週刊地震情報・年末拡大版 能登半島地震が2024年の世界最大 東アジアで被害地震目立つ
ウェザーニュース / 2024年12月30日 9時0分
2024年に国内で観測された震度1以上の有感地震の回数は、12月28日時点で3666回に達しました。昨年よりも1000回以上多く、3000回を超えたのは熊本地震が発生した2016年以来です。
元日に発生した能登半島地震による活動が大きな要因で、1月だけで1678回の有感地震が観測されています。
また、能登半島地震の震度7のほか、豊後水道と日向灘でも震度6弱の強い揺れを伴う地震が起き、震度5弱以上も28回と2016年以来の多さになりました。
正月の能登を襲った大地震
能登半島地震の震央分布
2021年から地震活動が続いていた石川県の能登地方。昨年5月にマグニチュード6.5、最大震度6強の地震が起きた後、秋以降は落ち着いた状態が続いていました。
一変したのが年明け早々の元日の夕方です。16時10分頃にマグニチュード7.6、深さ16kmと推定される地震が発生し、石川県輪島市と志賀町で最大震度7、七尾市や珠洲市、穴水町、能登町では震度6強の揺れを観測しました。
国内で震度7を観測する地震は2018年の平成30年北海道胆振東部地震以来6年ぶり7回目です。激しい揺れにより多数の建物が倒壊するなど甚大な被害に見舞われています。
能登半島の北端付近や周辺の海域に分布する断層帯が活動したとみられ、活動した震源断層は北東から南西方向に伸びる150kmほどの長さに達していたと解析されています。
大規模な隆起がみられる
隆起した海岸の様子
地震活動によって能登半島の北岸を中心に大規模な隆起がみられ、港が使えなくなるなどの影響が出ました。隆起により海岸線が大きく後退した様子は夏を過ぎてもはっきりとわかる状況です。
また、海底を含む浅い震源での規模の大きな地震で、メカニズムが逆断層型であったことから津波が発生し、日本海沿岸の広い範囲で潮位変動が観測されました。
実際に観測された津波の高さは石川県金沢の80cm、富山県富山の79cmなど1m以上の所はありませんでしたが、震源に近かった能登半島では隆起によって観測ができていません。
後日の調査によって能登町や珠洲市では津波の浸水高(実際に浸水した深さ)が4m以上に達し、衛星画像による観測では沿岸の広い範囲が浸水したことがわかっています。
震源が陸地に近かったことで地震の発生から津波到達までの時間が短かったこともこの地震の特徴です。
写真:ウェザーリポート(ウェザーニュースアプリからの投稿)
4月に豊後水道でM6.6 南海トラフ地震とは異なるメカニズム
豊後水道周辺の震源分布
4月17日(水)23時14分頃、豊後水道を震源とするマグニチュード6.6、深さ39kmと推定される地震が発生しました。この地震で愛媛県愛南町と高知県宿毛市で最大震度6弱、愛媛県宇和島市で震度5強、愛媛県八幡浜市、大洲市、西予市、大分県佐伯市、津久見市などで震度5弱の強い揺れを観測しています。
豊後水道を震源とする地震で震度6弱(旧震度6を含む)以上の揺れを伴うのは、詳しい統計が残る1919年以降で初めてで、愛媛県または高知県で震度6弱以上の揺れを観測するのも同様に初めてとなります。
今回の震源は想定される南海トラフ巨大地震の震源域内ですが、プレート境界よりも深い所で発生しました。
また、地震のメカニズムが正断層型であるため、南海トラフ巨大地震で想定されるプレート境界の逆断層型ではなく、フィリピン海プレート内部で発生した地震とみられます。
政府の地震調査推進本部は17日(水)の地震によって、想定される南海トラフ巨大地震の可能性が高まったと考えられる変化は観測されていないとしています。
日向灘でM7.1 初の南海トラフ地震臨時情報
南海トラフ地震臨時情報
8月8日(木)16時43分頃、日向灘を震源とするマグニチュード7.1、深さ31kmと推定される地震が発生しました。この地震で宮崎県日南市で最大震度6弱、宮崎市、串間市、都城市、大崎町で震度5強を観測しています。
日向灘を震源とする地震で震度6弱以上の揺れを観測するのは1919年以降で初めてです。マグニチュード7以上は1984年8月のマグニチュード7.1以来の規模になります。1968年の日向灘地震はマグニチュード7.5と今回より大きな地震でしたが、当時は地震の観測地点が少なかったため、最大震度は5(当時の震度階級)でした。
地震のメカニズムは西北西ー東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型と解析されています。震源の深さやメカニズムから、沈み込むフィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生した地震とみられます。
この地震では津波が発生し、宮崎県宮崎港で最大50cm、日南市油津で40cmを観測しました。
政府の地震調査研究推進本部は、日向灘で今後30年以内にマグニチュード7.1前後の地震が発生する確率が70〜80%としていて、今回の地震はこれに相当するものとみられます。
震源が南海トラフ巨大地震の監視領域内で、マグニチュードが6.8以上だったことから評価検討会が行われました。その結果、南海トラフ地震における大規模地震の発⽣可能性が平常時と⽐べて相対的に⾼まっていると判断され、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されています。
この情報が発表されるのは2019年の運用開始以来初めてです。
今年もM8以上の地震なし 世界最大は能登半島地震
世界のM7.0以上の地震(USGSホームページ引用/ウェザーニュース加工)
2024年、アメリカ地質調査所の解析によるマグニチュード7以上の地震は10回発生しました。昨年の19回よりも少なく、今年もマグニチュード8を超える地震は起きていません。3年続けてマグニチュード8以上がなかったことになります。
最も規模が大きかったのは元日の能登半島地震で、地質調査所の解析ではマグニチュード7.5です。そのほか、台湾のマグニチュード7.4や、前述の日向灘のマグニチュード7.1など、東アジアで大きな被害地震が目立った一年です。
台湾の地震
4月3日(水)8時58分頃、台湾の東岸を震源とする大きな地震が発生しました。地震の規模はマグニチュード7.4、深さは約40kmと推定されています。(台湾当局はマグニチュード7.2、気象庁はマグニチュード7.7と解析)地震のメカニズムは北西ー南東方向に圧力軸を持つ逆断層型です。
震源域の一部が陸域にも分布した上、地震の規模が大きかったため台湾の広い範囲で強い揺れを観測し、震源に近い花蓮県では震度6強の激しい揺れに見舞われました。台湾の震度階級は日本と同じ10段階で示されます。
震度6弱に相当する揺れとなった花蓮市ではビルが倒壊するなど建物に甚大な被害が発生し、20人近い方が亡くなりました。山間部では土砂崩れも多発しています。
台湾付近はフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界になっていて、地震活動が非常に活発です。マグニチュード7を超えるような地震がしばしば発生していて、1999年に発生した「921大地震」などと呼ばれるマグニチュード7.7の地震では甚大な被害に見舞われました。
また、この地震では台湾に近い沖縄県与那国町で最大震度4、石垣市と竹富町で震度3の揺れを観測しています。
地震の規模が大きかったことで気象庁は沖縄県を対象に津波警報を発表し、1〜3mの津波が襲来するおそれがあると予想しました。実際に観測された津波は与那国島と宮古島で0.3m、石垣島で0.2mに留まっています。
震源域が陸域にかかっていたことや、津波のエネルギーが最も大きな方向が沖縄よりも南寄りだったことで、地震の規模の割には津波の影響が小さかったと考えられます。
出典・参考
※日本国内の震源・震度の情報は特に記載が無ければ気象庁より。海外の震源情報は特に記載が無ければアメリカ地質調査所(USGS)より。発表機関により震源情報に差が生じることがあります。
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