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珍しいぐらい負けが込んだ…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2023年1月10日 21時30分

写真:©Atlético de Madrid

「何か余裕あるわね」そんな風に私が穿っていたのは月曜日、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でセッションを終えてから、レアル・マドリーはスペイン・スーパーカップのためにリアドに向けて出発。水曜の準決勝の相手、金曜にカディス戦だったバレンシアも中1日多い状態で、同じ日に移動しているんですけどね。木曜のもう1つの準決勝に出るベティスも日曜にマドリッドでラージョ戦を済ませた後、一旦、セビージャに戻り、そちらから、サウジアラビアへと飛んでいるんですが、残りの1チーム、バルサだけは月曜も地元で練習。彼らだけ、火曜に移動すると知った時のことでした。

いやあ、先週末は1部のマドリッド勢が全敗したため、宿敵マドリーに勝ち点3差をつけて、単独首位に立ったバルサが、「Damos un golpe encima de la mesa para ser candidatos a LaLiga/ダモス・ウン・ゴルペ・エンシーマ・デ・ラ・メサ・パラ・セル・カンディダートス・ア・ラリーガ(ウチはリーガ優勝候補としてインパクトを与えた)」(チャビ監督)と楽観的になっているのもわからなくはないんですけどね。おまけに、これは結果論ではありますが、先週になって、3試合の出場停止処分が確定したレバンドフスキは日曜のアトレティコ戦に出ておらず。休養十分でスペイン・スーパーカップに挑めますし、ついでに言うと、来週のコパ・デル・レイ16強対決セウタ(RFEF1部/実質3部)戦はともかく、1部チームとの対戦がほぼ確実な準々決勝、準決勝1stレグでもゴールは保証されているってことにならない?

まあ、そんな先のことまで勘ぐっても仕方ないので、今は先週末の惨々だった試合を振り返っていくことにしますが、そうそう、金曜に1チームだけ、マドリッド勢の面目を保ってくれた弟分がいて、それは2部のレガネス。年が明けて、一気に気温が下がったブタルケでのルーゴ戦には一番厚いヒートテックを着込んで挑んだ私だったんですが、0-0のままだった前半はやっぱり辛かったですねえ。それでもホッカイロで暖を取りながら見ていた後半11分、アルナイスのシュートがゴールポストに弾かれた後、シセがヘッドで先制ゴールを叩き込んで、ファンの体温を上げてくれます。

W杯に行っている間、中盤のスタメンをウンダバレラに奪われてしまった柴崎岳選手も21分にはピッチに入ったんですが、追加点は生まれず、そのまま1-0でレガネスは勝利。順位表をチェックしてみれば、いつの間にか、1部昇格プレーオフ圏の6位に上がっていたため、ビックリすることに。ええ、ちょっと地味ではありますが、彼らの無敗は11試合も続いていますからね。シーズン序盤、2部3年目となる今のチームで昇格を目標とするのに懐疑的だったイディアケス監督もこの調子が続けば、少しは前向きになってくれるかも。

残念ながら、月曜には後に試合をしたチームに抜かれ、7位に落ちていたレガネスですが、2部のリーガ戦はあと20試合もありますからね。ゆっくりでも順位を上げていってくれればいいんですが、そんな好スタートを切った週末が翌土曜から一転するとは!そのトップバッターはマドリーで、ラ・セラミカでのビジャレアル戦だったんですが、異変はスタメン発表の時からで、何とアンチェロッティ監督はスペイン人選手を1人もイレブンに入れず。とりわけ近年はベッカム、ロナウドらのギャラクティコ時代にしろ、BBC(ベンゼマ、ベイル、クリスチアーノ・ロナウド)時代にしろ、外国人スターが跋扈するチームではありますが、実はこれ、4435試合を数えるクラブ公式戦史上初めてのことなんだとか。

といっても私が見ている分にはそれ程、違和感はなかったんですが、試合の方は前半、コケリンのtaconazo(タコナソ/ヒールキック)がゴールポストに当たったり、ルリのアヤックス移籍が決まった後、40才にして正GKとなったレイナがビニシウスのシュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)したりと絶好機は幾つかあったものの、0-0のままで終了。それがまさか、後半開始早々、メンディのパスミスをキッカケにジュラール・モレノがエリア前からジェレミー・ピノにラストパスを送り、うーん、そのシュートにGKクルトワは触ったようなんですけどね。

「No sé si la desvío suficiente para ir al palo pero Mendy pasa por detrás y la mete dentro/ノー・セ・シー・ラ・デスビオ・スフィシエンテ・パラ・イル・アル・パロ・ペロ・メンディ・パサ・ポル・デトラス・イ・ラ・メテ・デントロ(ポストに行くのに十分、逸らせたかはわからないけど、メンディが後ろに来て、ボールを中に入れちゃった)」(クルトワ)とはまさに踏んだり蹴ったり?ただ、15分にはマドリーにも運が巡ってきて、いえ、最初はベンゼマがガラ空きのゴールにシュートしたボールをビジャレアルがDF3人で死守した際、誰かの腕に当たったのかと思ったんですけどね。VAR(ビデオ審判)に呼ばれてモニターを見に行った主審は、その前のプレーでビニシウスを止めようとしたフォイスの手に上からボールが落ちてきたのをハンドと判定。

ベンゼマがPKを決めて、同点に追いついたマドリーだったんですが、それから3分もしないうちに今度はフォイスのパスが丁度、エリア内で転んたアラバが立ち上がろうとした時に手に当たってしまったから、さあ大変!例外となる「体を支えるために地面についた手、もしくは支えにいく途中の手」に該当しなかったせいで、これもペナルティにされてしまうって、いくらアンチェロッティ監督は「サッカーのハンドの意味は変わってしまった。Si se toca con la mano y no está cerca del cuerpo es penalti/シー・セ・トカ・コン・ラ・マノ・イ・ノー・エスタ・セルカ・デル・クエルポ・エス・ペナルティ(ボールに触れた手が体の近くにないとペナルティになる)」と達観していたって、釈然としないファンは多いのでは?

それもジェラール・モレノがPKを勝ち越し点に代えた後、メンディとチュアメニをロドリゴとルーカス・バスケスに、更にはカマビンガ、アセンシオも投入したマドリーがお家芸のremontada(レモンターダ/逆転劇)に成功していたら、そこまで問題にはならなかったんですけどね。この日はビニシウスもシュート精度がなく、それどころか、ロスタイムのCKで全員攻撃した折りなど、クリアされて、絶体絶命のカウンターを喰らう始末。幸い、全速力で戻るクルトワの先を越して、誰もいないゴールに向かって行ったダンジュマのロングシュートが外れてくれたから、良かったものの、2-1でも負けは負け、ラージョ戦以外、無敗だったマドリーですが、とうとう今季2敗目を喫してしまいましたっけ。

え、ここ5年、ラ・セラミカではビジャレアルに勝てていなかった彼らとなれば、それ程、驚く結果ではないんじゃないかって?それはそうなんですが、丁度、その日のお昼にはコパ16強対決の組み合わせが決まって、マドリーは来週もラ・セラミカを再訪するんですよ。何せ、今季序盤にエメリ監督がアストン・ビラに河岸を変え、セティエン監督が赴任した当初は勝つのに苦労していた相手ですが、「El parón del mundial nos ha venido bien para trabajar las idas del nuevo entrenador/エル・パロン・デル・ムンディアル・ノス・ア・ベニードー・ビエン・パラ・トラバハル・ラス・イデアス・デル・ヌエボ・エントレナドール(W杯のリーガ停止期間は新監督のサッカースタイルを学ぶのに良かった)」(アルビオル)おかげで今や、6位まで上がってきましたからね。

その上、月曜にはチュアメニとアラバがどちらもふくらはぎを痛め、全治約3週間というショックなニュースも。水曜午後8時(日本時間翌午前4時)からのスペイン・スーパーカップ準決勝は元より、ここリーガ8試合で1勝しかしておらず、ニコ・ゴンサレスとサム・カスティジェホも負傷でいないバレンシアに勝った暁には日曜のベティスvsバルサ戦の勝者と優勝を争う決勝、それ以降もしばらく2人共、使えないとないのは辛いかと。一応、カルバハルとマリアーノは回復して、飛行機に乗っているんですけどね。リーガの首位奪還を含め、マドリーが今季の目標、Sextete(セクステテ/リーガ、CL、コパ、UEFAスーパーカップ、スペイン・スーパーカップ、クラブW杯の6冠優勝のこと)の達成できるかどうかの分水嶺がいよいよ、この1月に到来したようです。

そして翌日曜は更に真っ暗で、いやホント、雨模様だったせいで、午後4時15分からのエスタディオ・バジェカスも夜のようで、ベティス戦の間中、強風にさらされて、寒いなんてもんじゃなかったんですが、ラージョも開始7分にGKディミトリエフスキがパンチングしたボールがバリウの背中に当たり、オウンゴールで先制されてしまうという、間抜けなスタートを切ることに。それでも19分にはルジューヌのシュートをGKルイ・シウバが弾いたところ、レンタル修行中のアトレティコのカンテラーノ(ユース出身の選手)、カメージョが抜け目なく押し込んで追いついたんですが、40分にはエリア外からルイス・エルナンデスが決めて、ベティスが再びリード。

攻めまくった後半18分にはエリア内右奥、角度のないところから、イシのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)が生まれ、スタンドも歓喜に沸いたんですが、VARでその前のプレーをチェックされ、オフサイドだったことがバレてしまってはねえ。その後は4年ぶりにラージョに復帰、エスパニョールからの移籍が夏の市場クローズ後だったため、これまでデビューできなかったRdT(ラウール・デ・トマス)を始め、エヌテカ、ファルカオ、アンドレ・マルティンと投入し、「終盤にファルカオやラウールが入れば、敵の脚も震えるかもしれない」(カメージョ)というのがイラオラ監督の考えだったかは定かではありませんが、総勢5人ものFWで攻めながら、最後まで1-2のスコアは変わらず。2023年のラージョ初勝利は土曜のバジャドリー戦までお預けとなりました。

その後、私がメトロでシビタス・メトロポリターノに移動する間、サンチェス・ピスファンでセビージャ戦をプレーしたヘタフェも前半36分にはラキティッチのFKをアクニャに、後半35分にもオリベル・トーレスのクロスをラファ・ミルにどちらもヘッドで決められ、いやあ、残り3分にはボルハ・マジョラルがこちらも頭で1点を返し、惜しいところまで行ったんですけどね。他にもあったチャンスに決めきれなかったのが仇となり、マドリー、ラージョに続いて、こちらも2-1で敗戦。8位の弟分仲間とは違い、キケ・サンチェス・フローレス監督のチームは13位とはいえ、この勝利でようやく降格圏を脱出したセビージャと同じ勝ち点で18位にいるカディスと2ポイント差しかありませんからね。

日曜のエスパニョール戦では、何としてでもコリセウム・アルフォンソ・ペレスのファンを勝利で安心させてあげないといけませんが、こうなるとスポルティングの後塵を拝したラージョ同様、32強対決で2部のレバンテに負け、コパの重荷がもうないのはむしろ吉?といっても本来なら、リベンジを頼みたい兄貴分自体、マドリーにとってのビジャレアルと同じで、シュタット・デ・バレンシアでのレバンテ戦が鬼門ですからね。来週水曜にセッティングされたコパ16強対決でもアトレティコが詰んでしまいそうで怖いんですが、バルサ戦でも彼らはやらかしてくれたんですよ。

そう、「No fue el planteamiento, es algo mental, entramos con miedo o freno/ノー・フエ・エル・プランテミエントー、エス・アルゴ・メンタル、エントラモス・コン・ミエードー・オ・フレノ(戦術のせいじゃなくて、メンタル的な何か。ボクらは恐れを抱いてか、ブレーキをかけながら、スタートしてしまった)。ゴールを入れられた後、目が覚めたんだけど、これはよくあることで、自分には原因がわからない」と後でオブラクも告白していたんですけどね。ほぼ満員となったスタンドに全力で応援されながら、眠ったままピッチに入れるのはホント、アトレティコぐらいしかいませんって。案の条、前半22分にはペドリにドリブルで5人抜きされ、エリア内でオールを受けたガビがクルリと回ってラストパス。

もちろん、しっかりシュートを決めたデンベレも見事ですが、もう背中に目がついているようにパスが出せる18才のガビを見るだけで、周りに誰もおらず、しっかり味方の位置を確認する時間もありながら、パスを届けられない19才、売り出し中のカンテラーノ、バリオスとの差をヒシヒシと感じてしまったのはきっと私だけじゃない?リードされてからは必死になって反撃したアトレティコでしたが、今度は「Se tiene se puede entrenar, pero o la tienes o no la tienes/シー・ティエネ・セ・プエデ・エントレナール、ペロ・オ・ラ・ティエネス・オ・ノー・ラ・ティエネス(持っていれば練習もできるが、持っているか、持っていないかだから)」(シメオネ監督)という決定力の壁が立ち塞がったから、たまったもんじゃありませんって。

うーん、今季はW杯準優勝したフランスでも司令塔として開花したのはいいんですが、めっきりゴール数が減少。家族でピンクと水色のどちらにするか、投票で決めたところ、奥さんのエリカさん、娘のミアちゃん、アルバちゃんに対して、味方が長男のアマロ君しかおらず、結果、髪をピンクに染めたというグリーズマンなど、1人で7本もシュートを撃ったんですけどね。ジョアン・フェリックス、後半途中に入ったモラタも不発では一体、どうしたらいいものやら。だからといって、ロスタイムにフラスレーションの溜まったサビッチがフェラン・トーレスとlucha libre(ルーチャ・リブレ/プロレス)もどきのつかみ合いをして、両者レッドカードで退場してもいい訳ではありませんけどね。最後にゴール前からのグリーズマンのシュートもアラウホにクリアされ、アトレティコも0-1で負けて、マドリッド勢のブラックサンデーを締め括ってくれましたっけ。

おかげで首位との差が勝ち点14に広がったのはともかく、CL出場圏の4位をベティスに明け渡し、5位に落ちてしまったことの方が痛いんですが、まあ、これは日曜のアルメリア戦で挽回するしかないかと。一点だけ不思議なのは、最高のパフォーマンスを示して、移籍の高額オファーをゲットしたかったジョアンはその試みに失敗したはずなのに、月曜にはチェルシーへのレンタル移籍が秒読みに入ったという報が入ったことで、まあ、先日はクーニャもレンタルでウォルバーハンプトンに行ってしまいましたしね。レバンテ戦の結果次第では、コパでまだゴールが必要になるかもしれないため、せめてそこまでは待った方がいいかとは思いますが、もしかしたらこの件、水曜にシメオネ監督のチームがマハダオンダ(マドリッド郊外)での練習に戻る前に片がついているかもしれませんね。



【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。



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