、「春」が来たと勘違いして開花が早まるのです。
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「平均気温の上昇による開花日の変化をウェザーニュースで算出し比較したデータがあります。1991〜2020年の平均開花日と、2071〜2100年の平均開花日予想です。
それによると、これまでは西日本から東日本の温暖な太平洋側から開花が始まり、北へと開花前線が北上していくパターンが常態でした。しかし、2071〜2100年の開花地図は大きく異なります。
何と九州から東北南部の内陸部がほぼ同時に開花し、逆に関東・東海・近畿などの多くの太平洋岸の温暖な地域では開花が遅くなるのです。
現在、南東北に位置する福島の平均開花日は4月7日ですが、2100年には2週間以上も早い3月22日頃となり、1週間ほど遅れて関東・東海・近畿などで開花が始まる逆転が予想されます」(モリタ)
開花が早まるポトマック川の桜
実は日本だけでなく、アメリカの「ワシントンの桜」も徐々に開花が早まっているそうです。
現在では日本の観賞用品種は世界中に移植され、桜の名所が誕生しています。なかでも有名なのがアメリカのホワイトハウスに近いポトマック川沿いに咲く約3800本の「ワシントンの桜」です。ソメイヨシノが中心ですが、カンザン(ヤエザクラの一種)なども元気に開花しているそうです。
4月に岸田首相が訪米した際、新たに250本の桜を寄贈するというニュースが話題となりましたね。
![](https://smtgvs.cdn.weathernews.jp/s/topics/img/202405/202405010265_box_img3_A.jpg?1714562185)
ところで、日本の「満開」は英語で「Peak Bloom(ピークブルーム)」。意味的にはほぼ同じですが、日本ではつぼみの約80%以上の開花で満開(八分咲き)。ところがアメリカでは、約70%以上でもう「ピークブルーム」と定義されています。
「開花日も日本では標本木(開花宣言を観測する桜で全国に58本)に5〜6輪の花が開いた日を指しますが、アメリカでは開花のステージを6段階に設定。
『ピークブルーム』の前に開花直前のつぼみが膨らんだ「Puffy Blossoms(パフィ・ブロッサムズ)=花のふくらみ」という状態があります。どうやらこれが日本の開花にあたるようです」(モリタ)
アメリカ人は日本人よりもせっかちなのでしょうか。国による違いが見えていて面白いですね。
![](https://smtgvs.cdn.weathernews.jp/s/topics/img/202405/202405010265_box_img4_A.jpg?1714639467)
「『ワシントンの桜』も過去20年の開花データを見ると、平均気温の上昇により徐々に開花が早まっているのです。2004〜2008年の5年平均と2020〜2024年の5年平均の満開日を見ても、約10日も早まっていることが分かります。
今年のアメリカの冬(2023年12月〜2024年2月)の平均気温も多くの地域で観測史上最高を更新するなど、かなりの暖冬となりました。ワシントンでの桜の開花も早まり、満開は3月17日(閏年)と、この20年で最も早い記録だったのです」(モリタ)
日本だけでなく、ワシントンでも温暖化が桜の開花に影響しているようです。このまま桜の開花が早まると、桜吹雪の入学式も過去のものになり、お花見文化の時期や様態が変わる可能性があります。
気候変動の急速な進行を食い止めるためにも、私たちも身の回りのできることから取り組み、一緒に地球の未来について考えていきませんか?
▶ 森田 清輝(もりた きよてる)
ウェザーニュース予報センター所属のベテラン気象予報士。現在は、24時間生放送の気象情報番組ウェザーニュースLiVEで「地球天気予報」コーナーの解説を務める。
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