身近なカフェインでの中毒症に注意 1月は受験シーズンや多忙期
ウェザーニュース / 2025年1月8日 12時50分
年が明けて、1月は大学入学共通テストが18〜19日に迫る受験生にとっては最後の追い込み、社会人にとっても仕事始めの何かと多忙な時期でもあります。そんなとき、つい口にしてしまいがちなのが、気持ちをリフレッシュさせてくれるエナジードリンクや市販の眠気・だるさ防止薬などのカフェインを含む食品などです。
手軽に摂取可能なカフェインですが、摂取し過ぎると中毒症状を起こしたり、場合によっては死に至るほどの悪影響を体に及ぼすこともあるそうです。カフェイン摂取の適量や中毒症の危険性などについて、日本大学医学部附属板橋病院救命救急センター科長の山口順子先生に解説して頂きました。
めまいや嘔吐を起こし、死に至った例も
カフェインはコーヒーなどに含まれていることがよく知られていますが、体にどのようなメリット、デメリットを及ぼす成分なのでしょうか。
「カフェインはコーヒーやチョコレート、お茶などの原料となる天然素材のコーヒー豆やカカオ豆、茶葉などに含まれ、近年はカフェインを含む各種のエナジードリンクも自動販売機などで手軽に購入できます。また、風邪薬や眠気・だるさ防止薬、酔い止め薬など市販の医薬品、栄養ドリンクなどの医薬部外品にも含まれていることがあります。
カフェインは適量を摂取することによって、頭を冴えさせたり眠気を覚ましたりする効果があります。しかし、過剰に摂取すると中枢神経系が刺激され、めまいや心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠の原因ともなります。さらに消化器管の刺激によって、下痢や吐き気、嘔吐(おうと)を引き起こすこともあり、死に至るケースもあります」(山口先生)
若い世代に過剰摂取者が増加
日本中毒学会は、全国の救急医療機関38施設を対象に2011~15年度に救急搬送されカフェイン中毒と判明した人を集計した調査を実施。急性カフェイン中毒を発症して救急搬送された事例が2011年から5年間で101人だったと発表しました。
また、2015年に福岡県の20歳代男性が死亡するなど、カフェイン中毒死に至った人が3人いました。福岡県のケースでは、エナジードリンクを日常的に飲んでいて胃の中からカフェインの錠剤も見つかったと報告されています。
「カフェインは短時間で1g(1000mg)以上を摂取すると、中枢神経系や心臓が過剰に刺激され、中毒症状が出るとされています。
日本中毒学会の報告では、救急搬送された患者は20~30歳台が多く、男性の方がやや多い傾向が見られました。カフェイン中毒が増え始めたのは2013年頃で、ちょうどエナジードリンクが自販機で手軽に販売されるようになった時期にあたります」(山口先生)
1缶あたり100mg以上含まれているエナジードリンクも
エナジードリンクやインスタントコーヒー、各種のお茶などに含まれるカフェインの濃度はどれくらいなのでしょうか。
「食品中のカフェイン濃度を見ると、コーヒーや紅茶、緑茶など日常的に摂取する食品にカフェインが含まれていることがわかります。また、コーラなどの清涼飲料水にも含まれていますが、とくにエナジードリンクには1缶あたり、コーヒー2杯分に相当するカフェインを含むものもあります。
エナジードリンク製品に記載されている表示をよく確認し、妊婦や授乳中の女性、カフェインに敏感な人などは飲用を控えてください。
このほか、市販の眠気・だるさ防止薬にも大量のカフェインが含まれていることがあるので過剰摂取には気をつけてください」(山口先生)
カフェイン摂取量の目安は?
カフェインに対する感受性は年齢や肝機能、カフェイン分解酵素力の違いなど個人差が大きく、健康に及ぼす影響を正確に評価することが難しいようです。そのため、医学的に1日あたりの適正といえる摂取許容量(ADI)の数値は設定されていません。ただし、各国の保健機関などは独自に『目安』を定めています。
「たとえば欧州食品安全機関 (EFSA)は2015年、カフェインの安全性に関する科学的意見書を公表しています。健康な成人では、カフェイン摂取量が1回に体重1kgあたり約3mg(体重70kgなら約200mg)以下であれば、急性中毒症の懸念は生じないとしています。
一般的なエナジードリンクのカフェイン含有量は、1Lあたり約300~320mgとされており、製品1本あたりではEFSAが示す基準値を超えることはありません。
妊婦については、カフェイン摂取量が1日200mg以下であれば、胎児に健康リスクは生じません。子どもと青少年については知見が不十分ですが、成人と同様に1回に体重1kgあたり約3mgを、安全なカフェイン摂取量として適用できるとしています。
そのほか、カナダ保健省は2017年、1日あたりのカフェイン摂取量の上限を提示しました。健康成人は400mg、妊婦や授乳中の女性は300mg、4~6歳児45mg、7~9歳児62.5mg、10~12歳児85mg、13歳以上の青少年は体重1kgあたり2.5mgと、具体的な数値を示しています。
ほかの各国・機関とも、ほぼ同じような数値を目安としています」(山口先生)
カフェイン中毒を防ぐには
カフェイン中毒を防ぐには、どうすればいいのでしょうか。
「受験や仕事で疲れを感じたときでも、強い覚醒作用を求めてエナジードリンクやカフェイン含有食品や薬品などの過剰摂取をしないことが大切です。疲労回復に効果のある医薬品や医薬部外品も、必ず用法・用量を守り適正に使用してください。
カフェイン中毒の予防には、十分な水分を補給することも大切です。水分を多めに摂ることで、血液中のカフェイン濃度の低下や排出にも役立ちます。
カフェインにはもともと利尿作用があるので、水分を多く摂ることで排尿がよりスムーズになり、体内のカフェインが速やかに排出される効果もあります」(山口先生)
眠気や疲れを取ろうと思ったとき、カフェインに頼る前に日頃の生活習慣を正しいものにするよう心がけることも大切だそうです。年のはじめこそ体調を整え、受験や忙しい仕事を乗り切りましょう。
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