9月は「長月」、何が“長い月”なの? たくさんある"9月の異称"
ウェザーニュース / 2024年9月1日 5時10分
9月に入りました。今年の残暑は例年以上に厳しく、猛暑日が続いた8月のような40℃近い気温は落ち着いたものの、依然として日中の気温は35℃前後に達するところも多い見込みです。
一方で、北海道ではようやく最高気温が30℃を下回る日が続く予想で、少しずつ秋の気配を感じられるようになってきました。そんな9月の代表的な和風月名は、「長月(ながつき)」です。
『二十四節気と七十二候の季節手帖』などの著者で作家の山下景子さんに、長月の由来とその他の9月の異称について伺いました。
なぜ「長月」と呼ぶのか?
「長月は、古くから“夜長月(よながづき)”が略されたものだといわれてきました。旧暦9月ともなれば、ずいぶん日の入りが早くなり、夜が長いと感じるようになります。そこから「夜長月」と呼ぶようになり、縮まって“長月”になったということです。
ほかに、“稲刈月(いねかりづき)”や“稲熟月(いなあがりづき)”が変化したという説もあります」(山下さん)
その他の9月の呼び名は?
長月のほかにも、9月の異称はたくさんあります。その中からいくつかを選んで、山下さんに解説していただきました。
【寝覚月】(ねざめづき)
夜が長くなり、夜中に冷え込むようになると、眠っている途中で目が覚めることも多くなります。
それだけではありません。秋は物思いの季節。恋や行く末のことなどをあれこれ思いわずらうと、どうしても眠りが浅くなります。そして、夜中に目覚めてしまうのです。
昔の人にとって9月はそんな月だったようで、「寝覚月」という異称がつけられました。
【小田刈月】(おだかりづき)
旧暦9月は、稲刈りの月です。
そこから、「小田刈月(おだかりづき)」とも呼ばれました。田んぼの稲を刈りとる月という意味です。
「小」がついていますが、これは小さいという意味ではなく、語調をやわらげたり整えたりするための接頭語だといわれます。
いよいよ実りの秋ですね。
【菊秋】(きくしゅう・きくあき)
「菊秋」「菊見月(きくみづき)」「菊咲月(きくさきづき)」「菊開月(きくひらきづき)」「菊月(きくげつ・きくづき)」……これらはすべて9月の異称です。
旧暦9月といえば、菊の月だったようですね。
9月9日は、菊の節句とも呼ばれる重陽(ちょうよう)の節句。江戸時代は盛大にお祝いをしたそうです。
【紅葉月】(もみじづき)
9月には、「紅葉月」という異称もあります。
8月にも「木染月(こぞめづき)」「紅染月(べにそめづき)」など、紅葉にちなんだ異称がありますが、本格的な紅葉は9月だったようです。
「薄紅葉(うすもみじ)」「斑紅葉(むらもみじ)」という言葉があるように、昔の人は、さまざまな状態の紅葉を楽しんだようですよ。
【色取月】(いろどりづき)
旧暦9月は、木の葉が色づくことから、「色取月」とも呼ばれました。「いろどるつき」ともいいます。
木の葉だけでなく、色とりどりの果物が実る季節です。しかも、秋の空気は澄んでいて、いっそう鮮やかに見えます。まさに色彩豊かな「色取月」ですね。
【梢の秋】(こずえのあき)
旧暦では7月、8月、9月が秋ですから、9月は晩秋にあたります。そこで、「末(すえ)の秋」とも呼ばれました。
和歌では、梢(こずえ)の「すえ」に、末の秋の「すえ」をかけて詠われたので、「梢の秋」も旧暦9月の異称として使われるようになりました。
色づいた梢の情景が浮かんでくるような美しい月名です。
【涼秋】(りょうしゅう)
「涼秋」は、字の通り、涼しい秋という意味です。とはいえこの場合の「涼」は、どちらかというと、冷え冷えとした感覚をさしたようです。
「涼秋」と呼ぶのにふさわしい日が多いことから、そのまま、旧暦9月の異称にもなりました。
現在の9月は、ようやく涼しさが感じられ始めた頃といえるでしょうか。
それでも、秋の味覚が出回り始める時期です。実りの秋を感じながら、心豊かに過ごしたいものですね。
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