能登半島地震から1年、災害ボランティアから見えた復興状況と現地の声
ウェザーニュース / 2025年1月1日 8時5分
2024年1月1日に発生した石川県能登地方を震源とするマグニチュード(M)7.6、最大震度7の「令和6年能登半島地震」から1年が経過しました。能登地方は9月には豪雨にも見舞われるなど、厳しい状況が続いています。
ウェザーニューズは被災地の復旧活動に社員が積極的に参加できるよう、ボランティア休暇制度を導入。この制度を利用することで、社員は1年間に最大5日間のボランティア休暇を取得できます。
ボランティア経験者を含めて5名ほどのグループを編成して毎週1週間ずつ訪問し、現地では壊れた家屋などの撤去や炊き出しといった活動を行います。2月以降、本社社員の10%以上が能登に赴きました。
ウェザーニュースキャスターで気象予報士の川畑 玲(かわばた・あきら)も、ボランティア休暇制度で能登地方を3度訪れ、復旧支援活動を行いました。
能登地方の復興状況や住民の方々の声などについて実体験に基づき、話してもらいました。
地震・豪雨災害に襲われた能登半島
令和6年能登半島地震は1月1日16時10分、半島北端にあたる珠洲(すず)市の深さ16kmを震源として発生。輪島市と志賀(しか)町で震度7、周辺各地で震度6強など、震度1以上の揺れが北海道から九州地方にかけて観測されました。
内閣府などのまとめによると、11月26日までの死者・行方不明者は462人(うち災害関連死235人)、負傷者は1345人に上ります。住家の被害は全壊6437戸、半壊2万3086戸で、停電は最大約4万戸、断水は最大約13万6440戸に及びました。
道路も路面の損壊や土砂崩れなどによって各所で寸断され、救援活動に大きな障害をもたらしました。
復興を目指すなかで、再び大きな自然災害に襲われます。9月20日から22日にかけての「令和6年奥能登豪雨」では、石川県内の多い所で総降水量が500mmを超えました。これは9月の月間降水量の2倍を超える数値です。
11月26日までの県内の死者は輪島市10人、珠洲市3人、能登町2人の計15人、重軽傷者は62人という人的被害が生じました。住家被害も全壊119戸、半壊614戸、一部損壊79戸、床上・床下浸水1480戸に達しました。9月の豪雨ではほかに山形県など4県にも人的・住家被害が生じています。
避難している方の数も見てみましょう。震災直後のピーク時は約4万人に上りました。9月には約500人まで減った一方で、奥能登豪雨が発生。豪雨による避難者がピーク時に約1500人に上りました。現在も250人以上の方が地震や豪雨による避難生活を強いられています。
「復旧、復興はまだまだ十分に進んでいない」というのが実感
川畑キャスターは能登地方を襲ったこれらの災害にあたり、3月下旬と8月下旬、11月下旬の3度にわたって能登地方でボランティア活動に従事しました。
まず、現在までの復旧・復興状況についてはどのように感じられましたか。
「復旧、復興はまだまだ十分に進んでいないというのが実感です。あちこちに倒壊していたり、傾いてしまったりした家屋が見られます。ブルーシートで養生している家や手付かずになっている家も多く見られます。
斜面は土砂崩れが発生し、今も崩れやすい状況になっている箇所が多くあります。道路も舗装復旧工事が施されたり、仮設道路が造られたりしていますが、路面状況の悪い箇所、通行できない箇所も散見できます」(川畑キャスター)
能登半島地震からの復興中の9月に豪雨災害にも襲われた(石川県輪島市、2024年11月27日撮影)
「さらに、田んぼは地震の影響で段差ができていたり、豪雨の影響で土砂や流木が流れ込んでいて、来シーズンはコメの作付けができない状況になっているところもありました」(川畑キャスター)
「二重災害」に見舞われた現地でのボランティア
ウェザーニュースの川畑キャスター(石川県輪島市、2024年11月27日撮影)
3度のボランティアの際には、具体的にどのような活動をしたのですか。
「地震発生から3ヵ月ほど経った3月下旬でも、現場は手つかずの状態が多く残っていました。その中で少しずつ復旧・再建が始まっており、私たちはその後押しとして、壊れたブロック塀や落下した瓦の撤去作業を行いました。
特に、倒壊の危険がある、または復旧作業の妨げになるブロック塀は、ハンマーや電動ハンマーを使って慎重に撤去しました。また、現場には能登瓦と呼ばれる重い瓦が大量に散乱しており、その撤去作業にも従事しました。能登瓦は非常に重いため、体力を要する作業でした」(川畑キャスター)
倒壊したブロック塀や散乱した能登瓦(石川県輪島市、2024年3月27日撮影)
「8月下旬には、地震被害を受けたお宅で家財の整理や搬出作業を行いました。3月下旬以来、約5ヵ月ぶりに能登を訪れましたが、復旧作業が少しずつ進む一方で、そのペースは想像以上にゆっくりで、より多くの労力や時間が必要なことを改めて実感しました。
家財の整理では、地震で倒れたり散乱した物をひとつひとつ、家主の方に丁寧に確認しながら、保管するものと廃棄するものを仕分けました。廃棄する品については、家屋から慎重に搬出しました」(川畑キャスター)
被災した家屋で家財整理や搬出作業を行なった(石川県輪島市、2024年8月21日撮影)
その後、能登半島は9月下旬に発生した豪雨によって再び被災します。
「地震に続く豪雨による『二重被災』に見舞われた能登半島で、3度目のボランティア活動を行うため、11月下旬に現地に入りました。
地震の被害が依然として残る中、今回の豪雨で新たに土砂災害が発生し、水害の跡も手つかずのままで、状況はさらに悪化していました。
また、11月下旬ということもあり、現地の冷たい空気から冬の訪れを感じ、本格的な雪や寒さが来る前に、少しでも多くの作業を進めたいという思いを強く持ちました」(川畑キャスター)
土砂が流れ込んだ家屋。バケツリレーで外へ運び出す(石川県輪島市、2024年11月27日撮影)
「豪雨の影響で土砂が流入した家屋から、土砂を運び出す作業を行いました。ボランティアが土砂をバケツリレーして、軽トラックに乗せるのです。
土砂は粘土質で水分を多く含んでおり、見た目よりも非常に重くなっていました」(川畑キャスター)
物理的サポートと同時に心のケアも力になれる
被害を受けた家財道具を運び出す(石川県輪島市、2024年8月21日撮影)
3度のボランティア体験から、どのようなことが感じられましたか?
「復旧、復興のための作業は懸命になされていますが、作業の進んでいないところも多く残されています。被災地が能登半島の先端部にあたるという地理的要因や、比較的ご年配の方が多いということもあり、まだまだ人手が必要だと感じました。
一方で、一人ではなかなか進まない作業もみんなで協力して活動することで、確実に一歩ずつ前進していきます。
また、ボランティアの活動を終えた後に、依頼してくださった方の喜ばれている表情を見たり、感謝の言葉を聞くことができ、物理的にサポートをするのと同時に、心のサポートもできるのだと実感しました」(川畑キャスター)
ボランティアは自分自身の安全にも細心の注意を
ボランティア活動に参加する際に「注意しなければならないこと」がありましたら。
「現地の方の力になると同時に、自分自身の安全にも細心の注意を払う必要があると思います。災害の影響で足元に危険なものが散乱していたり、倒れやすいものがあるからです。
また、能登地方では大地震が発生した後に豪雨災害が発生したこともあり、新たな災害の発生にも注意が必要だと思います。再度大きな地震が発生する可能性も否定できません。しっかりと準備を行い、最新の気象状況もこまめに確認しながら、安全第一で活動することが重要だと思います。
また、被災した現場を目の当たりにして、“少しでも力になりたい”という気持ちが強くなると思いますが、身体的にも精神的にもくれぐれも無理をしないことも大事だと思います」(川畑キャスター)
災害のたびにいわれることですが、被災は「他人事でなく自分事」と考え、能登半島地震から1年にあたり、防災対策について改めて考え、行動してみてはいかがでしょうか。
参考資料
国土交通省「令和6年能登半島地震における被害と対応」、内閣府「令和6年能登半島地震による被害状況等について」(令和6年11月26日14時00分現在)、石川県「令和6年能登半島地震による人的・建物被害の状況について」、同「令和6年奥能登豪雨による被害等の状況について」
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