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世界中の淡水が急速に減少傾向 地球温暖化が影響か

ウェザーニュース / 2024年12月30日 12時0分

ウェザーニュース

私達の生活に欠かせない「水」。NASA(アメリカ航空宇宙局)やドイツの衛星観測研究チームの研究によると、世界の陸地に存在する淡水は2014年の世界規模の干ばつで減少し、回復していないとのことです。

世界の陸地から東京ドーム97万個分の淡水が消失?

水の惑星と呼ばれる地球ですが、その大部分は海水です。私達が普段の生活に使用している淡水は地球全体の水のわずか2.5%に過ぎません。地球の陸地にある淡水は、主に氷河・氷床・湖沼・河川・積雪そして地下水として存在しています。

水がたくさんある地域は水の引力によって地球の重力がわずかに周囲と異なります。水が増えたり減ったりすると、重力分布がほんの少しだけ変化し、それを衛星から測定することで、水の量や分布を推定することができます。

NASAとドイツの研究チームは衛星観測によって、2014年5月以降、地球の陸地に存在している淡水の量が急速に低下していることをつきとめました。2015年から2023年までの平均の淡水量は、2002年から2014年の平均に比べ約1,200立方km減少したと算出されていて、これは東京ドームおよそ97万個に相当します。

大規模な干ばつがさらなる水の減少の引き金に? 温暖化との関連も

こちらのグラフは全球の陸域に存在する水の貯留量の偏差(2003-2020年平均との差)を示しています。グラフの中で水が大きく減っている2014年はエルニーニョ現象が発生していました。その影響を受けたブラジルで大規模な干ばつが起こり、それを皮切りにオーストラリアや北米、ヨーロッパ、アフリカなど各大陸で大規模な干ばつが連続して発生しました。このエルニーニョ自体は2016年の春には終息しましたが、世界各地の水が減少した状態は続きました。

ひとたび干ばつが起こると、地面は乾燥し切って土壌が固くなります。固く締まった土壌には水が染み込みづらいので、エルニーニョが終息して雨が戻って来ても土壌にはあまり染み込まずに川などに流れ出てしまいます。こうして、エルニーニョが引き起こした干ばつはその後の水の減少をも引き起こすことになったと考えられます。

さらに、地球温暖化によって気温が上昇して、水の蒸発が盛んになるため、陸地は乾きやすくなっています。大気中の水蒸気の量が増えるので、雨が降る時は激しくなる一方で、降らない期間が長くなるような極端化も起こっています。

従来の温暖化研究とも矛盾なし 乾燥地域でさらに乾燥化が進む

左の図はウェザーニューズの気候テックチームが作成した水ストレス(水不足の指標:濃い紫ほど水不足が深刻な地域)のマップです。濃い紫色になっている地域は、人々が必要としている水の量(需要)に対して、河川や地下水などの人が利用可能な水の量(供給)が不足している、慢性的にいわゆる水不足の地域です。

右の図は今回NASAとドイツの研究チームが観測したこの9年間に淡水量の最小値を記録した地域のマップを表しています。

左右のマップを比べてみると、濃い紫色の地域=慢性的に水不足な地域と、着色されている地域=この数年で淡水量が減少している地域がだいたい一致していることがわかります。これは、慢性的に水不足の地域でさらに淡水が少なくなり、深刻な水不足になりつつあるということを示唆しています。

元々乾燥した地域でさらに乾燥化が進む”というのは、これまでの地球温暖化の影響の研究結果とも矛盾がありません。降水量の減少や蒸発散量の増加、それに伴う雨の降り方の極端化や土壌の固結など複合的な要因で、乾燥地域の乾燥化が加速していると考えられます。ここ数年の淡水の減少は温暖化の影響が顕在化してきていると解釈できそうです。

ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、皆さんと一緒に地球の未来を考えていきます。まずは世界の現状を知るところから、一緒に取り組んでいきましょう。


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