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W杯は大詰め、各クラブの準備も最終段階に/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2022年12月17日 15時0分

写真:©Atlético de Madrid

「またゲリラ開催したんだ」そんな風に私が首を振っていたのは金曜日、前の日の午前中、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でレアル・マドリーがW杯後の1部リーガ再開に備え、2部の弟分、レガネスと試合をしたと知った時のことでした。いやあ、コロナ禍でシーズンが中断された3年前から、マドリーは近所のチームを招いて、プレシーズンに完全非公開の練習試合をやってはいたんですけどね。観客がいたは今年の夏のアメリカツアーぐらいで、地元でプレーするにも関わらず、マスコミすら入れないとは意外と恥ずかしがりなのか、秘密主義が徹底しているのか。

とはいえ、それがどんな試合だったかぐらいは漏れてくるもので、木曜のレガネス戦は前後半30分ハーフと通常より短く、ええ、2部はW杯開催中も絶賛進行中で12月に入ってから、イディアケス監督のチームはビジャレアルB、ミランデス、アンドラ戦と3試合連続ドロー中。これで10試合負けなしと聞くと好調のようにも思えますが、白星はそのうち4つだけで未だに12位、昇格プレーオフ圏6位とは勝ち点差5と実質、停滞気味ですからね。来週月曜には年内最終戦となるサラゴサ戦が控えているにも関わらず、兄貴分のリクエストに応えてあげたのは感心ですが、やはりメインとなったのはここまでの公式戦で出番の少ない控え選手たちだったよう。

そこには5日のW杯16強対決クロアチア戦で敗退。結局、日本代表での出場機会がないまま、カタールを後にし、先週末にはチーム練習に合流していた柴崎岳選手も含まれていたんですが、まだ大量にW杯出向選手が欠け、RMカスティージャ(RFEF1部/実質3部)の選手で水増しされたマドリーとは互角の勝負ができたよう。ええ、クロースのゴールで先制されながら、ウンダバレナが同点弾を決め、1-1で引き分けたんですが、アンチェロッティ監督のチームでは、ベンゼマがプレーして、注目を集めることに。というのも彼はフランス代表に招集されながら、ドーハでの合宿中に左太もも痛め、全治3週間となり離脱。

ベルデベバスでしばらくリハビリした後、レユニオン島でバケーションを過ごしたベンゼマはまた先週末から、マドリーの練習に復帰していたんですが、デシャン監督が代わりを追加招集していなかったため、代表の選手リストには未だに当人の名前が。そのせいで、フランスの決勝トーナメント進出が決まった頃ぐらいから、カタールに戻るんじゃないかと言われ続けていたから。とはいえ、その憶測はすっかり外れ、16強対決でポーランド、準々決勝でイグランド、準決勝でモロッコを下したチームは現バロンドール受賞者の不在などものともせず、今では堂々たるファイナリスト。おかげで日曜午後4時(日本時間翌午前0時)からの決勝アルゼンチン戦に応援メンバーとして加わるかもしれないという話になっているんですが、もしフランスがW杯2連覇を達成したら、ベンゼマも優勝メダルをもらえるんでしょうかね。

まあ、そんなことはともかく、マドリッド勢のクラブの選手総勢8人が参加していたW杯準決勝の様子もちょっと振り返っておくと。いえ、日本同様、16強対決モロッコ戦のPK戦で惨敗し、ここ3大会連続の早期敗退で代表がすごすご帰って来たスペインでは、W杯もかなり他人目線にはなっているんですけどね。今週月曜にはルイス・エンリケ監督を引き継ぐ、前U21代表担当のルイス・デ・ラ・フエンテ監督のプレゼンがラス・ロサル(マドリッド郊外)のサッカー協会本部で開催。昨年の東京五輪チームでも指揮を執り、日本を準決勝で破って決勝進出している監督なだけに何となく、ビジュラル的に彼を覚えているファンもいるかと。

残念ながら、その時はブラジルに負けて優勝できずに終わったんですが、デ・ラ・フエンテ監督はスペインのU代表と10年前からのお付き合い。U19やU21でユーロ制覇の実績を残しており、自身の強みは、「He coincidido con dieciochio jugadores del último Mundial/エ・コインシディードー・コン・ディエシオチョー・フガドーレス・デル・ウルティモ・ムンディアル(W杯にいた選手のうち、18人を指揮したことがある)」ことなのだとか。まあ、超飛び級した18才のガビ(バルサ)は例外にしても、アセンシオ(マドリー)、ウナイ・シモン(アスレティック)、カルロス・ソレル(PSG)、ダニ・オルモ(ライプツィヒ)といった中堅から、ペドリ、エリック・ガルシア、バルデ(バルサ)、ニコ・ウィリアムス(アスレティック)、パウ・トーレス、ジェレミー・ピノ(ビジャレアル)と、彼の教え子でもある若い選手の多くなったスペインを率いるには悪い人選ではないかと思いますが、その辺は3月にユーロ2024の予選が始まるまで待ってみないことには。

同時に、「No tengo redes sociales, no las utilize/ノー・テンゴ・レデス・ソオシアレス、ノー・ラス・ウティリソ(私はSNSを持っても使っていない)。自分について知るべきことは全てマスコミを通してになる」とルイス・エンリケ監督より9才年上、61才の彼は強調していたんですが、実はその夜にはまるでタイミングを合わせたかのように前任者が、いえ、W杯期間中の自身のTwitchチャンネルではありませんでしたけどね。スペインの人気ユーチューバー、イバイ・ジャノスのライブ配信に出演。結局、協会からの契約延長オファーはなかったことや、「敗退したのは同じだったかもしれないが、招集メンバーには一人、呼べば良かったと思う選手と呼ぶべきじゃなかった選手がいた。Es buena persona pero.../エス・ブエナ・ペルソーナ・ペロ(いい奴なんだが…)」と後々、ファンがあることないこと、詮議しかねない発言があったなんてことも。

更に「Siento que hemos perdido una oportunidad muy buena/シエントー・ケ・エモス・ペルディードー・ウナ・オポルトゥニダッド・ムイ・ブエナ(とてもいいチャンスを失った気がする)。どの準決勝進出チームもウチより上には見えないからね」なんて聞くと、やっぱり謙虚さが少々、足りない気がしないでもありませんが、今のところ、ルイス・エンリケ監督は過去の人。当人も「Me tienen que querer, si no tengo ofertas.../メ・ティエネン・ケ・ケレール、シー・ノー・テンゴ・オフェルタ(まずは求められないと。オファーがないなら…)と今のところ、アトレティコから彼に声が掛かった事実はないらしいので、あまり気にしなくてもいいんじゃないでしょうか。

おっと、W杯準決勝の話でしたっけ。そう、火曜に先行したアルゼンチンvsクロアチア戦では前半34分、これまで日本、ブラジルとの2連続PK戦でヒーローとなったGKリバコビッチ(ディナモ・ザクレブ)がフリアン・アルバレス(マンチェスター・シティ)を倒し、PKを献上して戦犯になるという悲劇が発生。メッシ(PSG)がこれを決めて先制したアルゼンチンは後半39分にもフリアン・アルバレスが2点目を挙げ、後半24分にもメッシのjugadon(フガドン/スーパープレー)から、またフリアン・アルバレスが3点目という、一方的な展開だったんですが、3-0とスコアに余裕ができたおかげで、41分にはフォイス(ビジャレアル)と共にコレア(アトレティコ)が大会初出場を遂げるという朗報も。

ええ、同僚のデ・パウル、ナウエルがレギュラーとして先発し続けている中、このまま出場時間0で戻ったりすれば、彼も肩身が狭いですからね。これで胸を張って、優勝でも準優勝でもメダルをかけてもらうことができるのは喜ばしいかと。もう37才ながら、力を振り絞って延長戦を乗り越えながら、2年連続決勝出場の夢が潰えてしまったモドリッチ(マドリー)も気の毒ではあったんですけどね。今はちょっと、ずっとリバコビッチの控えだったゲルビッチ(アトレティコ)に土曜午後4時からの3位決定戦で出番が回ってこないか、期待してなくもなかったりして。

一方、水曜のフランスvsモロッコ戦では開始5分早々にゴールが入って、今大会、FWというよりはMFといった方がいいポジションで守備に攻撃にと、大車輪の活躍をしているグリーズマン(アトレティコ)がエムバペ(PSG)に出したパスがその起点に。モロッコ守備陣に邪魔されて、エムバペ自身はシュートできなかったんですが、何とか送ったボールをテオ・エルナンデスが空中キックでゴールに入れたとなれば、初戦のオースロラリア戦前半12分で負傷。以降、プレーできなくなった兄のリュカ(バイエルン)もそれからずっと、左SBの代理を務めている1才下の弟をどんなに誇りに思ったことでしょう。

20分にはキャプテンのサイス(ベシクタシュ)が負傷交代になるなど、逆境に見舞われたモロッコはGKロリス(トッテナム)やゴールポストに阻まれ、なかなか得点が奪えず。とうとう後半34分には、デンベレ(バルサ)に代わって入ったばかりだったコロ・ムアニ(フランクフルト)にエムバペのアシストから2点目を決められて、万事休すとなってしまいましたが、そういえば、コロ・ムアニはヌクンク(ライプツィヒ)のケガによる離脱による追加招集。それを思うと、決してもらったチャンスをムダにしない、意欲旺盛な選手だった?そのまま2-0で勝利したフランスは日曜、アルゼンチンとW杯連覇を懸けて対決することになりましたが、チュアメニ、カマビンガだけでフランス一択のお隣さんと違い、どちらが勝ってもアトレティコにはW杯王者がいるっていうのはちょっと、自慢になるかもしれませんね。

え、そのアトレティコも公式戦再開に向けて、プレシーズンマッチをしていなかったかって?その通りで丁度、水曜のW杯準決勝の時間帯の前にこのparon(パロン/リーガの中断期間のこと)中、たった1回しかない親善試合を実施。2部のポンフェラディーナのクラブ創設100周年を記念して、相手のホームを訪ねたんですが、前日にはシビタス・メトロポリターノで練習、その足でクラブのComida de Navidad(コミーダ・デ・ナビダッド/クリスマス昼食会)を祝っていたなんてことも。その席にはいたものの、当日移動となった試合には月曜から練習に参加しているコケ、マルコス・ジョレンテ、モラタ(スペイン)、一足早く戻ったものの、グループリーグで重労働だったビッツェル(ベルギー)、ヒメネス(ウルグアイ)らのW杯参加組、そして移籍間近ともリハビリ中とも言われるクーニャは参加していません。

その結果、キックオフ時からドシャ降りだったエル・トラリンに立ったトップチームの選手はスタメンとなったGKオブラク、サビッチ、エルモーソ、レイニウド、コンドグビア、レマル、カラスコ、後半に入ったサウールとレギロンの計9人だけだったんですが、いやあ、ポンフェラディーナのYouTubeチャンネルで試合を見ていた私も随分、冷や汗をかかせられましたよ。だってえ、前半30分にはセンターからのスルーパスでドリブルしたエリを誰も止められず、エリア内から決められて先制点を奪われしまう始末。それだけでなく、後半9分にもそのエリのシュートを1度はオブラクが弾いたものの、跳ね返りが相手に当たってゴールを割ってしまうなんて、もしやW杯前、暗黒の5試合連続白星なし期間の運の悪さがまだ続いている?

それが何と、後半30分には怒涛の反撃が始まったから、ビックリしたの何のって!まずはレギロンのFKをレイニウドがゴール前から押し込んで1点を返すと、うーん、もうその後はピッチにはカンテラーノ(アトレティコBの選手)が8人と、ほぼRFEF2部(実質4部)のチームになっていたんですけどね。34分にはCKから回ってきたボールをアルベルト・モレノが決めて同点にしたかと思うと、37分、40分にはカルロス・マルティンがdoblete(ドブレテ/1試合2ゴールのこと)を達成、あっという間にスコアを2-4にして逆転勝利しているんですから、カンテラーノも決して捨てたもんじゃない?こうまでやる気をアピールされては、来週木曜のコパ・デル・レイ2回戦、アレンテイロ(RFEF2部)戦でもシメオネ監督はW杯疲れしている選手より、Bチーム中心で行くことを考えるかもしれません。

いやまあ、実際、金曜の練習を見たところ、丁度、その日から合流したジョアン・フェリックス(ポルトガル)を含め、モラタ、コケ、ビッツェルら、ポンフェラディーナ戦にはいなかったメンバーで仮想スタメンを組み立てていたみたいなんですけどね。1回戦のアルマンサン(RFEF3部/実質5部)戦でも全てトップチームの、しかもほとんどW杯参加選手で賄って、一人もカンテーノを使わず、今季唯一残ったタイトル獲得可能性のある大会に懸けている姿勢を見せたアトレティコだったんですが、いやあ。このW杯中にこの冬の移籍が確定のようになってしまったジョアンなど、すでに行き先候補は複数。

昨夏は1憶3000万ユーロ(約2億円)のオファーを受けながら、その時はまだ、今季こその開花を信じていたヒル・マリン筆頭株主に門前払いを喰らっていたものですが、今ではその彼も移籍を容認していますからね。今季前半のパフォーマンスのせいで株が下がったとはいえ、それでも1億ユーロ(約1億5000万円)以上の移籍金が入るなら、そのマンチェスター・ユナイテッドでも、ブラジル代表のグループリーグ中にヒザのケガで手術、全治3カ月となったガブリエウ・ジェススの代わりを探しているアーセナルでもアトレティコ的には別にいいんじゃないかと思いますが、果たしてコパや年末のリーガ、エルチェ戦にジョアンを出して、負傷のリスクを冒してもいいんでしょうかね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。



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