今年も猛暑や豪雨、土砂災害が頻発 温暖化と異常気象の関係は?
ウェザーニュース / 2024年12月29日 5時10分
2024年ももうすぐ暮れようとしています。
振り返ってみると、今年も非常に暑く、「異常気象」という言葉がしばしば聞かれた一年でした。
猛暑や豪雨、台風、洪水、土砂災害などが全国各地で毎年のように発生し、大きな被害をもたらしています。
異常気象は実際に増加しているのでしょうか。異常気象は地球温暖化と関連があるのでしょうか。ウェザーニューズ気候テックチームの吉良真由子(以下、キラ)の見解をまじえて解説します。
2024年の世界平均気温は99%の確率で過去最高を更新
WMO世界気象機関は先月、2024年9月までの地球の平均気温は産業革命以前の1850〜1900年の基準に比べ1.54℃(誤差±0.13℃)高かったと発表しました。これはパリ協定の努力目標である1.5℃を上回る水準です。
アメリカ海洋大気庁も今月、2024年の世界の平均気温は、過去最も高くなる可能性が99%以上であると発表しています。
振り返ってみると、今年は世界各地で気温の最高値を更新。2024年7月、アメリカのカリフォルニア州デスバレーでは、月平均気温が過去最高を更新する42.5℃を記録し、54℃に達した日もありました。
アフリカ大陸北西端に位置するモロッコの内陸部では、48.3℃を記録し、多くの人が熱中症で死亡しました。
「日本と同じく6〜8月が夏となる北半球を中心に、世界各地で記録的な高温が多発しました。長引く熱波の影響で、熱中症などの健康被害はもちろん、蒸発散量の増加により干ばつが誘発されたり、北米や南米では乾燥により山火事が頻発するなど、二次的な災害も数多く発生したのです」(キラ)
2024年の気温は、日本でも過去最高になる見通しです。特に際立ったのは、猛暑(35℃以上)日の多さです。
福岡県太宰府市では、7月19日〜8月27日まで40日連続で猛暑日になり、さらに年間では猛暑を62日記録し、いずれも国内の歴代最高を更新しました。
そのほか、福岡市や大阪市、名古屋市なども、年間猛暑日日数は過去最多になりました。
このまま温暖化が進むと、猛暑日はさらに増えていくのでしょうか。
「二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの排出の削減が進まないという仮定をもとに、ウェザーニューズ気候テックチームが解析した結果、2050年ごろには大阪市で40日前後と、2024年の41日レベルの猛暑日日数が当たり前になると見られます。
最悪のシナリオで進んだ場合、猛暑日の日数は、2100年には大阪市で70日以上、名古屋市で60日以上、東京都心では40日以上に達する可能性もあります。大阪市では、1年の20%以上が猛暑日になる計算です」(キラ)
今年も頻発した豪雨被害
大雨で川が氾濫し、山形県では浸水被害が相次いだ
大きく変わってきているのは、気温だけではありません。今年も豪雨災害が各地で相次ぎました。
2024年の7月下旬には、山形県や秋田県で大雨による大規模な洪水が発生し、甚大な被害をもたらしました。
特に山形庄内北部から最上にかけて集中的に雨が降り、24時間降水量は新庄市で388.0mm(5時40分まで)、最上郡真室川町では384.0mm(4時40分まで)に達し、24時間で400mm近い雨を観測。いずれも1976年からの統計開始以来の観測史上1位の値を更新しています。
山形県の7月1か月の雨量が200mm強であるため、24時間で1か月分の約2倍の量が降ったことになります。
台風による被害も目立ちます。
1951年の統計開始以来3事例目となる東北地方太平洋側に上陸した台風5号(マリア)は、お盆期間だった8月12日に岩手県に上陸。久慈市下戸鎖(しもとくさり)では48時間降水量が481.5mmに達し、1978年の統計開始以来1位の記録を更新しました。
「超ノロノロ台風」と呼ばれ、非常にゆっくりとした速度で進みながら日本列島に被害をもたらした台風10号(サンサン)も注目されました。
8月最終週に九州や四国に襲来し、直撃した九州はもちろん、近畿、東海や関東まで広い範囲で線状降水帯が発生。こちらも各地で統計開始以来1位の記録を更新するような大雨が相次ぎました。
雨量の記録を塗り替えた「令和6年9月能登半島豪雨」
元日に能登半島で発生した「令和6年能登半島地震」の復旧がままならない9月には、能登半島で豪雨に見舞われ、住民は再び大きな被害を受けました。「令和6年9月能登半島豪雨」などと呼ばれます。
9月21日から続いた大雨で、輪島市などではこれまでの雨量の記録をことごとく塗り替えました。
輪島市、珠洲(すず)市、能登町を対象に大雨特別警報も発表され、1時間の雨量は最大121.0mmで、3時間の雨量は最大222.0mmを記録しました。輪島市の9月1か月の平年雨量は214.5mmなので、わずか3時間でこれを上回ったことになります。
集中して雨が降ったことで、能登地方を流れる小さな河川はたちまち水位が急上昇し、相次いで氾濫したのです。
近年の異常気象と地球温暖化には関係がある
大きな災害が毎年のように発生していますが、気候変動の影響はどの程度あるのでしょうか。
「今年(2024年)の夏の顕著な高温や、7月下旬に発生した山形県をはじめとする北日本での豪雨について、気象庁では、異常気象分析検討会が持たれました。
この検討会では、今夏は強い高気圧だったことや、日本近海の海面水温が高温だったこと、エルニーニョ現象の影響があったことなどが報告されました。
ウェザーニューズの気候解析チームによると、これまでは発生し得ないような大雨も気候変動が進んだ近年は、発生頻度が上がっています。
「例えば、台風10号の影響で宮川の氾濫により大きな被害となった大分県由布市では、アメダス湯布院で48時間で603mmという大雨を記録。これは約30年前には、123年に一度程度という非常に稀な現象でしたが、近年を含む2030年ごろまでの35年間では63年に一度程度の起こりやすさに変化すると解析されており、発生頻度は約2倍に上がっています」(キラ)
「さらに、『イベント・アトリビューション』という手法を使って、温暖化の影響で7月24〜26日に発生した山形県などの東北地方での降水量が20%以上も増大したこと、9月21〜22日に発生した能登半島豪雨で能登半島北部の積算雨量が15%程度多かったことが指摘されました。
また、温暖化がなければ今年のような高温はほぼ起こりえなかったこともイベント・アトリビューションで解析されています。
下のグラフは、日本上空の今年7月の平均気温を示しています。赤線は実際の(地球温暖化がある)2024年の気候条件下、青線は地球温暖化がなかったと仮定した場合の気候条件下です」(キラ)
「縦軸は頻度を表し、グラフのピークになっている気温が最も起こりやすい気温であることを示しています。
薄灰色の部分は、平年値(1991年~2020年の30年間)の7月の頻度分布です。黒の点線は今年の7月の実況である17.6℃付近に引かれています。
温暖化がなかった場合の青線は黒点線をほぼ超えておらず、逆に温暖化した場合の赤線や実際の平年値である薄灰色の部分だけが黒の点線を超えています。つまり、温暖化した場合でしか、黒の点線(今年の観測値)のような高温は起こりえなかったということです。そのことが、このイベント・アトリビューションの結果、わかりました。
近年の猛烈な暑さや、大雨、またそれに伴う洪水被害などは、気候変動の影響を受け日本各地で発生しやすい状況となってきていることは明らかです。激甚化する気象災害に備えることが、これからの防災対策や、企業でのBCP対策などにとっては必要不可欠となってきます」(キラ)
減災や防災を実現し、私たちの身を守るためにも、地球温暖化や気候変動について学んでいきましょう。
ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、皆さんと一緒に地球の未来を考えていきます。まずは気候変動について知るところから、一緒に取り組んでいきましょう。
※イベント・アトリビューション……観測された異常気象の発生確率や強度を、人間活動による気候変動がどの程度変えたかを定量評価する技術。スーパーコンピューターの気候モデルを使って、シミュレートする
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