あなたの家は大丈夫?家具類の転倒・落下・移動防止策|阪神淡路大震災30年
ウェザーニュース / 2025年1月17日 5時5分
1月17日は、30年前に阪神・淡路大震災が起こった日です。火曜日の早朝(午前5時46分)、明石海峡を震源地とするマグニチュード7.3の大地震が起こり、都市型災害の怖さをまざまざと見せつけられました。
私たちはそこから、十分な教訓を得ているでしょうか。そこで今日は、東京消防庁の資料から室内の地震対策について学びます。
家具類の転倒・落下・移動による被害が多い
室内において地震の被害を大きくするのは、家具類です。家具類が転倒・落下・移動すると、「3つの危険」が生じます。
(1)ケガ
近年発生した地震でケガの原因を調べてみると、約30~50%のケガが家具類の転倒・落下・移動によるものでした。
さらに、神戸市消防局の調査では、阪神・淡路大震災でケガをした原因は、「家具などが転倒したため」が全体の48.5%と最も多く、その他にも「棚などの上からの落下物」が15.8%、「落下したガラスがあたった」が10.5%にのぼるなど、家具類の転倒・落下などによるケガが目立ちました。
(2)火災
転倒・落下した家具類が電気ストーブなどの電源スイッチを押し、火災が発生することがあります。付近の燃えやすいものに着火するのです。
(3)避難障害
避難通路、出入口周辺に転倒・移動しやすい家具を置いてはいけません。避難経路を塞いだり、飛び出した引き出しにつまずいてケガをしたりするなど、避難の妨げになります。
高層階ほど厳重な注意が必要
家具類の転倒・落下・移動は高層階になるほど多く発生します。これは、長周期地震動によるものです。長周期地震動とは、海の波のように遠くまで伝わる揺れで、地面の揺れが終息した後も、建物の揺れが数分にわたって続く現象です。
マグニチュード8クラスの地震が起こると、都内の50階ビルでは、片振幅2mに達する揺れが10分以上継続する可能性があります。
おおむね10階以上の高層階になると下層階に比べて揺れが大きくなる傾向があり、家具類の転倒・落下が多く発生します。また、家具類の「移動」による被害が、下層階に比べてはるかに大きくなります。
揺れの大きさと家や家具の被害の関係
震度と揺れの状況を理解しておきましょう。
室内にいる場合、震度1はわずかに揺れを感じる人がいる程度です。震度2になると揺れを感じる人が増えて、電灯などのつり下げ物がわずかに揺れます。震度3の場合は、棚にある食器類が音を立てることがあります。
一般的に家具類に危険が生じ始めるのは震度4以上です。具体的にどのような危険が潜んでいるのか見てみましょう。
▼震度4
・電灯などのつり下げ物は大きく揺れ、棚にある食器類は音を立てる。座りの悪い置物が、倒れることがある
▼震度5弱
・電灯などのつり下げ物は激しく揺れ、棚にある食器類、書棚の本が落ちることがある。座りの悪い置物の大半が倒れる。固定していない家具が移動することがあり、不安定なものは倒れることがある
▼震度5強
・棚にある食器類や書棚の本で、落ちるものが多くなる。テレビが台から落ちることがある。固定していない家具が倒れることがある
▼震度6弱
・固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもある。ドアが開かなくなることがある
▼震度6強
・固定していない家具のほとんどが移動し、倒れるものが多くなる
▼震度7
・固定していない家具のほとんどが移動したり倒れたりし、飛ぶこともある
近年は、地震対策を重視するハウスメーカーが増え、耐震性の高い住宅も増えていますが、倒壊しないからといって安全ではありません。倒壊をまぬがれた住宅でも、家具類の転倒・落下などによりケガをした人の割合は依然として高いのです。
地震に対する家具類への対策ポイント6
このような地震の被害を少なくするために、家具類への対策を行いましょう。おもなポイントを6つ挙げます。
(1)集中収納(居住収納分離)
納戸やクローゼット、据え付け収納家具への集中収納により、努めて生活空間に家具類を置かないようにしましょう。(2)収納方法の工夫、家具類のレイアウト上の注意点
棚などの家具に物を収納するときは重いものを下に入れて重心を低くする、避難通路や出入口付近に転倒・移動しやすい家具類を置かない、寝る場所や座る場所の近くに背の高い家具類を置かない、外への落下を防ぐため窓際には家具類や重量物を置かない、などを心がけましょう。(3)転倒・落下防止対策+家具類の移動防止対策
家具類は、万一のことがあっても安全な位置に配置した上で、L字金具と木ネジやボルトなどで固定しましょう。ほかにも家具類に合わせた「対策器具」と呼ばれるものが多数市販されています。(4)キャスター付き家具への対策
キャスター付きの家具には、日常的に移動することを求められるものとそうでないものがあります。日常的に動かす家具類は、静止時に必ずキャスターロックをかけ、定位置がある場合は壁面や床面に着脱式ベルトで繋ぎましょう。日常的に移動しない家具類は、キャスター固定用の下皿等を用意し、ポール式器具等で転倒防止を行いましょう。(5)キャスターなしの家具類への対策(壁面等への固定が困難な家具)
フローリングなど硬く平らな床面であれば床と家具との接触部に粘着式の耐震マットを設置しましょう。カーペットなどであれば、床と家具との接触部に滑り防止マットを設置しましょう。(6)大きくゆっくりとした揺れに対し注意すべき家具類への対策
天井から釣り下がっている照明は、ワイヤーで固定して大きな揺れを防止しましょう。観賞用水槽やウォーターサーバーなど水を溜めるものは、台が揺れたり台から落ちたりしないよう固定しましょう。引き出し型の収納家具は低くても引き出しが飛び出すので、L字金具などで確実に固定し、引き出しがラッチ付きで飛び出さないものを選びましょう。地震に対する家具類の転倒・落下・移動防止について、ご理解いただけたでしょうか。大災害は、いつ起こるかわかりません。「備えあれば憂いなし」の精神で、万一のとき慌てないよう、しっかり手を打っておきましょう。
出典・参考
気象庁「震度階級関連解説表」、東京消防庁「−室内の地震対策−家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」、日本建築学会「阪神淡路大震災 住宅内部被害調査報告書」、厚生省大臣官房統計情報部「人口動態統計から見た阪神・淡路大震災による死亡の状況」
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