オリジナル10の横浜FMと鹿島の違いを考えた/六川亨の日本サッカーの歩み
超ワールドサッカー / 2022年8月10日 22時0分
J1リーグは第24節を終了し、依然として横浜F・マリノスが首位に立っている。先週末の試合では、川崎フロンターレとの“新旧王者"の対決で、後半アディショナルタイム9分にジェジエウのヘッドから決勝点を許して10試合ぶりの敗戦を喫した。
もしもこの試合を横浜FMが勝利していれば勝点は51の大台に乗っていた。2試合消化の少ない川崎Fが連勝したら2位に浮上するものの勝点は43。残り10試合で逆転が可能かどうか微妙なところ。すでに柏、C大阪、鹿島、広島といった上位陣との対戦は終えているだけに、横浜FMの優位は動かない。
そんな横浜FMの“強さ"の秘訣にシティグループとの提携を指摘できるだろう。宮市亮のたび重なる負傷は、本人はもちろんのこと、チームにとっても痛手だったはず。すると昨日9日のことだ。チームはポルトガル2部モレイレンセの元ブラジルU-17代表だった23歳のFWヤン・マテウスの獲得を発表した。
チームには、得点王レースで首位に立つレオ・セアラを筆頭に、攻撃的なブラジル人選手が4人いる。マテウスは23歳と若いだけに、完全移籍で獲得したのは来シーズン以降を視野に入れてのことかもしれないが、それにしても打つ手が早い。絶えず先を見ての補強には感心するばかりだ。
その一方で、疑問に思ったのが鹿島アントラーズである。かつての“常勝軍団"も16年の優勝を最後に、ここ5シーズンは国内タイトルから遠ざかっている。とはいえ下位に低迷したわけではなく、17年が2位、18年と19年は3位、20年が5位、21年が4位とリーグ優勝こそ逃したもののACL圏内を狙える好位置につけてきた。
にもかかわらず、17年から3年間に渡り監督を務めた大岩剛(現U-21日本代表監督)が19年に退任すると、20年に就任したブラジル出身のアントニオ・カルロス・ザーゴは21年4月に解任。後任の相馬直樹(現大宮アルディージャ監督)も21年末に退任するなど、ここ3年間で3人も監督が交代している。
そしてレネ・ヴァイラー監督である。クラブ初の欧州出身監督で、元スイス代表でもあるヴァイラー監督だったが、横浜FM戦に続き6日に広島に0-2で負けて5位に後退すると、クラブは7日、ヴァイラー監督の解任を発表した。「フットボールにおける現状と今後の方向性について協議した結果、双方合意のもと契約を解除することとなった」と解任の理由を説明し、8日には岩政大樹コーチの監督就任を発表した。
鹿島は20年に就任したザーゴ監督の時代は「ポゼッションスタイル」への変更を模索したものの、すぐには結果が出なかった。しかしヴァイラー監督になり、トレンドである“強度"の高い守備と、“タテに速い"サッカーで一時は首位に立った。
ところが得点源のFW上田綺世がベルギーへ移籍すると、FW鈴木優磨も孤立して深刻な得点力不足に陥った。にもかかわらず、チームはFW染野唯月を東京ヴェルディへ期限付き移籍で、MFファンアラーノをG大阪へ完全移籍で放出するなど、攻撃陣のタレントを失った。
その一方で補強はベルギー2部ベールスホルトから完全移籍で獲得した、ナイジェリア出身のFWブレッシング・エレケだけ。単純計算でも戦力のプラス、マイナスは後者だろう。このため不振・低迷の原因を監督に求めるのは簡単だが、それではいつまでたっても「その場しのぎ」の悪循環を繰り返すだけではないだろうか。
過去にはそうやって衰退し、気付いたらJ2に降格したチームも少なくない。
その点、これまでの鹿島は、フロントのブレない強化方針と確かなスカウティングで数々のタイトルを獲得してきた。いま早急に手をつけるべきは、監督を交代するのではなく、上田に代わる実績のあるストライカーの獲得が急務であることは誰の目にも明らかだろう。さらには中長期的なチームの強化プランの策定も必要である。
かつて“常勝軍団"だったからといって、過去の名声で毎年リーグ優勝できるわけではない。そのことはフロントが一番よく知っているはずだが、19年7月にメルカリが親会社となってから、監督交代のサイクルが早まったことと関係しているのだろうか。
【文・六川亨】
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