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心臓に悪い試合だった…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2022年12月4日 22時0分

写真:©︎RFEF

「さすがに今回は派手派手しく外出していないのかしら」そんな風に私が皮肉に思っていたのは土曜日、ドーハ入り後、2度目のオフをもらったスペイン代表の選手たちの動向が、夜になってもほとんど伝わってこないのに気がついた時のことでした。いやあ、グループリーグ初戦でコスタリカに7-0と大勝をした後、最初にもらった休日にはチームの大半が有名な高級レストランに繰り出し、マルカ(スポーツ紙)などがお店の前でライブ配信していたぐらいだったんですけどね。予定通り、木曜の最終節でグループ1位通過していれば、似たような光景が繰り返されたはずですが、あいにくそうは問屋が卸さず。

日本戦でまさかの黒星を喫した彼らは、いえ、結果的には2位通過で優勝候補のブラジル、アルゼンチンがいるブロックを避けられたため、良かったとも言えなくはないんですが、3位ドイツと同じ勝ち点の2位ですからね。しかもあと5点というゴールアベレージ差を引っくり返すべく、不屈のゲルマン魂を発揮したドイツが最後までコスタリカを攻めてくれたため、何とか2位に留まれたとなれば、W杯が終わって、クラブの練習に戻った時、日本に勝つように頼まれていたカルバハルなど、リュディガーに合わす顔がない?

まあ、それは個人の問題なので別にいいんですが、とりあえず、その木曜の日本戦がどうだったか、お伝えしていかないと。グループ突破は決まっていなかったものの、引分けでも大丈夫というのが影響したか、ルイス・エンリケ監督はこの試合、スタメン5人をローテーション。ええ、カルバハル(レアル・マドリー)、ジョルディ・アルバ(バルサ)、ラポール(マンチェスター・シティ)、アセンシオ(マドリー)、フェラン・トーレス(バルサ)をアスピリクエタ(チェルシー)、バルデ(バルサ)、パウ・トーレス(ビジャレアル)、ニコ・ウィリアムス(アスレティック)、モラタ(アトレティコ)に代えたんですが、2試合目まで途中出場で2ゴールを挙げた、チーム唯一の真正CFを入れたのは一応、正解に思えたんですけどね。

というのも前半11分には、開始早々にふくらはぎに打撲を受けていたアスピリクエタが上げたクロスをエリア内にいたモラタがヘッド。2017~19年にチェルシーで培われたコネクションを生かして、先制点を挙げてくれたからで、この時にはもう他会場でドイツがナブリ(バイエルン)のゴールでコスタリカに0-1とリードしていたため、日本は3位に落ちてしまうことに。それでも森保監督のチームが動揺することはなく、「esperar en la primera y atacar en la segunda/エスペラール・エン・ラ・プリメーラ・イ・アタカル・エン・ラ・セグンダ(前半は待って、後半に攻撃する)」(久保建英選手)というプランを貫いたせいでしょうかね。スペインもとりあえず、リードはしたのだからという気分だったか、0-1のまま、前半を終えたんですが…。

それが後半いきなり、「Hemos entrado en modo colapso/エモス・エントラードー・エン・モード・コラプソ(ウチは崩壊状態になってしまった)」(ルイス・エンリケ監督)のは、うーん、「相手は攻めてくるはずだから、en el descanso les dije que estuvieran atentos/エン・エル・デスカンソ・レス・ディヘ・ケ・エストゥビエラン・アテントス(ハーフタイムには選手たちに気をつけるように言った)」そうなんですけどね。アスピリクエタがカルバハルに交代しただけのスペインに対し、日本が長友(東京FC)、久保(レアル・ソシエダ)に代え、三笘(ブライトン)、堂安(フライブルク)と早めに切り札を投入したのが大当たりしたんですよ。

ええ、これも作戦だったのか、前半はほとんどGKウナイ・シモン(アスレティック)のボール出しにプレスをかけてこなかった日本の選手たちが急に迫ってきたためでしょうか。やっとこ反対側に出したゴールキックをバルデがキープできず、ボールを奪った堂安にエリア前から、シュートを決められてしまったから、驚いたの何のって。それどころか、その4分後、今度は堂安からのパスを三笘がラインギリギリから戻し、ゴール前に詰めてきた田中碧(デュッセルドルフ)に押し込まれているって、スペイン守備陣のザル疑惑はやっぱり本当だった?

うーん、この2点目に関しては、三笘が蹴った時にボールが完全にラインから出ているように見える映像しか流れず、得点の有効性に疑問が残ったんですけどね。主審もVAR(ビデオ審判)からの連絡を受け、モニターを見に行っての判断でしたし、翌日には遅ればせながら、FIFAもボールの端がまだライン上に残っている映像をツィッターで公開。要は正当なゴールということで、ルイス・エンリケ監督もそこに文句をつけることはありませんでしたが、どうやら12分にコスタリカが同点ゴールを入れて、ドイツに追いついたのがパニックモードに拍車をかけたよう。

ええ、13分にはニコとモラタを下げ、フェランとアセンシオを入れ、22分にもバルデとガビ(バルサ)をジョルディ・アルバとアンス・ファティ(バルサ)へと、FW4人で反撃することになったんですが、その直後でした。コスタリカが逆転したという最悪の知らせが入ってきたのは。つまりこの時点でグループ1位は日本、勝ち点で抜かれてコスタリカが2位となり、3位のスペインは「Me enteré de que estábamos fuera, teníamos que marcar/メ・エンテレ・デ・ケ・エスタバモス・フエラ、テニアモス・ケ・マルカル(ボクらが敗退していることがわかって、点を取らないといけなかった)」(ペドリ)という状態に。

もうその頃の彼らは自陣エリア付近に固まる日本勢を完全に包囲して攻めていたんですが、何かこれって、スペイン代表ではよくある光景ですよねえ。ボールを完全に握っていても突破口が見つからず、外側でパスを回すばかりの彼らに私もかなり絶望的な気分になっていたんですが、まさに果報は寝て待てとはこのこと。そう、3分もしないうちにドイツがハバーツ(チェルシー)のゴールで同点としたため、再びスペインは2位に戻ったんですよ!

ちなみにこの魔の3分間、コケ(アトレティコ)を始めとして、ベンチにいた控え選手たちがピッチにいるチームメートにゴールを入れろと、パニック状態でわめいていたにも関わらず、ルイス・エンリケ監督が「Hemos estado eliminados en algún momento?/エモス・エスタードー・エリミナードス・エン・アルグン・モメントー(ウチが敗退していた時間があったのか?)」と、試合後の記者会見でしらばっくれていたのはちょっと不思議。まあ、その後はハバーツが自身2点目、最後はフュルクルク(ベルダー・ブレーメン)も決めて、ドイツが2-4と余裕のスコアで勝ってくれましたからね。

いえ、ようやく敵の守備の隙間を縫って、アセンシオやダニ・オルモ(ライプツィヒ)が撃ったシュートが決まり、引分けになった日には、日本がドイツに抜かれて敗退してしまうところだったため、結局、2-1でスペインが負けたのは最良の結果だったとも言えますけどね。何せこの日の彼らのボールポゼッションは82.3%ともう、異次元の域に到達。それでもゴールが入らないとなると、ルイス・エンリケ監督が「Tenemos que mostrar un poco más de contundencia/テネモス・ケ・モストラール・ウン・ポコ・マス・デ・コントゥンデンシア(ウチはもう少し、決定力を示さないといけない)」と、アトレティコのシメオネ監督みたいなことを言ってしまっても仕方ない?

逆にこの日は17.7%、ドイツ戦での26%をも下回るボール保持率で勝っている日本には感嘆するしかないんですけどね。そんな彼らは月曜午後4時(日本時間翌午前0時)の16強対決でFグループ2位、モドリッチ(マドリー)を擁するクロアチアと対戦。その先には最終節後半ロスタイムのゴールでポルトガルに2-1と勝利、大番狂わせで2位通過を果たした韓国vsブラジル戦の勝者が待っていることを考えると、決して楽観はできないんですが、まあ勝負はやってみるまでわかりませんからね。

それより怖いのは、スペインが火曜午後4時から対戦するモロッコで、こちらはグループ最後のカナダ戦でもツィエク(チェルシー)とエン・ネシリ(セビージャ)のゴールで1-2と勝利し、クロアチアを抑えて首位突破。2戦目のベルギー戦キックオフ直前に気分が悪くなってスタメンを代わった、昨季のリーガのサモラ(失点率が一番低いGK)であるボノ(セビージャ)も復帰しているようですし、他にもアクラフ(PSG)など、知った顔が結構いるんですよ。

ドイツ戦、日本戦でスペインの弱みが、いかなる状況でもゴールキックをショートでしか出さないGKウナイ・シモンと本職ボランチの転向CBロドリ(マンチェスター・シティ)、ラポール、パウ・トーレス、エリック・ガルシア(バルサ)、誰が先発しても不安がある守備陣にあるのもバレてしまったため、スピードのあるエン・ネシリのカウンター攻撃を喰らうんじゃないかとか、今は不安ばかりが沸いてくるのは私だけではない?幸い、試合翌日の練習をお休みしたアスピリクエタ、別調整となったモラタも土曜に再び、ライブ配信に戻ってきたルイス・エンリケ監督によると、試合までに回復できるようなので、負傷欠場がないのは朗報ですけどね。前回のW杯では16強対決ロシア戦にPK戦で敗退したこともありますし、せめてPKぐらいはしっかり練習しておいてほしいところです。

え、すでにマドリッドの1部クラブは皆、12月末の公式戦再開に備え、ミニプレシーズンを開始したようだけど、W杯グループリーグが終わって、戻って来る選手もいるんじゃないかって?そうですね、月曜からマハダオンダ(マドリッド郊外)の練習場でセッションをしているアトレティコでは、カラスコ、ビッツェル(ベルギー)、ヒメネス(ウルグアイ)、そして何より、ウルグアイ代表に出向していたフィジカルコーチのプロフェ・オルテガが来週中には合流できるよう。

木曜にバルデベバス(バラハス空港の近く)でスタートしたお隣さんも、いえ、ベンゼマとアラバはまだバケーション中なんですけどね。クルトワ、アザール(ベルギー)、リュディガー(ドイツ)、ベルベルデ(ウルグアイ)らがカタールを引き上げることになったため、何日かお休みをもらった後、アンチェロッティ監督の指揮下に加わるはずです。その一方ですでにプレシーズンマッチをやっているチームもあって、弟分のヘタフェは水曜にバジャドリーと対戦して、1-0で負けていたなんてことも。W杯に参加していた2人、マクシモビッチとミトロビッチもセルビアがグループ敗退したため、近日中に帰ってくるはずですが、来週木曜、コリセウム・アルフォンソ・ペレスで開催するチバス戦に間に合うのかどうか。

現在、トルコツアー中のもう1つの弟分、ラージョも水曜にはフェルネバフチェと親善試合をして、こちらは3-1で敗戦。土曜にあったガラタサライ戦ではアンドレス・マルティンのゴールで0-1と勝つことができたんですが、9月にエスパニョールから移籍したため、まだラージョでデビューができていなかったRdT(ラウール・デ・トマス)もようやく試合に出ることができたのは嬉しいかと。ちなみに唯一のW杯参加選手、シスはセネガル代表の16強対決イングランド戦が日曜に控えているため、まだ帰りはいつになるかわかりません。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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