苦労したのは皆、一緒…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2021年1月12日 22時15分

写真:©Atlético de Madrid

「気温12℃なんて羨ましすぎる」そんな風に私が溜息をついていたのは月曜日、3日間のパンプローナ(スペイン北部)滞在を終え、とうとうレアル・マドリーがマラガ(スペイン南部)入りしたという報を聞いた時のことでした。いやあ、先週末の金曜から、マドリッドのあるイベリア半島内陸部が50年ぶりとも言われる大雪に見舞われる中、彼らはバラハス空港が閉鎖される直前に離陸。夜半に到着したホテル・アルマ・ムガ・ベロソで前泊し、土曜の夜にはエル・サダルでオサスナと戦ったんですが、その頃にはパンプローナも雪まみれだったため、当日帰京ができなかったんですよ。

マドリッドも雪が土曜まで降り続いていたため、チャーター便の出発予定が日曜になっても立たず、しかも昨今のコロナ流行でホテルから一歩も出られなかったというのは気の毒ですが、たとえ、戻れていてもバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場は雪に埋もれていましたからね。とてもトレーニングできる状況ではないということで、この暴風雨フィロメナの影響をまったく受けなかったアンダルシア地方にマドリッドを飛び越えて移動。ラ・ロマレダ(2部マラガのホーム)で木曜午後8時(日本時間翌午前4時)からキックオフのスペイン・スーパーカップ準決勝アスレティック戦の準備をそちらですることに。ここ数日、夜は零度以下に下がる寒波に襲われ、市街の道も雪が溶けてグチャグチャと凍結の繰り返し。日曜には頑張って、プエルタ・デル・ソルまで行ってみたものの、ようよう、外出もままならない私などにしてみれば、最上の選択だったように思えるんですが…。

え、それでも彼らは1部、2部のマドリッド勢の中で唯一、週末に試合ができたラッキーなチームだったんだろうって?その通りで、それも当日、スタジアムのピッチを40人の整備員を使って雪かき。プレー可能な状態にしてくれたオサスナ関係者のおかげで、試合中も絶えることなく降り続く雪のため、いくらか白い部分はあったものの、金曜にはマドリーもバルデベバスの同じような状態のグラウンドで練習していましたからね。むしろ、不慣れだったのは、あとでルーベン・ガルシアも「Nos costaba respirar a veces por el frío/ノス・コスタバ・レスピラール・ア・ベセス・ポル・エル・フリオ(時々、寒さのせいで呼吸するのも大変だった)」と告白していた、前日は雪など影も形もないエル・サダルでセッションを行っていたオサスナの方だった?

それでも先にチャンスを作ったのは相手の方で前半30分にはCKから、オイエルが強烈ヘッド。GKクルトワが何とか、弾いてくれたため、先制点は奪われずに済みましたが、とにかくこの日のマドリーはゴールが遠いんです。ええ、後半にはアセンシオのシュートをGKエレーラにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されたなんてこともあったんですが、16分、ベンゼマが1度は弾かれて、その後また押し込んだゴールはオフサイドで認められず。「Con los cambios buscamos cambiar lo que nos faltaba antes/コン・ロス・カンビオス・ブスカモス・カンビアル・ロ・ケ・ノス・ファルタバ・アンテス(交代策でその前に足りなかったところを変えようとした)」(クロース)と、ジダン監督もバルベルデ、イスコ、マリアーノを投入し、勝利の1点を目指したんですが、43分、最終兵器、CFセルヒオ・ラモスが決めたゴールもオフサイドとなり、スコアレスドローで終了となれば、守り切ったアラサーテ監督のチームを褒めるしかないかと。

うーん、試合後のジダン監督は「Hicimos lo que pudimos, pero no ha sido un partido de fútbol/イシモス・ロ・ケ・プディモス、ペロ・ノー・ア・シドー・ウン・パルティードー・デ・フトボル(ウチはできるだけのことをやったが、あれはサッカーの試合じゃなかった)」と、珍しく怒りを露わにしていたんですけどね。ピッチでインタビューを受けていたクルトワなど、もっと露骨に「ラ・リーガがボクらやラージョにした仕打ちは酷いよ。予報でわかってたことなのに、凍った滑走路から離陸させられて、今じゃ戻れない。Somos humanos y no un espectáculo/ソモス・ウマーノス・イ・ノー・ウン・スペクタクロ(自分たちは人間で見世物じゃないんだ)」と批判。どうやら、バラハス空港の機内で降り続ける雪を見ながら、待機していた4時間、相当怖い思いをしたようですが、まあ、気持ちはわかりますよね。

ただ、それと試合の結果は別の話で、元々、今季の彼らはカディス、アラベス、に負け、エルチェとも引き分けるなど、格下のチーム相手に弱みを見せていますからね。この日も満を持して、プレミアリーグでのプレー経験から、雪と寒さに慣れていると見込まれ、負傷から復帰後、初めて先発に入ったアザールも目立っていませんでしたし、玉突きで右サイドに回されたアセンシオもここ数試合の好調ぶりを持続できず。一応、この勝ち点1で首位のお隣さんとの差が1ポイントに縮まったとはいえ、相手の消化試合が3つも少ないとなると、あまり旨味はなかったかと。

といっても過ぎてしまったことは仕方ないので、今はマドリーもスペイン・スーパーカップ準決勝に集中するしかないんですが、累積警告と負傷でマドリッドに残ったカルバハル、移動当日に筋肉痛でお留守番となったヨビッチは、うーん、この3日間はリハビリしに練習場にも行けなかったと思いますけどね。木曜までに快復はせず、マドリーがアスレティックに勝利して、日曜、セビージャのカルトゥーハで行われるバルサorレアル・ソシエダとの決勝に出ることになれば、復帰できる可能性もあるよう。いやあ、相手も金曜の夜には翌日のアトレティコ戦を控え、飛行機でマドリッドに向かったものの、空港閉鎖で着陸できずにUターン。結局、試合は延期となり、日曜から雪など、まったくないレサマ(アスレティックの練習場)でみっちりトレーニングしていますからね。

マドリーにもこの3日間は気合を入れて準備してもらいたいところですが、一方、その間、週末の予定がポッカリ空いたお隣さんが何をしていたかというと。いやあ、積雪で金曜の練習が中止になって以来、土曜は誰も家から出られず、マルコス・ジョレンテのようにバカンス気分になっていた選手もいたようですけどね。雪が止んだ日曜もマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場には選手どころか、除雪のための整備員すら近づくのが難しく、かろうじて自宅を出られた8人が住居に近い公営ジムで小規模セッションをしただけで、あとは家でプレフェ・オルテガの指示に従ったフィジカルトレをこなすのみに。何せ、3月からのコロナ警戒事態宣言中は自慢の広いお庭でボールを蹴ったりしていた彼らとて、今回はそれすら叶いませんからね。

ようやく日曜になって、主要道路の除雪が済み、暖房用ランプとスタッフの努力でピッチが利用可能となったワンダ・メトロポリターノで練習ができることになった時は皆、ホッとしたかと思いますが、火曜の午後9時30分(日本時間翌午前5時30分)からの、開幕1節で延期されていたセビージャ戦まで、当日正午のアクティベーションを含めて、2回しか、チーム練習ができないというのは不安。それだけに先週末は雪とは無縁のサンチェス・ピスファンでレアル・ソシエダ戦を行い、エン・ネシリのハトトリックで3-2と競り勝ったロペテギ監督が、「tendremos a un rival con cuatro días más de descanso/テンドレモス・ア・ウン・リバル・コン・クアトロ・ディアス・マス・デ・デスカンソ(ウチより4日間以上、休みがあるチームと対戦する)」と文句を言っていたのはちょっと意地悪だったかと。

実際、ルイス・スアレス、ジョレンテ、カラスコ、コケといったレギュラー選手たちは先週火曜のコパ・デル・レイ2回戦、コルネジャ(2部B)相手に敗退した試合にも参加していないため、1週間以上、間が空いているんですけどね。とりあえず、月曜夕方に出発したセビージャもバラハス空港上空で2時間の待機はあったものの、無事に着陸できたようですし、「No hay excusas, circunstancias que hay que llevar hacia adelante/ノー・アイ・エクスクーサス、シルクンスタンシアス・ケ・アイ・ケ・ジェバール・アシア・アデランテ(言い訳はできない。どんな状況でも前進しなければ)」(シメオネ監督)というアトレティコの目指すは勝利一択。そう、禍転じて福と為すというか、コパがなくなったため、この先、リーガは来週ミッドウィークのエイバル戦までなく、その19節はマドリーもバルサもスペイン・スーパーカップのため、前倒しでプレーしていますしね。

おかげでもし、アトレティコがセビージャに勝てば、2位のお隣さんとの差を勝ち点4に、4差まで詰めてきた3位バルサとも7差にして、しばらく優雅な首位生活を楽しめますからね。ちなみにその間、セビージャはこの土曜にコパ32強対決で2部の弟分、柴崎岳選手のいるレガネスとブタルケで対戦。実を言うと、この大雪でマドリッドのチームは皆、被害を受けており、彼らも対戦相手のアルメリアが来られず、先週末のリーガ戦は延期に。アルコルコンも同じ理由でアルバセテ戦が行えませんでしたが、スタジアムだけでなく、練習場も雪まみれなのは皆一緒ですからね。通常状態に復帰するにはまだちょっとかかりそうですが、実はアウェイゲームだったラージョとフエンラブラダなど、もっと大変な目に遭っていたんですよ。

そう、土曜にミランデス戦のあったラージョはコロナ陽性懸念の選手がいたため、金曜午前中にPCR再検査をして、その結果が出るまで出発できず。すでに高速道路で車が立ち往生していた午後7時にマドリッド郊外の練習場をバスで出たものの、5時間かかって25kmしか進めなかった上、自家用車で伴走していたプレサ会長が雪溜まりで動けなくなり、クルトワにまで同情されていたように、選手たちがバスを下りて、車を押すなんてアクシデントも発生したため、最後は引き返すことに。ヒホン(スペイン北部のビーチリゾート)でのスポルティング戦が日曜にあったフエンラブラダも土曜にはバラハス空港から飛行機が出ず、試合は月曜にリスケされたんですが、当日午後までフライトが先送りになったため、アストゥリアス空港からエル・モリノンに直行。そうまでしてプレーした試合で2-1と負けてしまったとなれば、サンドバル監督にはマドリー以上に文句を言う権利があるかもしれませんって。

え、同様にマドリッドから出られず、日曜のエルチェ戦を月曜に延期。日曜午後10時過ぎに翌朝の飛行機に備え、バラハス空港近くのホテルに集合するよう招集がかかり、ラ・リーガが雪で家から出られない選手のため、Uberの車を送ったというヘタフェなんて、真逆の結果を出したじゃないかって?いやあ、そのお迎えも雪道のプロが運転手という訳ではなかったか、カバコやポルティージョが動けなくなってしまった、同僚の乗った車を押したりと、辿り着くまでに苦労したようですけどね。月曜にエルチェに着いた時には試合開始6時間を切っていたんですが、ホント、これはサプライズです。

というのも先週、レンタルでの入団が決まったアレニャ(バルサから移籍)は2度程、チーム練習に加わる時間があったからまだいいんですが、久保建英選手など、練習場が雪で使えず、1度もセッションをせずに招集リスト入り。それだけでもビックリですが、エルチェ戦ではアレニャ先発とはかなり思い切った起用です。更に前半3分にはラウール・グティに先制点を奪われたものの、39分にククレジャがポルティージョのクロスをヘッドして同点に追いつくと、後半早々、マルコネが2枚目のイエローカードをもらって退場したのも、ボルダラス監督にアクセルを踏ませましたかね。後半19分にマクシモビッチに代わり、久保選手投入って、え、それってあまりにデビューが早すぎない?

でも大丈夫、今季前半、ビジャレアルでは十分、見せられなかった実力を新天地では発揮しようと当人も張り切っていたか、後半24分にはエリア内からシュート。それはGKバディアに弾かれてしまったんですが、ゴール前に詰めていたマタが押し込んで、勝ち越し点ゲットとなれば、入団プレゼン前から、ファンへのアピールに成功したと言っていい?そして40分にも彼が送ったクロスが敵のペナルティを引き起こし、PKを獲得したアンヘルが自身で決めて、ヘタフェは1-3で勝利。4試合ぶりにリーガで白星を挙げ、降格圏まで勝ち点差1の17位だったのを一気に13位までジャンプアップ、勝ち点差も4に広げたとなれば、大雪騒動に翻弄されたのもいい思い出にしかならないかと。

ちなみに試合後、ボルダラス監督は久保選手について、「Hoy durante la estancia en el hotel le he explicado lo que podía aportar si entraba al campo/オイ・ドゥランテ・ラ・エスタンシア・エン・エル・オテル・レ・エ・エクスプリカードー・ロ・ケ・ポディア・sポルタル・シー・エントラバ・アル・カンポ(今日、ホテルにいる間、彼にはピッチに入ったら、どのように貢献できるか説明した)」と言っていたんですが、金曜に入団決まる前後にも電話でのコンタクトはあったよう。これぞ、まさしくスペイン語でコミュニケートできる強みかと、私も納得でしたが、この弟分チームも先週、コパ2回戦でコルドバ(2部B)に負け、早期敗退していたのが有利に働きそうな気が。

というのも次の試合は来週、20日(水)のウエスカ戦となるため、月曜は飛行機の関係でエルチェ泊となったチームも帰京する頃には練習場の除雪も済んでいそうですし、そこから1週間以上、じっくりトレーニングできるとなれば、久保選手もチームメートをもっと知ることができますしね。岡崎慎司選手のいるウエスカもコパで敗退したばかりなのは一緒とはいえ、同日、超特急で除雪したアルコラスでのベティス戦でも0-2と負け、変わらず最下位にいるため、ここはヘタフェも絶対、勝ち星を得たいところですが…何はともあれ、この大雪禍節で移動中の事故が起きなかったは本当に良かったですよ。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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