紅葉を観賞することを「紅葉狩り」というのはなぜ?
ウェザーニュース / 2024年11月4日 13時45分
「狩り」は、一般的には「狩猟」、つまり「野生の鳥や獣を捕らえること」を意味します。これとは別に、「狩り」には「魚介類や植物をとること」「山野で花や草木を探し求め、採集したり観賞したりすること」などの意味もあります。
「潮干狩り」「ブドウ狩り」「キノコ狩り」「ホタル狩り」「桜狩り」「紅葉(もみじ)狩り」などの「狩り」は「狩猟」以外の使い方です。
動詞の「狩る」にも「花や草木を探し求め、観賞する」という意味があります。
木の葉が色づき始め、紅葉(こうよう)を愛(め)でることができるようになるこの時季、主に「紅葉狩り」について、見ていきましょう。
紅葉狩りは、紅葉を取って、集めること?
紅葉狩りを、もしかしたら「紅葉を取って、集めること」と理解している人もいるかもしれません。「狩る」の語感から、紅葉を木から「取る」「もぎ取る」と連想してしまいがちです。
しかし、紅葉狩りは「山野に出かけて紅葉を観賞すること」を意味します。「紅葉見(もみじみ)」と「観楓(かんぷう)」も、紅葉狩りとほぼ同じ意味です。紅葉見はそのまま、紅葉を見ることです。
それはさておき、「もぎ取る」ことと「観賞する」ことでは、意味がだいぶ違いますね。では、紅葉狩りはなぜ「紅葉を観賞すること」の意味になったのでしょうか。
「狩り」「狩る」の意味は広がっていった
「狩り」は本来、鳥獣を捕まえる意味で使われていましたが、時代が下るにつれて、その意味は広がっていきました。
上で見たように、魚や貝、果物などをとることにも使われるようになり、やがて、花や紅葉を見る、眺める意味にも使われるようになったと考えられます。
「狩り」が草花などを愛でる意味でも使われるようになったのは、平安時代に狩猟をしない貴族が現れたことが関係しているといわれます(ほかの説もあります)。当時の貴族は、歩くことを下品と考えて、牛車(ぎっしゃ)で外出することが多かったようです。
しかし、山道を牛車で上って、花や紅葉を愛でることは難しい。そこで、花や紅葉を見に、山野に歩いて出かけることを「狩り」に見立てるようになったと考えられています。狩猟であれば、歩いて出かけるのもおかしくはない、と平安貴族は考えたのかもしれません。
『方丈記』に描かれた桜狩りと紅葉
歌人で随筆家の鴨長明の作で、鎌倉時代前期の随筆『方丈記』に、桜狩りや紅葉について記述している箇所があります。
「帰るさには、をりにつけつつ、桜を狩り、紅葉をもとめ、蕨(わらび)を折り、木の実(このみ)を拾ひて、かつは仏に奉り、かつは家土産(いえづと)とす」
訳してみましょう。
「帰り道には、折々の季節によって、桜を狩り、紅葉を探し、蕨を折り、木の実を拾い、あるいは仏に供え、あるいは家に持ち帰って、土産にする」
この「桜を狩り」は、桜の花を訪ね歩いて観賞することです。「紅葉をもとめ」も「紅葉を狩り」と言い換えることができるでしょう。
紅葉狩りの宴で、鬼に命を狙われた武将
『紅葉狩(もみじがり)』という題の古典もあります。室町時代の能役者で能作者の観世信光(かんぜのぶみつ)が著した能の作品です。概要を紹介しましょう。
平維茂(たいらのこれもち/平安時代中期の武将)が、美女に化けた鬼に、山中で紅葉狩りの宴(うたげ)に誘われます。美女の舞と酒のために、不覚にも前後を忘れてしまう維茂。命が危うくなるが、最後には、本性を現した鬼をついに退治します。
山も街も、これから少しずつ色づいてきます。
紅葉(こうよう)は遠目でも楽しめます。実際に山などに出かけて、紅葉狩りができないときは、古(いにしえ)の貴人を思い、遠くから紅葉を眺めてみてはどうでしょうか。
写真:ウェザーリポート(ウェザーニュースアプリからの投稿)
参考資料など
『広辞苑』(編者/新村出、岩波書店)、『大辞泉』(監修/松村明、小学館)、『明鏡国語辞典』(編者/北原保雄、大修館書店)、『三省堂 詳説古語辞典 小型版』(編者/秋山虔・渡辺実、三省堂)、『すらすら読める方丈記』(著者/中野孝次、講談社)、NHK放送文化研究所「放送現場の疑問・視聴者の疑問」(https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/065.html)
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