平穏な日々が続くことはない…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2020年10月30日 17時0分

写真:©Atlético de Madrid

「ババが戻って来てしまった」そんな風に私が溜息をついていたのは木曜日、CL2節を終えて、グループ最下位のスペイン勢がレアル・マドリーだけなのに気づいてしまった時のことでした。いやあ、先週末はクラシコ(伝統の一戦、バルサvsマドリー戦のこと)に1-3と勝利、2連敗によるクライシス状態をライバルに付け替えたジダン監督のチームだったんですけどね。ところがファンが喜びに浸っていられたのも束の間で、上昇気流に乗るべく、カンプ・ノウでのスタメンから、負傷のナチョをルーカス・バスケスに代えただけのベストメンバーで挑みながら、シャフタールに続いて、こちらも格下と見なされていたボルシア・メンヘングラッドバッハともまさか、引き分けるのがやっとって、一体、何が起こっているんでしょう。

それとは真逆に宿敵バルサは、うーん、普通、試合前日に会長が辞任したら、チームもショックを受けるはずだと思うんですけどね。彼らの場合はいささか特殊で、この夏のメッシ退団騒動などでも明らかになったように、選手たちが現経営陣に愛想を尽かしていたせいか、むしろ、すでにトリノ入りしていたチームには朗報として受け止められた?クラシコ敗戦の影響など、微塵も感じさせない好プレーでユベントスを圧倒すると、クリスチアーノ・ロナウドがコロナ陽性のままで自宅観戦してたり、モラタのゴールが3度共、全てオフサイドで得点にならなかったのをいいことに、デンベレの1点とメッシのPKで0-2と勝利して、フェレンツバーロシュ戦に続く2連勝となれば、今度は彼らの意気が上がる番ですって。

ちなみにマドリッド勢がプレーした火曜のCL戦がどうだったかというと、いやあ、何せ、マドリッド両雄のキックオフ時間が同じ午後9時で被っていましたからね。私もバル(スペインの喫茶店兼バー)では、世間一般のニーズが高いマドリー戦の方を見ることになるんだろうと、ほとんど諦めの境地だったんですが、それも前半28分まででした。というのも、ジョアン・フェリックスのchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)が惜しくもバーに弾かれたのは見逃したものの、ワンダ・メトロポリターノではマルコス・ジョレンテがエリア前から必殺の一撃をお見舞い。

ええ、「Hoy me pidió que hiciera de pareja de Herrera en el medio y que me sumara al ataque cuando tuviera fuerza/オイ・メ・ピディオ・ケ・イシエラ・デ・パレハ・デ・エレラ・エン・エル・メディオ・イ・ケ・メ・スマラ・アル・アタケ・クアンドー・トゥビエラ・フエルサ(今日はエレーラと中盤でペアを組んで、体力がある時には攻撃に参加することを頼まれた)」彼がザルツブルクのGKスタンコビッチを破り、先制点をもたらしてくれたのをオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の2元中継で聞くと同時に、お店の奥の個室スペースから、「Goool!」の絶叫が響いてきたから。え、それって、もしや、アトレティコの試合?

とりあえず、マドリーの方は何度かシュートはあったものの、ゴールが決まらず、かといって、メンヘングラッドバッハが優勢なようにも見えなかったですからね。そこでウィエターさんに頼んで、席を変えてもらったんですが、油断大敵とはまさにこのこと。33分、今度は遠くなったTV画面の方でマドリーがカウンターを喰らい、必死で止めに行った急造右SBのルーカス・バスケスも間に合わず、テュラムのシュートで先制されてしまっているのですから、困ったもんじゃないですか。おまけに不幸は不幸を呼ぶのか、せっかく1点をリードしていたアトレティコも長くは持たず、40分には自陣エリア前でのボールロストから、ソボスライに同点弾を奪われ、1-1の同点でハーフタイムに入ることに。

え、どちらもCL初戦で負けている身で、このままだとマズいことになるのが確実な状況だった中、後半のピッチに出る前には選手たちの興味深い会話がカメラに収まっていたんだろうって?そうなんですよ。いえ、私はアトレティコ戦を映すTVの前に留まっていたため、その時は10月の代表戦週間中に負傷し、ずっと試合に出ていないサウールが私服でチームメートを応援に来ていたのを目撃。GKオブラクと話していたところ、ジョアンが1度、トンネルに現れながら、すぐまたロッカールームに戻って行ったため、忘れ物をした後輩のうっかり屋さんぶりを笑っていたのかと思ったんですが、とんでもない。

ラ・セスタ(スペインの民放)によると、「Es un cabrón éste/エス・ウン・カブロン・エステ(あいつはとんでもない野郎だ)。そうしたいと思った時に試合を変えられる」とサウールがジョアンについて言っていたそうで、それにはオブラクも「Madre mía, qué bueno es/マドレ・ミア、ケ・ブエノ・エス(まったく、何ていい選手なんだ)」と同意。2人して、アトレティコ加入2年目となる20才のFWの才能に感嘆していたというオチでしたが、ええ、後半にはそれが素人のファンの目にも明らかになる瞬間がやって来ます。

一方、ボルシア・パルクのピッチ出口でもテレフット(フランスのサッカー番組)が選手たちを録画していたところ、こちらの映像はかなり物議を醸すことに。というのもGKクルトワが見守る中、ベンゼマがメンディとフランス語で話していたんですが、「彼は自分のやりたいことばかりやっている。あいつにはパスをするな。敵に混じって、ウチと戦ってるみたいだ」と、どうやらビニシウスのプレーぶりに文句を言っていたよう。いやあ、アトレティコにも時々、ユニの色が違う選手目掛けて真っすぐパスしてしまう、粗忽者が現れるため、ベンゼマがそう思う気持ちもわからないではないんですけどね。

だからって、試合中にチームメートをハブにするような台詞が出て来るとは思いませんでしたが、実際、後半、25分にビニシウスが交代するまで、ベンゼマは彼にパスを出さなかったとか。両チーム、あまりに対照的なハーフタイム中の会話の内容に後日、私が驚いていたのはともかく、でもねえ、後半キックオフ後、先にダメージを受けたのはアトレティコの方でした。開始たったの2分、ザルツブルクの速攻を止められず、左サイドからウルメルのラストパスをスライディングでベリシャにネットに送られ、いきなり逆転されているって、いや、ホントにアリアスがレークーゼンにレンタル移籍、ベルサイコの回復の遅れにより、1人天下になってしまったトリピアーの守備力低下にはどうしたものやら。

でも大丈夫。アトレティコにはジョアンがいるんです。そのたった5分後にはコレアとのワンツーでエリア内に入った彼が同点ゴール。もちろん、引き分けではマズいんですが、それも13分、プレアのシュートはクルトワが弾きながら、ゴール前左に詰めていたテュラムに押し込まれ、2点差とされたマドリーに比べれば、全然マシで、もしや、ジダン監督も1998年のW杯優勝を共に成し遂げたフランス代表同僚の息子さんが、ここまで立派に成長しているとは予想できなかった?

これでますます切羽詰まったマドリーは25分にはビニシウス、クロースをバルサ戦でとどめの3点目を挙げたモドリッチ、そして8月の昨季CL16強対決マンチェスター・シティ戦2ndレグ以来の出場となるアザールを投入。一方、信頼できるアタッカーがあまりいないシメオネ監督は36分まで、交代カードを切るのを渋っていたんですが、やる時は思い切りがいいです。一気にロディをエルモーソに、エレーラをトレイラに、そして前日には筋肉痛で練習できていなかったとはいえ、現在、チーム唯一のストライカー、ルイス・スアレスをレマルに代えた時にはまさか、勝利を諦めたんじゃないかと疑った私でしたが…。

そんな懸念も40分には一掃です。そう、敵がクリアしたCKのボールが落ちたのがレマルのところだったのにはヒヤリとしましたが、彼のラストパスがゴール前の密集地帯にいたジョアンに届き、そのシュートで勝ち越し点が入ったとなれば、これぞ、7000万ユーロ(約86億円)と1憶2700万ユーロ(約156億円)の高額移籍金コンビによる値千金のゴールと言っていい?いえ、まあ、記事に名前が登場する際には常にこの、クラブ史上最高額の数字を付けられるという、プレッシャー攻めに遭っている当人は「No veo lo que dicen los periódicos, intento disfrutar y ser feliz/ノー・ベオ・ロ・ケ・ディセン・ロス・ペリオディコス、インテントー・ディスフルタル・イ・セル・セリス(新聞が言っていることは見ないし、楽しむように、ハッピーであるように努めている)」と、試合後もケロッとしたもんでしたけどね。

シメオネ監督も「試合の重要性からして、一番の出来だったと言っていい。Tuvo una regularidad durante los 90 minutos/トゥボ・ウナス・レグラリダッド・ドゥランテ・ロス・ノベンタ・ミヌートス(90分間、コンスタントにプレーしていたしね)」と褒めていましたが、何せ、来週火曜には、あの、1節でアトレティコを4-0と足蹴にしたバイエルンが1-2ででしか勝てなかった、スタンドにも相手チームのファンが沢山いるロコモティブ・モスクワのホームを訪れないといけないアトレティコですからね。3-2の競ったスコアだったとしても、ザルツブルクから勝ち点3ゲットできたのは有難いことでしたっけ。

え、バルのマドリー戦が映っているTVがある方から、歓声が聞こえてきたのは、そのジョアンの3点目が入った直後だったんだろうって?その通りで、アトレティコの方が少し、進行が遅れていたため、ドイツでは42分、彼らお得意の根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)が始まったんですよ。ルーカス・バスケスが上げたクロスをカセミロがゴール横のラインギリギリで頭で戻し、それをベンゼマがtijera(ティヘラ/シザーズキック)で決めてしまったから、ビックリしたの何のって。おまけに残り数分はセルヒオ・ラモスとバランがFWとして前線に参加、その成果がロスタイム3分、今度はモドリッチが上げたボールをラモスが落とし、カセミロがフィニッシュして同点に持ち込むって、いやもう、こんな展開はマドリーにしか、ありえないかと。

結果、土壇場で2-2の引き分けとした彼らでしたが、うーん、アザールのシュートが外れていなければ、大逆転もありえましたからね。ただ、やはり2試合で勝ち点1というのは辛いもので、CL史を振り返ってもここから、決勝トーナメント進出を遂げたのは160チーム中、たったの32。20%の可能性しかないんですが、ジダン監督は「Jugando así vamos a hacer cosas buenas y vamos a pasar de fase/フガンドー・アシー・バモス・ア・アセール・コーサス・ブエナス・イ・バモス・ア・パサール・デ・ファセ(こんな風にプレーしていれば上手くやっていけるし、ウチはグループリーグを突破するだろう)」と決して自信を失わず。

それがさもありなんなのは、まさに昨季の彼らが初戦のPSG戦で3-0と負け、クラブ・ブルージュとの2節でもホームで2-2と引分けながら、続くガラタサライ戦に連勝。PSGと分けた5節目には2位突破を決めていたという直近の経験からだと思いますが、ちょっと待って。昨季は3、4節がグループ最弱との対戦だったんですが、今回はインテルですからね。最弱はシャフタールだったんですが、そこで負けて、メンヘングラッドバッハのマルコ・ローゼ監督も「シャフタールは3点取った。チャンスは2回、ありながら、ウチには取れなかった」と嘆いていたように、ランク的にグループ3位とも引き分けるのがやっとだったとなると、来週火曜のインテル戦ではかなり本気を出さないと危ないかと。

いえ、まあ、同日はインテルも先日のネイションズリーグ、ウクライナvsスペイン戦同様、かなり観客の入ったオリンピスキー・スタジアムでシャフタールと0-0と分けているため、このグループ、首位(シャフタール)と最下位(マドリー)の差が勝ち点3。あまり離れていないので、全然、悲観することはないんですけどね。それより、ジダン監督の悩みの種となりそうなのは、過密日程を加味して、週末のリーガでローテーションするかどうかなんですが、クラシコ前にそれをやって、負けてしまったのがまさしく、カディス戦とシャフタール戦。かといって、ベストメンバーが出ずっぱりになると、それこそメンヘングラッドバッハ戦の大部分のような状態になりかねないとなると、やっぱり難しいですよねえ。

そんなマドリーは土曜の午後2時(日本時間午後10時)から、昇格組のウエスカをエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)に迎えるんですが、こちらはアザールに実戦のリズムが早く戻ってくれるのを期待するぐらいで、カルバハル、オドリオソラ、ウーデゴール、ナチョら、負傷休場者は同じ。そうそう、木曜のバルデベバス(バラハス空港の近く)でのセッションでベンゼマはビニシウスと話し、先輩後輩の絆にはヒビが入らなかったそうです。ウエスカの方では一時は間に合うかも言われていた岡崎慎司選手がまだ、3週間前のエルチェ戦で痛めた太ももが完璧ではなく、欠場の見込み。他にもSBのペドロ・ロペスが負傷中、コロナ隔離をしているミケル・リコは前日のPCR検査次第となっているため、カディスに続きたいミチェル監督率いるチームが18位の降格圏を抜け出せるかは微妙ですね。

そしてアトレティコは同じ土曜の午後6時30分(日本時間翌午前2時30分)、現在、7位と好調なオサスナとエル・サダルで対戦なんですが、ジエゴ・コスタ、カラスコは11月の代表戦週間明けの復帰ですし、戻るとしてもサウールぐらいですからね。今はあまり使い倒されて、スアレスやジョアンがケガしないことを祈るしかないかと。

一方、弟分のヘタフェは日曜にバレンシア戦なんですが、今季は相手もヨーロッパの大会に出場していないため、体力的には互角の戦いに。前節は怪しいペナルティを取られ、グラナダの前に悔しい0-1負けをした彼らですが、バレンシアなど、それこそ3連敗中ですからね。上位候補チームが連戦地獄で苦しんでいる今は、とにかく稼げるだけ勝ち点を稼いでおくにこしたことはありませんって。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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