紫陽花の“花”はどこ?意外と知らない豆知識
ウェザーニュース / 2024年6月2日 12時0分
6月を中心とした雨の多い季節に、色とりどりの花を咲かせる紫陽花(あじさい)。気分の沈みがちな梅雨が、紫陽花によって華やかになるといっても過言ではありません。
ところで、紫陽花の「花」のように見える部分は正確には花ではないことをご存知でしょうか。紫陽花の本当の姿を、公益財団法人日本花の会の和田博幸さん(特任研究員)に教えていただきました。
紫陽花ってどんな花?
紫陽花とは、どんな植物なのでしょうか?
「学名(属名)をHydrangea(ハイドランジア)といい、アジサイ科の低木で、樹高は30cmから2m、開花期は5~7月です。
原産地は東アジアや北アメリカで、この東アジアには日本が含まれています。もともと日本に自生していたガクアジサイ(額紫陽花)が母種となり、西洋にわたって品種改良されたものが世界の紫陽花の主流になったという説もあります。
紫陽花の名前は、真の藍色の花が集まるという意味で、「集(あず)+真(さ)+藍(あい)」が変化したものと言われています。
名前に示された通り、美しい色が集まって咲く紫陽花ですが、どこが花なのかおわかりでしょうか?実は多くの人が花だと思っている部分は、花ではないのです」(和田さん)
紫陽花の“花”は花じゃなかった!?
4~5枚の花びらが美しく咲きますが、あれは花ではないのですか?
ウェザーニュースで「紫陽花の花はどの部分だと思う?」というクイズ(実施日:2024年5月11日〜5月12日、回答数:9,728人)を①花びらのような部分、②花びらのような部分の中心、③小さなツブツブの3択形式で実施したところ、①と回答した方は1割ほどいらっしゃいました。
「紫陽花の花には、装飾花と真花(しんか/両性花)があります。紫陽花の花房の1つ1つは、中心部分に密集した真花と周囲を取り巻く4~5枚の大きな“花びらのようなもの”で構成されています。
多くの人が観賞している“花びらのようなもの”は装飾花で、ガク片が変化したものです。これは花粉を運ぶ昆虫を引き寄せるために発達したと言われていますが、ガク片なので通常は種が育ちません。
一方、花房の中央に密集している真花は、両性花なのでガク、雄しべ、雌しべ、花弁がそろっています。注意して見ていると、小さいながらもつぼみが開花していく様子が観察できることでしょう。
気象庁は、標本木としている紫陽花の真花が2~3輪咲いた状態を“紫陽花の開花日”として発表しています」(和田さん)
ガクの真ん中にあるのは何?
私たちは、紫陽花の花ではなく、ガクを観賞していることが多いのですね。では、ガクの真ん中にあるぽちっとした丸いものは何なのでしょう?
「これも花ではあるのですが、咲いたり咲かなかったりします。装飾花は雄しべも雌しべも退化しているので、多くは中性花となっているのです。咲いたとしても雄しべや雌しべがなかったりするので、次の命へつなぐことはできません。その役目は、真花が担ってくれます」(和田さん)
紫陽花が真に開花した状態とは
一般的なガクアジサイはガク片の真ん中に真花が密集していますが、ガク片だけがこんもりと密集して真花が見えない種類の紫陽花も見かけます。このような紫陽花は、どうやって開花するのでしょうか?
「ちょっと見にくいですが、丸い形をした紫陽花でもガク片をかき分けると、中にちゃんと真花があります」(和田さん)
これから本番を迎える「梅雨の名花」紫陽花は、複雑で神秘的な花だということがわかりました。見かけたら足を止めて、じっくり観察してみるのもよさそうです。
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