【2022年カタールへ期待の選手①】吉田麻也とともにファルカオ、ニアン、ルカク封じに奔走。次世代の日本の守備の要へ/昌子源

超ワールドサッカー / 2018年7月7日 19時0分

写真:Getty Images

▽わずか10秒足らずの電光石火のカウンターからナセル・シャドリ(WBA)の逆転弾が決まり、直後にタイムアップの笛が空しく鳴り響いた瞬間、日本代表スタメン最年少であり、唯一の国内組として奮闘した昌子源(鹿島)がピッチに倒れ込んで号泣した。時間が経っても立ち上がれず、長友佑都(ガラタサライ)に抱きかかえられるように起き上がったが、それほどまでに8強の壁を破れなかった悔しさを誰よりも強く感じていたのだろう。

▽「相手のすごいカウンターってこういうのかなと。僕の全速力で追いかけたけど、追いつけないスピードっていうか、加速していくし、スピードが落ちることなく、気付けば僕らのゴール前にいるしね。最後のスライディングも僕やったし、なんで追いつけんのやろっていう悔しさと…。なんか不甲斐なかったですね、いろいろと」と背番号3を背負って、吉田麻也(サウサンプトン)とともにロメル・ルカク(マンチェスター・ユナイテッド)封じに全身全霊を注いだ男は、最後の砦になり切れなかったことを悔やんだ。

▽それでも今回の2018ロシアワールドカップで昌子が果たした役割は大いに目を引くものがあった。大会前の予想では、吉田の相棒は槙野智章(浦和)だと見られていたが、最後のテストマッチだった6月12日のパラグアイ戦(インスブルック)での安定感あるパフォーマンスが西野朗監督の琴線に触れ、13日にベースキャンプ地・カザン入りしてからはずっとレギュラー組に入っていたという。

▽迎えた19日の初戦・コロンビア戦(サランスク)。背番号3に課せられた仕事は相手エースFWラダメル・ファルカオ(モナコ)封じ。開始早々の3分に相手に退場者が出て、香川真司(ドルトムント)のPKで1点をリードするという追い風が吹いたことも大きかったが、昌子はファルカオに徹底マークを見せ、仕事らしい仕事をさせない。その冷静さと落ち着きはワールドカップ初参戦とは思えないほどだった。ファン・フェルナンド・キンテーロ(リーベル・プレート)に直接FKを決められ、無失点試合ができなかったことはチームとして悔やまれるところだったが、昌子の守備は高評価を与えられるべきものだった。

▽「『国内組唯一』とか『俺がJリーグを背負ってる』というのは全くなかった。むしろワールドカップ出場を決めたオーストラリア戦(2017年8月=埼玉)の方が緊張しましたね。今回はそれに比べたらそんなに緊張することなく落ち着いてやれたかな」と本人は大舞台にめっぽう強い自分に胸を張った。

▽首尾よく初戦で勝ち点3を得た日本は、続く24日のセネガル戦(エカテリンブルク)でも勝ち点1を手に入れる。この試合も2度のリードを許す苦戦を余儀なくされたが、乾貴士(ベティス)と本田圭佑(パチューカ)が同点弾を決めるという劇的な展開だった。昌子の今大会2度目の大仕事はエムバイェ・ニアン(トリノ)封じ。体格的に大きく下回るだけに体をぶつけ、相手の自由を奪うことに徹する。今大会はVAR判定が導入されているから、不用意に手を使ったり、体当たりをするようなことがあれば、即座にPKやレッドカードの対象になりかねない。細心の注意を払いながら相手エースFWの失点を許さなかったことで、彼の地位は確固たるものになった。

▽28日の3戦目・ポーランド戦(ボルゴグラード)は先輩・槙野に先発の座を譲ったが、何とか2位通過したことで、待望の決勝トーナメントの舞台に立つことができた。その相手・ベルギーはFIFAランキング3位の優勝候補に挙げられる強豪。ルカク筆頭に、エデン・アザール(チェルシー)、ケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)らイングランド・プレミアリーグで華々しい活躍を見せるタレント集団だ。前日会見に出席したアザールは「もうブラジル戦のことを考えているのではないか?」と問われて「日本に勝てるかどうか分からない」と謙虚な物言いを見せたが、本音の部分では「昨年11月の親善試合(ブルージュ)でアッサリ倒した相手に負けるはずがない」という余裕が見て取れた。

▽そんな彼らの鼻をへし折ることが日本に求められたが、前半から一方的に押し込まれる。そこで体を張ったのが吉田と昌子。彼らのルカク封じは確かに見る者の心を打った。「僕のルカク選手のイメージは、とてつもないところにあった。それで実際にやってみて、その通りかそれ以下だった方が楽じゃないですか。でもルカク選手はイメージと同等、もしくは上に来たから、すごいいっぱいいっぱいでしたね」と背番号3は述懐したが、それでも結果的にルカクにゴールを許していない。そこは誇れる点だろう。

▽ただ、日本としては4試合7失点。守備陣としてはその現実を受け止めなければならない。「日本を守れる男になりたい」と昌子は痛感したというが、だったら本当にそういう存在になってもらうしかない。今大会を最後に長谷部と本田という10年以上、代表で戦ってきたベテランが去り、吉田を中心とした新たな陣容で4年後に向かっていくことになるが、昌子が担う仕事も少なくない。これからは「スタメン最年少」ではなく、「日本の大黒柱の1人」としてチームを引っ張らなければならない。それを強く自覚して、彼にはさらなる高みを目指してほしい。


【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。

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