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なぜ葉の色が変わるの? 紅葉と黄葉の違いは? 紅葉の不思議

ウェザーニュース / 2024年11月14日 5時0分

ウェザーニュース

北日本の高山を皮切りに、今年も紅葉のシーズンがやってきました。童謡「紅葉(もみじ)」の歌詞に「赤や黄色の色様々に」とあるように、緑色だった木々の葉が色合いを変えていく様子は美しくも不思議です。

なぜ秋を迎えると葉の色が変わるのか、赤い紅葉と黄色の黄葉(こうよう/おうよう)の違いなど、紅葉のメカニズムについて、京都府立植物園技術課樹木係 課長補佐兼係長の中井貞さん(樹木医)に解説して頂きました。

紅葉開始の目安は最低気温8℃以下

まず、木々の葉が色づくためにはどのような気象条件が必要なのでしょうか。

「落葉樹が紅葉や黄葉に色づき始めるには、その日の最低気温が8℃以下となることが必要で、5℃以下になると色づきは一気に進むとされています。

この数値は紅葉の代表ともいわれるイロハモミジを対象にした指標です。イロハモミジは野生の植物ですから、色づきの状態にはそれぞれ個体差や地域差があります。ばらつきがあるなかで“全体的にみるとこれぐらいになる”といったひとつの目安で、明確に8℃以下、5℃以下というデータが存在するわけではありません」(中井さん)

気温の低下以外に、美しい紅葉の条件といえるものはありますか。

「一般的に『美しい紅葉の3条件』といわれるのが、十分な日照が確保されていること、水が十分に行きわたっていること、昼夜の気温の差が大きいことです。それに加えて、空気が澄んでいること、平地より斜面であることなどが挙げられます。

美しい紅葉になるには、対象となる樹木が健全に育成していることも必要です。さらに、陽射しのほか秋の深まりとともに低下していく日ごとの気温差も、紅葉の美しさに影響しています」(中井さん)

紅葉のメカニズムと、紅葉、黄葉、褐葉の違い

緑色だった木々の葉が秋を迎えると、紅葉したり黄葉したりするのはなぜなのでしょうか。

「まず、紅葉と黄葉というのは、主に落葉樹が落ち葉に先立って葉が色づくことをいいます。そのほか褐色に変わる褐葉(かつよう)もあります。

植物は空気中に含まれる二酸化炭素(CO2)と根から吸い上げた水、太陽光を使って葉で光合成を行い、エネルギーとなる糖類と酸素を作ります。

光合成を行う際、光を吸収するために役立っているのが葉緑体に含まれるクロロフィルという色素です。クロロフィルは青色と赤色の光を吸収して緑色の光を反射します。春から夏にかけての葉が緑色に見えるのは、そのためです」(中井さん)

「秋になって気温が下がり日照時間が短くなると光合成の機能が低下するため、植物は“もう光合成を休んで、エネルギーの基になる糖類やアミノ酸類を蓄えよう”と、葉の付け根に『離層(りそう)』というバリアを発達させて、通道組織と呼ばれる水と生産物が行き来する道筋を塞ぎます。

離層が閉じていくに従って、クロロフィルは分解していきます。その過程で葉の色が赤や黄色に変化して紅葉、黄葉が起こり、その後に落葉が始まるのです」(中井さん)

赤い紅葉、黄色の黄葉、褐色の褐葉はそれぞれ、どのようなメカニズムによって違いが生じるのでしょうか。

「紅葉の赤色は、アントシアニンという赤い色素に由来します。アントシアニンは春から夏にかけては存在せず、秋になり離層に塞がれて葉に蓄積したブドウ糖や蔗糖(しょとう)に、紫外線が作用して生成されます。

光合成機能が低下した葉緑体は、紫外線の刺激が強すぎて壊れてしまいます。それを防ぐためのバリアとしてアントシアニンが生成され、光を吸収してクロロフィルの分解を遅らせて光合成を続けさせようとするという説もあります。

春先の芽吹きの頃、ヤマザクラなどに赤い葉ができることがあります。これもまだ働きの未熟な葉緑体を紫外線から守るために、アントシアニンが生成されているのではと考えられています。

イロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジが紅葉の代表種で、ウルシ科やツツジ科などの植物も赤く色づきます」(中井さん)

「黄葉の黄色は、もともと葉の中に存在するカルテノイドという黄色い色素が、クロロフィルの分解によって見えるようになったものです。分解前のクロロフィルはカルテノイドの約8倍と多いため、春から夏にかけては黄色が現れず緑色に見えるのです。

イチョウやシラカンバ、ヤナギやポプラなどが黄葉の代表です。

褐葉も黄葉と同じ原理で、クロロフィルの分解により褐色色素のタンニンが現れたものです。ブナやスギ、ケヤキやトチノキなどが褐葉します。

黄葉や褐葉となる色素は、量の多少はありますが紅葉する葉にも含まれているため、アントシアニンの生成が少ないと褐葉することがあります」(中井さん)

たとえば同じ1本のイロハモミジでも、上のほうは真っ赤なのに下は褐色に近い、今年は真っ赤にならないといった違いが見られることも多いですね。

「個体や場所、年ごとの紅葉の美しさの違いは、寒暖差が影響しているのではと推測されます。寒暖差が激しいと離層の発達が順調になって、鮮やかな赤色になる傾向がみられます。

寒暖差が少ないと離層がだらだらといった感じで作られます。それによっていろいろな色合いが見えてきたり、あまり美しいとはいえない年になったりするのではないかと思われます」(中井さん)

日本の紅葉が美しい理由

日本の紅葉が美しいのは、なぜなのでしょうか。

「日本は緯度からいって、紅葉に適した落葉樹がバランスよく生きられる、かなり限定された地域です。さらに、国土が南北に長いなかで高山から海辺までが短い距離に収まっていること、7割が森林で自然性が豊かなうえ、常緑樹と落葉樹がバランスよく分布している地域が多く、植物多様性が高いことなどが挙げられます。

世界中に紅葉する植物は少なくありませんが、イロハモミジほど真っ赤になる植物がこれだけ多く自然環境のなかにある場所は、日本以外にありません。

イロハモミジの分布には地域差がありますが、同じように真っ赤に色づくヤマモミジとオオモミジは仲間といえて、この3種のどれかは国内のほぼすべてで愛でることができます。これも日本の紅葉が美しいとされる一大要素だと思います。

東京など平地の都市部でも、紅葉、黄葉の見頃が近づいています。いわゆる名所以外でも美しい紅葉が見られる場所を見つけて、自分だけの紅葉狩りを楽しんでみてはいかがでしょうか。

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