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植物の冬支度? 落ち葉はどこへ行く? 冬になると落葉する理由

ウェザーニュース / 2024年12月4日 5時0分

ウェザーニュース

紅葉の時季が過ぎ、冬の寒さの深まりとともに、山々のモミジや街の公園、並木のイチョウなどの落葉(落ち葉)が目立つようになってきました。

植物が“冬支度”ともみえる落葉をなぜ行うのかやメカニズムなどについて、京都府立植物園技術課樹木係 課長補佐兼係長の中井貞さん(樹木医)に解説して頂きました。

樹木が葉を落とすのは、休もうとしている!?

樹木はなぜ冬になると落葉するのでしょうか。

「樹木は葉が光合成で糖分などの栄養分を生産しながら、細胞そのものが呼吸をするなどして消費もしています。生産と消費のバランスが崩れてくると葉を持つ意味がなくなるので、葉を落として光合成に適当な時期まで休んでおこうとする。これが、落葉の理由です」(中井さん)

紅葉から落葉にかけてのメカニズムについて教えてください。

「紅葉と黄葉(こうよう/おうよう)や褐葉(かつよう)は、植物が秋の日照時間減少による光合成機能低下により“光合成を休んでエネルギーの基になる糖類などを蓄えよう”と『葉柄(ようへい)』と呼ばれる葉の付け根に『離層(りそう)』という組織を形成し、水と生産物が行き来する道筋を塞ぐことで葉の色素に変化が生じるなどの現象です。

落葉は樹木にとって、その次の段階にあたります。寒さが厳しくなるにつれて離層がさらに発達し、葉っぱを完全に落として光合成をやめるのです」(中井さん)

「地球は球体ですので、樹木が位置する環境によってバランスが崩れる時期に違いが生じます。また、葉は低温と乾燥に弱いとされており、一年中高温湿潤な光合成にとって都合のいい環境なら落とさずにいられますが、温帯の日本では晩秋から冬の間は光合成には適さない低温になりますので、その間は葉を落としておきます。

南北に長い日本列島は中部・近畿地方を境に、かなり植生が異なっています。寒い時期の長い北日本には落葉樹が多く、近畿より西では常緑樹が中心になり、さらに南の九州や沖縄ではほとんどが常緑樹です。落葉のしくみに気温(低温)が大きくかかわっていることの証明でもあります。

一方、熱帯では乾季と雨季で雨量が変わりますから、乾季の雨の降らない時期には乾燥を避けて、葉を落とす落葉樹も存在するのです」(中井さん)

落葉樹と常緑樹の違いは?

一年中緑の葉を付けている常緑樹もありますが、落葉樹との違いは。

「常緑樹と呼ばれる樹木も、実は落葉しています。たとえばアラカシ、スダジイ、ヤブツバキといった多くの常緑樹は、年間を通して古い葉と新しい葉が順番に入れ替わり落葉するので、冬も緑色の葉を付けています。一年の中でも多くの新しい葉が芽吹く春頃に落葉も多くなります。

落葉樹と広葉樹の違いがよくわかるのは、葉の厚さです。樹木の葉の厚さは耐用年数の長さを示していて、落葉樹は春の芽吹きから落葉までの半年ほど。

これに対して常緑樹は3~7年と長いため、シイやツバキなどの葉は人間の毛髪のキューティクルのような、“ツルツルテカテカ”の『クチクラ層』に覆われて分厚くなっています。一方1年で役割を終えるクスノキのような常緑樹もあり、その場合の葉は、落葉樹のように薄く“ペラペラ”です」(中井さん)

落ち葉はどこへ行くの?

落ち葉は植物が生きるために不可欠?

土壌に落ちた葉は、その後どうなってしまうのでしょうか。

「土壌にいる菌類や微生物などによって時間をかけて分解されます。森林を作る土壌は、落ち葉や生物の死骸などの有機質と風化した岩石とで構成されていて、その最上部にあたる落ち葉を『リター層』と呼びます。

リター層は分解がなされていない状態ですが、その下に何段階にも分かれている『A層』と呼ばれる土壌があります。A層では上から順に【分解が始まった】【やや分解している】【だいぶ分解している】【完全に分解している】という過程の違う土壌が形成されていきます。

葉が光合成を行うためには、大気中の二酸化炭素(CO2)と根から吸い上げた水(H2O)が必要です。“良い土壌”がないと、根が葉へ十分な水を吸い上げることができません。“良い土壌”のために重要な役割を担っているのが落ち葉です。

落ち葉が供給されることで土壌の形成は続き、効率よく水を吸い上げるために土壌で根が伸びていけるのです。つまり、葉は付いている時には自ら光合成を行い、落ち葉となってからも次代の葉の光合成のために重要な役割を担っているのです。

落ち葉は単に微生物などによって分解されて消えていくばかりではなく植物そのもの、ひいてはすべての生態系が生きるための状況、条件を作っているといえます。

そのため、公園などで落ち葉をゴミとして掃除してしまうと、樹木の根が伸びていくはずの土壌ができない状態になります。そうした環境下では、土壌改良をしたり、有機分供給のために施肥(せひ)をする必要があるのです」(中井さん)

落葉は微生物や菌類の栄養分にとどまらず、生態系のためにも不可欠な存在だということがわかりました。

俳句の季語でもあり、「百歳(ももとせ)の気色を庭の落葉哉」(芭蕉)などの秀句もあります。やっかい者扱いすることなく、温かな目で眺めてみてはいかがでしょうか。


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