選手にだって体力の限界はあるだろうに…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2020年11月14日 14時0分

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「いつの間にやら、凄いことになってたのね」そんな風に私が口をアングリ開けていたのは木曜日、マドリッドの外出禁止令は夜間のみなのをいいことに散歩がてら、3月以来となるサンティアゴ・ベルナベウを訪れた時のことでした。いやあ、コロナ流行による昨季のリーガ中断以前からもチョロチョロ、スタジアムの改装工事は始まっていたんですけどね。これがまた、再開後も無観客試合となったのを渡りに船とばかり、周囲を完全に封鎖しての突貫作業がスタート。度々、スポーツ紙などで「obra faraonica(オブラ・ファオニカ/エジプトのファラオ並の巨大建築)と形容されていたのも納得できる程の規模になっていたから。

ええ、スタジアム全てを覆う、開閉式屋根の取り付けのためか、見ていると首が痛くなるぐらい高いクレーン塔が何台も立ち並び、以前、オフィシャルショップ旗艦店などがあった建物も今では完全に撤去。この状態でも通常、17ユーロ(約2100円)からの入場料を3ユーロ(約400円)にまで値下げして、トロフィールームやスタンド最上階に行けるスタジアムツアーをやっているというのはビックリですが、重機マニアにはたまらないかもというのは、その入り口すら、見つけられなかった私のただの負け惜しみ。しかも辺りが暗くなる午後7時頃になっても工事が終わる気配すらないとは、2022年完成予定を前倒しして、来年夏にはエムバペ(PSG)、もしくはハーランド(ドルトムント)のメガプレゼンを大勢のファンの前でやりたいという野望がペレス会長にあるというのは決して、私の穿ち過ぎではない?

まあ、何にしてもスペイン政府の方針が変わらない限り、リーガもCL、ELも無観客状態なのは続きますからねえ。その間、レアル・マドリーも人里離れたバルデベバス(バラハス空港の近く)にあるエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)で試合を開催するため、すでに何軒ものバル(スペインの喫茶店兼バー)やレストランが閉店していたサンティアゴ・ベルナベウ周辺が賑わうこともなさそうですが、さて。実際、丸々1年もスタンドにファンのいない試合が続いたりすると、その間、デビューした新人選手など、いざ、平常状態に戻った時のプレッシャーが、半端ないんじゃないかと心配になってしまうんですが…。

そんなことはともかく、今週から始まったインターナショナルマッチウィークではスペインも水曜にオランダと親善試合を実施。こちらの様子もお伝えしていくことにすると、いやもう、ホントにせわしないんですよ。月曜にラス・ロサス(マドリッド近郊)にあるサッカー協会施設に集合したチームは翌日、早くもアムステルダムに移動。ヨハン・クライフ・アレナでの前日練習を含め、たった2回、セッションをこなしただけでキックオフとなったんですが、おやおや。2018年のワールドカップ以来の招集となったコケ(アトレティコ)が出場数45試合で最多となり、キャプテンを務めていたことからもわかるように、その日のルイス・エンリケ監督は比較的、代表歴の少ない選手でスタメンを構成。

それでも相手が守備の要、キャプテンのファン・ダイク(リバプール)、デ・リフト(ユベントス)を負傷で欠き、おまけで先発したCBアケ(マンチェスター・シティ)も開始5分でケガをして、ブリント(アヤックス)に交代という不運に見舞われたおかげもあったんですかね。前半18分にはモラタ(ユベントス)のスルーパスをカナレス(ベティス)が撃ち込んで、スペインは先制点をゲット。この日、チェルシーでとんと出番のなくなってしまったケパに代わり、代表デビューを果たしたGKウナイ・シモン(アスレティック)に普段やりつけない、ボールを後ろから繋ぐプレーをルイス・エンリケ監督が命じたため、何度か、昨季のCL16強対決マンチェスター・シティ戦2ndレグのように、バランの失点ミスを引き起こしたマドリーのクルトワの二の舞になるんじゃないかと、ヒヤヒヤさせられた場面はあったものの、リードを保ったまま、ハーフタイムに入ります。

でもねえ、後半始まってすぐだったんですよ、オランダに追いつかれてしまったのは。そう、中盤の3人を入れ替えたデ・ボエール監督率いるチームは2分、ワインダム(AZ)のクロスをファン・デ・ベーク(マンチェスター・ユナイテッド)がスペイン守備陣の混乱に乗じてエリア内からシュート。これがゴールとなり、いえ、前半途中に左SBのガヤ(バレンシア)が空中戦でハテブール(アタランタ)と頭をぶつけ、レギロン(トッテナム)に交代していたのはあまり、関係ないかと思いますけどね。元々、右SBが代表5年ぶりのベジェリン(アーセナル)、CBコンビもイニゴ・マルティネス(アスレティック)とエリック・ガルシア(マンチェスター・シティ)という、皆、初顔合わせ状態でしたし、この試合前は芝生上での練習より、ビデオセッションの方が多かったとなれば、コンビネーションがあうんの呼吸でいかないのも当然だった?

そしてスペインも16分にはモラタ、アセンシオ(マドリー)、ジェラール・モレノ(ビジャレアル)の前線3人をダニ・オルモ(ライプツィヒ)、フェラン・トーレス(マンチェスター・シティ)、アダマ・トラオレ(ウォルバーハンプトン)に総入れ替え。勝ち越し点を狙っていったんですが、残念ながら、なかなか好機が作れません。ええ、カナレスと代わり、マルコス・ジョレンテ(アトレティコ)も代表デビューを果たした後、最後は40分、ブッフォン(ユネントス)がイタリア代表で持つ、ヨーロッパ最多出場記録の176試合に並ぶべく、セルヒオ・ラモス(マドリー)がピッチに入った時など、実況アナも「そのままCFでプレーした方がいいんじゃないか」と言っていた程だったんですが、まあ所詮は親善試合。そこまで極端に走ることもなく、1-1のまま、荒寥感溢れる無人の場内にルイス・エンリケ監督の声が響き渡った試合は引き分けで終了となりましたっけ。

え、クーマン監督のバルサ赴任に伴い、10月からオランダ代表を引き継ぎ、3分け1敗とまだ白星のないデ・ボエール監督もあとで、「お金は非情に大事だが、選手たちのケアもしないといけない。この試合をやる必要があったとは思えない」と告白していたように、リーグとヨーロッパの大会の過密日程が続く中、わざわざ親善試合までプレーさせられるなんて、いくら高給をもらっていても非人道的じゃないかって?うーん、ただそれを言うなら、マドリーのクロースなども合宿中のドイツ代表から、「こういう大会はとにかくFIFAやUEFAが収入を得るためにあって、選手たちを肉体的に搾取している」という意見を発信していたように、この9、10、11月のヨーロッパの代表戦週間のメイン、ネーションズリーグからして、あまり意義が感じられなかったりしますからね。

もちろん、2年前に始まった初回ネーションリーグで好成績を残した、ユーロ2020(来年に延期)予選落ちの16国が先月からプレーオフで激突。木曜には北アイルランドとの決勝に勝って、スペイン、スェーデン、ポーランドのいるグループEでの本大会出場が決まったスロバキアなどにとっては貴重な機会だったでしょうけどね。すでに第2回ネーションズリーグが進行中なのも違和感がありますし、1番上のリーグにいるスペインはファイナルフォーに出場して、去年、初代王者となったポルトガルの後を継ぐことが目標と言っても、その決勝は一体、いつあるんでしょうか。

いやあ、聞きかじった話によると、来年秋らしいんですが、そうなると2022年W杯予選と並行ということになって、再び代表戦過密日程のリピートというのもねえ。ちなみに金曜にはネーションズリーグ5節のスイス戦が行われるバーゼルに直接移動したスペインでしたが、ルイス・エンリケ監督は左眉の上を4針縫ったガヤの状態を気遣って、マルベジャ(スペイン南部のビーチリゾート)でU21ユーロ予選のフェロー諸島戦に出る予定だったククレジャ(ヘタフェ)を追加招集。とはいえ、土曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からのザンクト・ヤコブ・パルクで、同時開催のドイツvsウクライナ戦の勝者と首位を争うことになる一戦の先発見込みはレギロン、ガヤも来週火曜、セビージャのカルトゥハで行われるドイツ戦目指して、チームに残っているため、デビューできるかどうかはわかりません。

加えて、ルイス・エンリケ監督には「Es un jugador de una garantía total de que va a rendir a un altísimo nivel/エス・ウン・フガドール・デ・ウナ・ガランティア・トタル・デ・ケ・バ・レンディル・ア・ウン・アルティスモ・ニベル(超レベルの高いパフォーマンスを見せる保証が完璧にある選手)」と大仰に褒められていたコケも、いえ、代表キャプテン初体験に110キャップのアトレティコの先輩、フェルナンド・トーレスからお祝いメッセージももらい、「Kokiño(コキーニョ/ブラジル人風の愛称)」と呼ばれていた当人は、いたく感激していたようなんですけどね。元々、今回のチームプラン自体が「公式戦にフレッシュな選手で挑む」(ルイス・エンリケ監督)というものらしいため、フル出場の後はお休みかもしれませんが、いやいや、温存上等!

今度はブスケツ(バルサ)、ミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)、ファビアン・ルイス(ナポリ)といった選手たちに働いてもらって、アトレティコ勢はparon(パロン/リーガの中断期間)明けのバルサ戦、CLロコモティブ・モスクワ戦に備え、見学してくれたらいいかと。そうそう、10月から1試合、1得点以上できないゴール不足対策にはモラタのCF連投、オランダ戦ではベンチ外となったオジャルサバル(レアル・ソシエダ)、そして何より、代表戦出場数ヨーロッパ最多記録を作るべく、今度はスタメンとなるラモスに期待が懸かっているようですよ。

え、それでこの1週間、マドリッドの1部チームたちは何をしていたのかって?いやあ、3チーム共、週末は練習休みになるんですが、とにかく両雄はアットホーム感の強いセッションでねえ。というのもアトレティコなど14人、木曜からはマヌ・サンチェスもククレジャの代わりにスペインU21に玉突き招集されたため、大量15人が各国代表に出払っている上、ジエゴ・コスタ、カラスコ、ビトロ、ベルサイコらはまだ負傷のリハバリ中。おかげでマハダオンダ(マドリッド近郊)のグラウンドにはサウール、エルモーソ、レマル、コレア、サポンジッチの5人しか、トップチームの選手がいなかったとか。

マドリーの方も似たり寄ったりで、ええ、こちらにはコロナ陽性で自宅隔離中のミリトン、アザール、カセミロもいますからね。代表招集は11人とお隣さんより少なかったんですが、先週末には筋肉痛のベンゼマ、脛骨亀裂のバルベルデに加え、ルーカス・バスケス、メンディの負傷も判明。よって、ジダン監督が指導できたのはマルセロ、マリアーノ、イスコ、そしてRMカスティージャ所属の第3GKアルトゥーベのたった4人だけって、何せ、彼らの場合は前節のバレンシア戦で4-1という大敗をしただけでなく、代表戦明けにもビジャレアル、そしてCLインテル戦という、強敵相手のアウェイ2連戦が控えていますからね。

いかにチームを立て直すか、ここはジダン監督の腕の見せ所とはいえ、あまりやれることもないんですが、カルバハルとナチョ、両名の復帰が秒読み段階に入っていること、コロナ勢3人も来週の検査で陰性が出れば戻れるのは朗報と言っていい?ただ、今は各国代表でもチラホラ、陽性者が発見されているため、逆に感染して戻って来る選手がいないとも限らないんですけどね。この件に関しては、アトレティコのシメオネ監督にしても、出向しているのが、ウナル(トルコ)、ダミアン、アランバリ(ウルグアイ)、マクシモビッチ(セルビア)、ジェネ(トーゴ)、そしてククレジャと6人だけのヘタフェのボルダラス監督も天に祈るような気持ちでいるのは間違いないかと思います。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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