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「木の実時雨(このみしぐれ)」ってどんな雨? 秋を楽しむ雨の名前7選

ウェザーニュース / 2024年10月15日 9時5分

ウェザーニュース

秋といえば、爽やかな季節と思う人が多そうですね。実際、「爽やか」は秋の季語でもあり、秋晴れなど、からっと晴れた、過ごしやすい日が多いです。

ただその一方で、雨も多く、うっとうしく感じられる日も少なくありません。

秋の雨も、実はいろいろです。どんな雨があるのか、秋の雨や雨に関連した言葉を知って、少しでも雨の日を楽しんでみませんか。7つ選んで、それぞれ俳句とともに紹介しましょう。

雨の名前7選

(1)秋の雨/秋雨(あきさめ、しゅうう)


「秋の雨」はそのまま「秋に降る雨」のことです。

「秋雨」は「あきさめ」あるいは「しゅうう」と読んで、秋に降る雨のことですが、しばしば秋の長雨を指します。

「しゅうう」と読む雨には「驟雨」もあって、こちらはにわか雨のことです。

 秋に日本付近に出現して秋雨を降らせる停滞前線を「秋雨前線(あきさめぜんせん)」といいます。

「秋の雨」も「秋雨」も秋の季語になっています。

~馬の子の故郷はなるる秋の雨~
小林一茶(こばやしいっさ/1763~1828)

子馬が売られていく。秋の雨のもと、いななきが響く。もの悲しさがあります。

~秋雨や杉の枯葉をくべる音~
夏目漱石(なつめそうせき/1867~1916年)

秋雨が降る中、杉の枯れ葉がパチパチパチと音を立てて燃えているのでしょうか。静寂な雰囲気が漂います。

(2)秋入梅、秋黴雨(あきついり)


「秋入梅」と「秋黴雨」はどちらも「あきついり」と読みます。

梅雨のように降り続く秋の長雨のことで、「ついり」は「つゆいり」から転じた言葉です。

~秋黴雨まろべば机のうら寒し~
草村素子(くさむらもとこ/1919~1974)

この「机」は文机でしょうか。秋の長雨が降り続く中、冷たくしけている季節を机の裏側に感じたのでしょう。

(3)秋霖(しゅうりん)


秋霖も秋入梅/秋黴雨と同様に、秋に降る長雨です。

秋雨前線は「秋霖前線」ともいいます。ただ、秋雨前線のほうが広く知られているので、ニュースなどで「秋霖前線が……」などと言われたら、ほとんどの視聴者は頭にはてなマークが浮かぶかもしれませんね。

~秋霖に濡れて文字なき手紙かな~
折笠美秋(おりがさびしゅう/1934~1990)

墨で書いた手紙でしょうか。書いたほうも、受け取ったほうも、がっくりと肩を落としそうです。

(4)秋の雷(らい)/秋雷(しゅうらい)


「雷(かみなり/らい)」は夏の季語ですが、初秋のころに、大気が不安定になって、とどろく雷は「秋の雷」、あるいは「秋雷」といい、秋の季語にもなっています。

地面に激しく降り注ぐ秋の雷雨には、深まりゆく秋を感じさせられます。

~秋雷や旧会津領山ばかり~
高野素十(たかのすじゅう/1893~1976)

会津藩があった福島県は山が多い。秋の雷も多く、山々に雷鳴が鳴り響いているのでしょう。

(5)御山洗(おやまあらい)


「御山洗」は富士山に関する雨の言葉です。

富士山は古来、霊峰として崇(あが)められてきました。しかし、下界から登山する人たちによって汚(けが)されてしまうという考えがあります。これを洗い清めてくれるのが御山洗です。

御山洗は旧暦の7月26日、初秋の時季に降る雨を指します。

~降り止まぬ御山洗となりにけり~
鍵和田秞子(かぎわだゆうこ/1932~2020)

人の手(足?)で汚された霊峰富士も、これですっかり洗い清められたでしょうか。

(6)秋時雨(あきしぐれ)


「時雨」は晩秋から初冬にかけて断続的に降る雨で、冬の季語にもなっています。

その「時雨」に「秋」が付くと、晩秋の時雨のみを指し、秋の季語でもあります。

秋晴れだったかと思うと、雨が降り出し、まもなくやむことがあります。これが秋時雨で、どこか侘(わび)しさも漂います。

~秋時雨人の濡れざま吾(わ)が濡れざま~
中村汀女(なかむらていじょ/1900~1988)

秋時雨に濡れる様子を誰かと自分とで比べているのでしょうか。どんな違いが見られたのでしょうか。

(7)木(こ)の実時雨


雨そのものではないのですが、秋の雨に関連して生まれた趣深い言葉も紹介しましょう。

それは「木の実時雨」。晩秋などに木の実が音を立ててパラパラと落ちる様子を時雨に例えた言葉です。ちょっと風の強い日などに出合えそうですね。

~正倉院木の実時雨のただ中に~
河合佳代子(かわいかよこ)

奈良の東大寺正倉院での出来事でしょう。音などを通して、正倉院の秋の風情が感じられるようです。

爽やかな、からっとした秋晴れは、もちろん好ましいのですが、秋の雨にも趣や恵みがあります。

「今日は雨か……」と、がっかりしそうなときには、上で紹介した言葉や俳句を思い出してみてはいかがでしょうか。気持ちが少し軽くなったり、しみじみ感慨深くなったりして、秋の雨の日を過ごせるかもしれませんよ。




参考資料
『読んでわかる俳句 日本の歳時記 秋』(編著者/宇多喜代子・西村和子・中原道夫・片山由美子・長谷川櫂、発行所/小学館)、『平凡社俳句歳時記 秋』(責任編集/水原秋桜子、発行所/平凡社)、『新版 角川俳句大歳時記 秋』(編集委員/茨木和生・宇多喜代子・片山由美子・高野ムツオ・長谷川櫂・堀切実、発行所/‎ KADOKAWA)、『作句歳時記 秋』(編著者/楠本憲吉、発行所/講談社)、『鑑賞俳句歳時記 秋』(編著者/山本健吉、発行所/文藝春秋)、『全季俳句歳時記』(編著者/柳川彰治、発行所/青弓社)、『学校歳時記 4 秋の季語』(監修/白坂洋一、協力/秋尾敏・夏井いつき、発行所/ポプラ社)

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