雪山では「雪目」に注意? スキー場でゴーグルが欠かせない理由
ウェザーニュース / 2025年1月30日 5時10分
ウインタースポーツといえば、スキーやスノーボードです。冬になると、友人同士や家族連れで雪山へ出かける人が少なくありません。そんなとき、全員きちんとゴーグルをつけているでしょうか。
横浜市立大学医学部眼科学教室主任教授の水木信久先生は、「滑るときだけでなく、雪の上では必ずゴーグルの装着が必要」と指摘します。その理由を伺いました。
ゴーグルで目を守る理由
冬期オリンピックの選手などはゴーグルをつけていますが、競技をするわけでもない一般人でも、ゴーグルをつける必要があるのでしょうか。
「雪山でスポーツや雪遊びをする人は、小さな子どもを含めて全員ゴーグル(専用サングラスでも可)をつける必要があります。それは目を守るためです。
守りたいものの1つにケガがあります。スキー場など人の多いところでは、他のお客さんとぶつかったり、異物が目に入ったりしないとも限りません。万一のために、ゴーグルで目を保護しましょう。
次に守りたいものは、雪や雨です。滑っているときに雪や雨が目に入ると、周囲が見えなくなって転倒などの事故を起こしかねません。雪山は天候が変わりやすいので、ゴーグルは常につけておきましょう。
守りたいものの3番目は、紫外線です。紫外線というと、つい夏の山や海を想像します。冬山は心配ないと思われていますが、それは大きな誤解です。
確かに空から降り注ぐ紫外線は夏より少ないのですが、雪があると地表から反射する紫外線がとても多くなります。これが、目に大きなダメージを与えるのです」(水木先生)
雪面は水面よりも照り返しが強い
反射率を比較すると、雪のある冬山は、夏の山や海より紫外線が強いのでしょうか。
「その通りです。地表面の種類によって、紫外線の反射率は大きく異なります。環境省の『紫外線環境保健マニュアル2020』によると、新雪80%、砂浜10~20%、コンクリート・アスファルト10%、水面10~20%、草地・芝生・土面10%以下の紫外線が反射しています。
また、雪山は標高が高いのが通常ですが、標高が1000m上昇するごとに紫外線は10~12%増加します。
これが目に入るダメージを防ぐために、雪のあるところでは常にゴーグルを装着する必要があるのです」(水木先生)
雪目とは、どんな症状なのか
ゴーグルなしで紫外線を浴びると、目はどのようなダメージを受けるのでしょうか。
「スキー場でよく起こるのは“雪目(ゆきめ)”または“雪眼炎(せつがんえん)”と呼ばれる眼病です。目が強く日焼けして、火傷(やけど)した状態だと思ってください。
症状としては、目の充血、ゴロゴロとした異物感、光を異様にまぶしく感じる、目がかすむ、涙が出る、目が痛くて開けられない、などです。
この症状にはタイムラグがあり、強い紫外線を浴びてから6~8時間後に出ます。昼間ゴーグルなしでスキーを楽しんだあと、夜になって眠れないほどの痛みに襲われるのです。
最悪の場合、白目の上に黄色い隆起物ができる“瞼裂斑(けんれつはん)”や結膜が鼻側の角膜に飛び出してくる“翼状片(よくじょうへん)”などの眼病が起こり、手術が必要になることもあります。乱視や視力低下も起こりやすいので、このようなトラブルは避けなければなりません」(水木先生)
雪目の対処法と予防法
そのような症状が出たら、どうすればいいのでしょうか。
「軽症の雪目であれば、通常2~3日で治ります。角膜はとても再生力の高い細胞だからです。とはいっても軽症か重症かの自己判断は危険なので、必ず眼科を受診しましょう。
眼科では、感染症を予防する抗菌薬や角膜を保護するヒアルロン酸の入った目薬を処方するのが一般的です。目の痛みが強い場合は、鎮痛剤が処方されることもあります。
しかし、何といっても大切なのは予防です。第一にゴーグル、次につばのついた帽子とサングラスの組み合わせ、あるいはUVカット機能のあるコンタクトレンズなどで紫外線を防いでください」(水木先生)
スキー場や雪山でゴーグルが必要な理由がよくわかりました。これからは十分な紫外線対策をして雪景色やウインタースポーツを楽しみましょう。
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