二十四節気「寒露」 秋の季語“やや寒”や“うそ寒”とは
ウェザーニュース / 2024年10月8日 5時10分
10月8日(火)から、二十四節気の「寒露(かんろ)」に入ります。寒露と次の節気の「霜降(そうこう)」は晩秋に当たります。
もともと寒露とは「晩秋から初冬のころに降りる冷たい露」の意です。ですから二十四節気の寒露は、そんな冷たい露が降りる頃という意味になります。特に朝晩は冷え込みが増して、一日一日と、深まる秋が感じられる時季です。
その寒露を幾つかのキーワードをもとに見ていきましょう。
「体育の日」から「スポーツの日」へ
毎年10月の第2月曜日は「スポーツの日」で、国民の祝日の一つです。国民の祝日に関する法律によって、「スポーツにしたしみ、健康な心身をつちかう」日と定められています。
今年(2024年)のスポーツの日は10月14日(月)で、12日(土)、13日(日)と合わせて三連休になる人も多いでしょう。
スポーツの日の歴史を少し見てみましょう。
1964年の東京オリンピック開催を記念して、1966年から10月10日が「体育の日」という祝日になりました。
しかし、2000年から、日程が10月の第2月曜日に変更になりました。これは祝日の一部を固定日から特定の月曜日に移動させた「ハッピーマンデー制度」によるもので、三連休をとりやすくするためでした。
そして、2020年以降、名称が「体育の日」から「スポーツの日」に変わりました。
実は「スポーツの日」は新しい名称ではなく、“元に戻った”ような変更です。というのも、1961~65年まで、10月の第1土曜日は、国民の祝日ではないものの、「スポーツの日」だったからです。
スポーツの日→体育の日→スポーツの日という名称の変遷があったのですね。
「キンモクセイ」はトイレのにおい?
「キンモクセイ」は、ヒガンバナやコスモス、キクなどとともに、秋を代表する花です。
キンモクセイの特徴の一つに、強めの甘い香りが挙げられます。
かつてはトイレの芳香剤の香りとしてもよく使われたため、「トイレのにおい」と認識している人もいるとか。
今は部屋の芳香剤としても使われているので、年中、キンモクセイの香りに包まれている人もいるかもしれません。
しかし、自然のキンモクセイの香りは、人工的な香りに比べると、ずっとやさしく、さわやかです。
キンモクセイの花は黄みがかった橙色(だいだいいろ)をしています。
花は小さいため、香りが感じられても、どこにあるのかわからず、「どこから漂ってくる香りだろう?」と、辺りをキョロキョロすることもありそうです。
キンモクセイの花言葉の一つに「謙虚」があります。その由来は、すばらしい香りを放つのに比べ、花が控えめであることだとされています。
個性に満ちた独自の自分を持ちながら、出しゃばらず、控えめでもある。人にたとえると、なかなか望ましいあり方のようにも思えます。
「やや寒(さむ)」は、むしろうれしい?
秋になって、ようやく感じるようになった寒さを「やや寒」と表現し、秋の季語にもなっています。
「うそ寒(さむ)」や「そぞろ寒(さむ)」も秋の季語で、やや寒の類義語です。「うそ寒」は、感覚的にうっすらと感じる寒さのこと、「そぞろ寒」は、何となく感じる寒さのことだといいます。
やや寒→うそ寒→そぞろ寒の順に寒さが深まっていくという人もあれば、それぞれ寒さの度合いに区別はなく、語感や心持ちの違いという人もあります。
〜やゝ寒や日のあるうちに帰るべし〜
これは明治から昭和期の俳人で小説家の高浜虚子による一句です。
思ったことを言っているだけのようなさりげない句ですが、自然に寄り添って暮らす姿がうかがえます。
「秋の日はつるべ落とし」を実感する時季
「秋の日はつるべ落とし」という言葉があります。
「つるべ」は漢字で「釣瓶」と書き、井戸水を汲み上げるために縄や竿の先に付けた桶のことです。
つるべを井戸に下ろすと、つるべはあっという間に井戸の下に落ちていきます。
その様が、いっきに沈んでしまう秋の日(太陽)に似ているとして、「秋の日はつるべ落とし」という言葉が生まれました。
確かに秋の日暮れ時は、ついさっきまで日が照って明るかったのに、急に暗くなったと感じることが多いものです。
今では井戸もつるべもごく少なくなりましたが、井戸の様子を覚えている人はいるでしょう。
次の俳句は飯田綾子さんという女性による一句です。
〜よく喋る女に釣瓶落(おとし)の日〜
買い物帰りに、知り合いの女性に会ったのでしょうか。話し好きのその女性が長々と話し続けるうちに、日がみるみる暮れていき、少々うんざりしている様子がうかがえます。
地域などによりますが、寒露は全体的には大変過ごしやすい時季です。梨、柿、栗、さつま芋、松茸(まつたけ)、秋刀魚(さんま)など、おいしいものも、たくさん味わえます。
スポーツの日に限らず、スポーツで汗を流すにも、とても適した時季です。皆さん、それぞれ、ご自身の寒露の楽しみを見つけてみてはいかがでしょうか。
監修/山下景子:作家。『二十四節気と七十二候の季節手帖』(成美堂出版)や『日本美人の七十二候』(PHP研究所)など、和暦などから日本語や言葉の美しさをテーマとした著書が多数ある。
写真:ウェザーリポート(ウェザーニュースアプリからの投稿)
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