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地球温暖化のウソ? ホント?(8) “産業革命以降”CO2が大量に増えたって本当?

ウェザーニュース / 2024年6月22日 5時10分

ウェザーニュース

地球温暖化は自然現象でしょうか。それとも、人間の活動によって起こる事態でしょうか。

そのことを考える場合、主要な温室効果ガスであるCO2(二酸化炭素)に着目する必要があります。

CO2はいつから、なぜ大量に排出されるようになったのでしょうか。そして、地球にどんな影響を与えているのでしょうか。

気候変動問題の専門家である江守正多さん(東京大学 未来ビジョン研究センター教授)の解説を交えて紹介します。

Q 1/“産業革命以降”CO2が大量に増えたって本当?

◆A/本当です。産業革命以降、化石燃料からエネルギーを作るようになり、CO2の排出量が一気に増えました。

人類の歴史は「狩猟採集社会」「農耕社会」を経て、「工業社会」に移ったといわれます。現在は「情報社会」といわれますが、物質的な基盤は工業社会を引き継いでいます。

工業社会に入るきっかけとなったのが「産業革命」です。

18世紀半ばから後半にイギリスで始まった産業革命は、その後、ベルギー、フランス、ドイツ、アメリカ、日本、ロシアなどに広がっていきました。

産業革命によって、製鉄業や石炭業が盛んになり、蒸気機関が発明・改良され、さらに、蒸気機関車や蒸気船が発明され、鉄道が敷かれていきました。そして、工場制機械工業の仕組みが成立し、大量生産の時代が始まったのです。

産業革命と工業社会は人類に便利な暮らしをもたらしましたが、その一方で、大気汚染、土壌汚染、水質汚濁、騒音などの公害も招きました。その過程で、CO2の排出量も増えていったのです。

上記のグラフを見ても分かるように、1860年ごろまでは、森林減少などの土地利用変化に伴うCO2の排出量がほとんどの割合を占めていました。

ところが、産業革命によって石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料が大量に消費されるようになり、CO2の排出量が急上昇したのです。

その結果、大気中のCO2濃度は、産業革命前の280ppmからどんどん増加し、現在は5割も多い420ppmにまでなりました。これが地球温暖化を引き起こしている主な原因です。

▼「産業革命以前」の本当の意味

2016年に発効した、COP21(国連気候変動枠組条約締約国会議)のパリ協定では、長期の目標として「世界的な平均気温の上昇を、産業革命以前に比べて2℃よりも十分に低く保つとともに、1.5℃より低く抑える努力をする」ことなどが掲げられました。

このパリ協定では、「産業革命以前」という言葉がキーワードの一つになっています。

「産業革命期から、人間は地下から化石燃料を掘り出し燃やすことを始めて、これでエネルギーを作るようになりました。これによって、エネルギーを起源とするCO2の排出が始まったといえます。

森林伐採によるCO2の排出は産業革命以前からあったと考えられますが、規模はそれほど大きくありませんでした。そのため、産業革命を起点にしているのでしょう」(江守さん)

江守さんはさらに次のように話します。

「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)で産業革命前の気温の基準として使っているのは、1850~1900年の平均です。

実際には産業革命は18世紀に始まっていますが、気温計のデータが1850年ごろからしかないことと、1900年以前は人間活動の影響はまだ小さかったため、便宜的にこの期間を使っています。

人間活動とは、文字どおり、人間の活動のことで、人が地球上でおこなっている活動全般のことです。

なお、英語ではpreindustrialで、”pre-“は『…の前』、”industrial”は『産業の』という意味です。産業化以前や工業化以前と訳されることも多いです」(江守さん)

1850~1900年は、アメリカ、日本、ロシアの産業革命期と重なります。1900年ごろになると、世界の産業革命の影響が地球温暖化にも大きく影響を与えるようになったと考えられます。

▼CO2が増えると地球はどうなる?

CO2が大量に排出されると、どうして温暖化が進むのでしょうか。

「基本的に地球の気温は、太陽エネルギーの吸収と宇宙へのエネルギー放出のバランスによって決まります。

赤外線としてエネルギーを放出する際に重要な役割を担っているのは、CO2などの温室効果ガスです。地球の表面を温室効果ガスが覆っていることで、赤外線が宇宙に逃げにくくなり、地球は生物にとって、住みよい環境になっています。

別の言い方をすれば、たまたまそれくらいの温室効果ガスがあり、それくらいの温度に保たれていた地球の環境に適応する形で、今のような生態系が成り立っていて、その上に人類が今のような文明を築いたということです。

温室効果ガスがあることで、生物にとって、地球は住みよい環境が保たれていますが、近年、地球の気温は上昇しています。人間の活動によってCO2などの排出量が急激に増え、大気中の濃度が増加してしまい、温室効果が強くなり過ぎているのです」(江守さん)

温室効果ガスはCO2だけではありませんが、CO2がとりわけ注目されているのはなぜでしょうか。

「温室効果ガスのガス別排出量(ガスごとの温室効果の強さの違いを考慮して、CO2の排出量に換算したもの/以下左の円グラフ)を見ると、全世界では、CO2が75%を占めて1位で、CH4(メタン)が続きます(2019年のデータ。IPCC第6次評価報告書より)。

このようにデータを見ると、CO2が主要な温室効果ガスであることが一目瞭然です」(江守さん)

CO2は何を使うとたくさん排出されるのでしょうか。

「日本の場合を見ると、電気を使うことによる排出が圧倒的に多く、47.2%も占めています。次いでガソリン、都市ガス、灯油……と続きます(上記右の円グラフ)。

電気が圧倒的1位であることを意外に思う人もいるかもしれませんが、電気が生活のあらゆる場面に関係にしていることを考えると、納得がいくのではないでしょうか。

そして、日本ではまだまだ、電気の7割くらいが火力発電なので、CO2を排出しながら作られているのです。

電気やガソリンなどを使うとCO2が排出されること、そのことが地球温暖化につながっていること、そして、地球温暖化を止めるために、CO2が排出されない形にエネルギーを置き換えていく必要があることを、常に意識しておくことが大切です」(江守さん)

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ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、みなさんと一緒に地球の未来を考えていきます。まずは気候変動について知るところから、一緒に取り組んでいきましょう。


監修/江守正多
東京大学 未来ビジョン研究センター 教授(@seitaemori)

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