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雨の降り方が昔と変わってきた? 温暖化で日本の河川や海に起こっていること

ウェザーニュース / 2024年8月5日 5時10分

ウェザーニュース

日本各地でゲリラ豪雨や雷雨が多発するなか、7月末には山形県・秋田県を中心に記録的な大雨となりました。一方で関東甲信地方・東海地方は27日間と平年より短めの梅雨となり、今年は鬼怒川などで水不足が懸念されています。

「気候変動は水を通じて人間社会に悪影響をもたらす」と、東京大学大学院工学系研究科教授・沖大幹先生は説明します。

気候変動が天気から川や湖から海、地下水まで及ぼす影響について、水循環と気候変動などを研究し『水の未来――グローバルリスクと日本』(岩波書店)の著者でもある沖先生に教えていただきます。

日本各地で起きていること

近年、日本各地では気候変動が一因とみられる様々な異変が起きています。

例えば、諏訪湖(長野県)の御神渡り(おみわたり)。冬の寒さで湖が全面結氷し、夜の冷え込みよる氷の収縮と昼間の膨張を繰り返すことで氷が裂け、山脈のようにせり上がる現象ですが、2018年を最後に6季連続であらわれていません。近年は、頻度が低下しているとの指摘もあります。

6季連続で御神渡りがあらわれなかった諏訪湖(写真/諏訪観光協会)

ほかにも、日本海沿岸ではスルメイカの漁獲量が大きく減少し、逆にブリの漁獲量・資源量は増加しています。

東京湾では、東南アジア原産のミドリイガイの越冬が確認されたり、南方系魚類のチョウチョウウオの活動が秋以降も見られるようになりました。

琵琶湖(滋賀県)では冬の全層循環の時期が遅れ、2019〜20年は2年連続で確認されませんでした。全層循環とは秋から冬に表層の水温が低下し、雪解け水が流入することで深層まで循環して酸素が行き渡る現象ですが、異変により水質悪化や生態系へ影響する恐れがあります。

日本の湖や海、川などに何が起きているのでしょうか。

土砂災害や洪水を招く天気の極端化

豪雨や雷雨は夏だけでなく、1年を通して増えているようですが、雨の降り方が変わってきているのでしょうか。

文部科学省及び気象庁「日本の気候変動2020—大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書—」によると(以下同)、日本国内の大雨、短時間強雨の発生頻度は増えており、逆に雨の降る日数は減少しています。

なぜ、日本の天気は極端化してきているのでしょうか。

世界の平均気温は変動を繰り返しながらも上昇していますが、日本でも1898年〜2019年の間に100年当たり1.24℃の割合で上昇しています。

近年の豪雨の多発などはこの影響があるとされています。

「気温が高いほど大気中に含むことのできる水蒸気の量も増えるので、一度に降り得る雨の量が増大し、台風も強くなる可能性が高くなるので、大雨や短時間強雨などが増えます。

今後も、雨の降り方が極端になる傾向は続くと予測されています。土砂災害や洪水浸水リスク、特に都市洪水リスクが増大します。豪雨による道路や鉄道、水道施設、通信施設、エネルギー施設などインフラの寸断が起これば、影響は甚大となります」(沖先生)

今年の7月下旬に山形や秋田県などで豪雨被害に見舞われました。

「以前はまれだった大雨が、温暖化により変化しつつある気候下では、それなりの確率で生じる可能性が出てきています。

梅雨期の豪雨で大きな災害を受けるのは九州や四国、本州でもせいぜい新潟・福島くらいまでが主だった印象があります。昨今のように秋田や山形県、あるいは北海道でも梅雨期に豪雨が降るようになったのは、やはり気候変動に伴う水循環の変化の反映でしょう」(沖先生)

激しい雨が増える一方で、毎年のように夏に渇水が起きて取水制限や農業被害が問題となります。

「水は循環しているものですが、使いたいときに使いたい場所にあるかが問題です。

日本の年降水量・季節降水量は、長期的にはやや減少傾向でしたが、大きな変化はありません。しかし、雨の平均的な強度は強くなり、その分、雨の回数が減って雨と雨の間隔が長くなる傾向にあるため、ダム貯水池などの運用が難しくなりつつあります。

また、雨の強さが増大すると地下水や森林土壌に浸透せず、すぐに川を流れ下ってしまう分の水が増えるので、同じくらいの雨が降るとしても、利用可能な水資源は実質的に減ってしまいます。

激しい雨は、土砂流出による水質悪化にもつながります。河川を通して運ばれる土砂はリンや窒素など栄養塩も含んでおり、貯水池や海に運ばれて富栄養化が生じると、アオコなど藻類の大量発生を招きます。

ダムや貯水池に土砂が堆積(たいせき)すれば貯水容量を減少させます。これらは安定して利用できる水の減少につながります」(沖先生)

雪の降り方が春以降の水にも影響

水資源に影響を与えるものとして、雪の変化も見逃せません。日本は世界でも有数の雪国です。冬には季節風が日本海から供給される水蒸気を大量に運び、日本海側に雪として降らせます。

しかし、北日本、東日本、西日本の日本海側の地域では、一冬で最も多く雪が積もった量の年最深積雪が減少傾向にあり、1日に20cm以上の降雪が観測される大雪の日数も減少しています。

「スキーリゾートの経営への悪影響などのほか、春先の融雪による出水の減少が懸念されます。緑のダムと呼ばれる森に対して、雪は白いダムともいえる貴重な水資源です。

東北地方をはじめ、積雪地帯では春の豊富な雪解け水が川に流れ、水田耕作で一番水が必要な時期の代掻き(しろかき)用水として役立てられてきました。雪解けは穏やかに進むため、土中に浸透して地下水としてもよく蓄えられます。

温暖化で雪が雨になったり雪解けが早まれば、季節的な水の供給が変化します。ダム管理も難しくなり、水力発電による電力供給にも影響します」(沖先生)

海では水温と海面が上昇

海についてはどうでしょうか。

日本近海では平均海面水温が上昇しており、2019年までの約100年間の上昇率は、+1.14℃/100年です。

「世界でも平均海面水温は長期的に上昇(+0.55℃/100年)していますが、日本近海は世界平均の2倍を超える割合です。

日本海沿岸のスルメイカやブリ、東京湾のミドリイガイ、チョウチョウウオなどの変化は、高い水温の継続が一因と考えられます」(沖先生)

海水温の上昇は氷床や氷河の融解や海水の膨張などを起こし、海面にも変化を及ぼしています。世界の平均海面水位は上昇しており、海抜の低い島国の危機などが伝えられていますが、日本沿岸では1980年以降上昇傾向にあります。

「日本沿岸の平均海面水位は、今後も上昇すると予測されています。海面が高くなると、高潮や津波の危険、ビーチの消失や海岸浸食のほか、河川への塩水の浸入などが起こります。

地下水への塩水の侵入も懸念されます。日本では推計で年間約118億m3の地下水(※)が、生活用水、工業用水、農業用水などに使われています。

特に島では地下水を重要な水源としていることが多く、影響も深刻になります。小さな島の地下水は淡水レンズといって、塩水の上に淡水が密度差により薄いレンズ状に浮いていますが、海面上昇は淡水レンズの厚みを減らす恐れがあります」(沖先生)

海水温や海面の上昇とともに、海の質を変えうるものが酸性化です。大気中の二酸化炭素濃度の上昇により、海水に溶け込む量も増え、酸性化が進んでいます。日本海沿岸では海域による違いはありますが、平均的に酸性化が進行しており、サンゴや貝類などへの影響が懸念されます。

(※)国土交通省「令和5年版日本の水資源の現況」より

今後も極端現象は増大する!?

最近ニュースなどで、「100年に1度の〜」といった表現が珍しくなくなってきました。大きな気象災害も毎年のように起きています。

「洪水、渇水の頻度が増大するおそれのある地域が、日本にも世界にもあります。

100の河川あれば、100年に1度の洪水は、平均すると毎年どこかで生じる可能性がありますが、20世紀の基準では100年に1度の頻度だった稀な極端現象が、21世紀には気候変動のために50年に1度、あるいは30年に一度といった頻度に増大すると想定されます」(沖先生)

長い時間をかけて日本の雨や雪の降り方、水の循環に合わせてつくられてきた生態系、生活文化やインフラがこのまま変化を強いられていくのでしょうか。

ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、みなさんと一緒に地球の未来を考えていきます。まずは気候変動について知るところから、一緒に取り組んでいきましょう。


参考資料
文部科学省及び気象庁「日本の気候変動2020―大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書—」、環境省「気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018 ~日本の気候変動とその影響~」、国土交通省「令和5年版日本の水資源の現況」

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