1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. サッカー

PK戦じゃない結末が見たい…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2023年1月14日 21時0分

写真:©︎RFEF

「そりゃ懐かしいわよね」そんな風に私が納得していたのは金曜日、アル・ナセルの練習場でセッション中のレアル・マドリーをクリスチアーノ・ロナウドが訪問したという記事をマルカ(スポーツ紙)で見つけた時のことでした。いやあ、ロナウドは昨年のW杯期間中にマンチェスター・ユナイテッドとの契約を解消し、年末にサルジアラビアのクラブに入団。まだ公式戦デビューはしていませんが、まさか、計ったように4年半前まで在籍した古巣のチームが新天地のグラウンドで練習してくれるとは!

一緒にDecima(デシマ/10回目のCL優勝のこと)を達成したアンチェロッティ監督を始め、ベンゼマ、クロース、モドリッチ、ナチョ、ルーカス・バスケス、カルバハル、アセンシオら、当時の仲間と旧交を温めるにはこれ程、いい機会はありませんが、一体、何で彼らがリアドにいるかというと、マドリーはスペイン・スーパーカップに参加中。この水曜には昨季のリーガ優勝チームとして、準決勝でコパ・デル・レイ準優勝のバレンシアに勝利し、日曜の決勝を待っているから。

ちなみにこの準決勝のカードは2020年のスペイン・スーパーカップのリピートだったんですが、ほんの3年前のことなのに、あちらでは今も残っているメンバーがガヤ、ディアカビ、パウリスタの3人だけ。もちろん、当時も1-3と負けていましたし、もう3年連続、ヨーロッパの大会とも無縁という事情もあって、というか、ピーター・リン会長が選手を入れ替え過ぎたためにそうなったというか、その辺の因果関係は微妙なんですけどね。

とりあえず、その準決勝から振り返っていくことにすると、遠征前にふくらはぎの負傷でお留守番が決まったアラバ、チュアメニを欠いていたものの、アンチェロッティ監督はモドリッチもベンチで温存する余裕を見せてキックオフ。比較的、マドリーの方がよく攻めていた前半でしたが、先制点はキュメルトがエリア内にドリブルで入ったベンゼマを倒し、ペナルティをゲットするまで待たされることに。もちろん、PKはベンゼマ自身がソツなく決め、これでW杯後にリーガ再開してから、3試合連続のPKゴールでチームにリードをもたらしてくれたんですが、久々の大舞台に張り切るバレンシアも後半には意地を見せてくれます。

ええ、前半中にイエローカードをもらい、加えて脚を打撲したカマビンガがモドリッチと代わったなと思う間もあらば、後半開始早々、ラトのクロスを、いやあ、もう撃っても撃ってもゴールが入らないどこぞのチームを見る度、フロントの判断は誤りだったんじゃないかと私もホゾを噛んでいるんですけどね。昨年夏にアトレティコに入団しながら、即座にバレンシアにレンタルされたサムエル・リノがゴール前から押し込んで、GKクルトワを破ってしまったから、ビックリしたの何のって。

その後、ルーカス・バスケスの負傷、シュートを顔面ブロックしたミリトンの眩暈で、直前までリハビリ中だったカルバハル、メンディを投入せざるを得なくなったマドリーはビニシウス、バルベルデのシュートもGKママダシビリに弾かれ、後半終了までに勝ち越し点を奪うことはできず。1-1のまま、試合は延長戦に入ったんですが、その前半は再び、ママダシビリが活躍します。ビシウスやクロースのシュートを弾いて失点を回避すると、その後半にはサムエル・リノに代わって入っていた2004年、リーガとUEFAカップ(現EL)2冠優勝を遂げたバレンシア黄金時代のメンバー、ルフェテの息子さんであるフラン・ペレスにビッグチャンスが。

ええ、ガットゥーゾ監督も「中央にカバーニがパスを受けるため来ていたのにシュートしてしまった。Cualquier jugador con su edad le habría pasado/クアルキエル・フガドール・コン・ス・エダッド・レ・アブリア・パサードー(彼の年齢の選手なら、誰でもパスしただろう)」と呆れていたんですけどね。おかげでクルトワにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまい、両チームとも決勝点を挙げることなく、いよいよ勝負はPK戦に突入です。これがまた、W杯では日本やスペインが16強対決で恐ろしいPK音痴ぶりを披露して、敗退していった記憶がまだ自分の頭の中に残っていたため、あまりいい予感はしなかったんですが…。

そういうところは肝が据わったマドリーですから、全然大丈夫。「Tiraron primero los tres con más experiencia/ティラロン・プリメーロ・ロス・トレス・コン・マス・エクスペリエンシア(最初の3本を最も経験のある選手が蹴った)」とアンチェロッティ監督も言っていたように、百戦錬磨のPKの達人、ベンゼマ、モドリッチ、クロースが成功させたのに対し、バレンシアは最初のカバーニにこそ余裕があったものの、2番手のキュメルトは大きく枠を外してしまいます。

それでもイライクス、ギジャモンが決めて、一旦は持ち直したように見えたんですけどね。「Mente en blanco y yo dejo que surja, depende de lo que me pida el cuerpo/メンテ・エン・ブランコ・イ・ジョ・デホ・ケ・スルハ、デペンデ・デ・ロ・ケ・メ・ピダ・エル・クエルポ(頭を空っぽにして何か起きるのを待つんだ。自分の体が頼むこと次第だね)」というアセンシオがマドリーの4本目を入れた後、まさか、バレンシア5人目のキッカー、キャプテンのガヤがクルトワに弾かれてしまうとは!

うーん、これでマッチMVPをもらったクルトワは、「PKのビデオを見るのさ。ガヤは前に左側に蹴って止められた後、その次は真ん中に蹴って決めた。Por eso supe que iría al medio o a la derecha y me quedé a medio camino/ポル・エソ・スペ・ケ・イリア・アル・メディオ・オ・ア・ラ・デレッチャ・イ・メ・ケデ・ア・メディオ・カミーノ(だから、真ん中から右側に蹴るってわかっていて、ボクはその間に留まったんだ)」と言っていたんですけどね。おかげで5人目のキッカーだったビニシウスまで順番が回ることなく、マドリーはPK戦2-4で決勝への切符を手に入れることに。

え、それでもリーガ11位のバレンシアにここまで苦労するとは、やっぱりリーガ再開後のマドリーはまだ本調子じゃないんじゃないかって?そうですね、W杯に参加した選手が11人と多かったのも影響しているんでしょうが、直前のリーガではビジャレアルに負けていましたし、まだまだゴール力に溢れた、昨季doblete(ドブレテ/リーガ、CLの2冠優勝)達成のスーパーチームの姿は戻っていない感はありますが、まあ、心配し過ぎるのも何ですからね。

というのも翌木曜、もう1つの準決勝の方も、いえ、丁度、リーガ前節では昨季のコパ王者ベティスがラージョに、リーガ準優勝のバルサがアトレティコに勝つところを目の前で見ていたため、気になって、また近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に私も行ってしまったんですよ。ビッチリ満員だった前夜とは違い、その日は埋まっていないテーブルもあったのは会場のキング・ファハド・インターナショナル・スタジアムも大体、同じとはいえ、一応、バルサは前半22分にペドリのゴールがオフサイドで認められなかった後、40分にはデンベレのラストパスを、リーガでは3試合の出場停止処分となり、シビタス・メトロポリターノに来なかったレバンドフスキが、1度はルイス・フェリペに当たったシュートを撃ち直して先制点に。

後半32分には、エスタディオ・バジェカスで決勝点を挙げたルイス・エルナンデスがフェキルに送り、そのシュートでベティスが同点に追いつくと、そのまま1-1で試合は延長戦に入ります。そこでも因果は巡り、ええ、せっかくその前半3分にFKをカルバーリョがクリアしたボールをアンス・ファティがgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)にしてリードを奪いながら、11分にはローレンのtaconazo(タコナソ/ヒールキック)で2-2にされてしまってはねえ。要はこちらもPK戦となり、3人目のファンミ、4人目のカルバーリョをGKテア・シュテーゲンが弾いてくれたおかげで、レバンドフスキ、ケシエ、アンス・ファティ、ペドリが続けて成功したバルサが2-4で勝ったんですが、もしや、現在リーガ首位のバルサもそれ程、違いを見せつけていなかった?

ただ、不思議なことにこちらのMVPはペドリとなり、当人も「Marc se lo merecía mucho más que yo y gracias a sus paradas estamos en la final/マルク・セ・ロ・メレシア・ムーチョ・マス・ケ・ジョ・イ・グラシアス・ア・スス・パラダス・エスタモス・エン・ラ・フィナル(自分より、テア・シュテーゲンの方がずっとこの賞にふさわしい。彼のセーブのおかげでボクらは決勝に行けたんだからね)」と言っていたんですけどね。

この分だと、サルジアラビアのファンも待ち侘びている日曜午後8時(日本時間翌午前3時)からのクラシコ(伝統の一戦)決勝はそれぞれ、「Espero que el domingo no tenga que hacer ninguna parada/エスペロ・ケ・エル・ドミンゴ・ノー・テンガ・ケ・アセール・ニングーナ・パラダ(日曜は1回もセーブをしないで済むことを期待している)」(クルトワ)、「Me gustaría tener menos trabajo en los partidos/メ・グスタリア・テネール・メノス・トラバッホ・エン・ロス・パルティードス(試合での仕事はもっと少ない方がいい)」(テア・シュテーゲン)という、あまり働きたくないGK対決になる?

ちなみにスペイン・スーパーカップの優勝回数ではバルサが13回、マドリーが12回と競っているんですが、直近の対決はまだ2試合制だった2017年。この時はカンプ・ノウ、サンティアゴ・ベルナベウを満員にしたファンの前でマドリーが総合スコア5-1で圧勝していて、今いるメンバーではアセンシオが2本、ベンゼマが1本ゴールを決めています。何せ、今季前半戦のリーガクラシコでもマドリーは3-1で勝っていますからね。唯一、心配なのはルーカス・バスケスが足首の負傷で全治1カ月半、カマビンガとミリトンも回復状況次第というアンチェロッティ監督のチームに対して、チャビ監督の方はベティス戦で途中交代となったデンベレもデ・ヨングも問題なく、全員プレーが可能というところですが、せめてこの試合ぐらいは90分で決着がついてくれることを願っています。

そしてラ・リーガの計らいで17節のベティスvsバルサ戦は2月1日、マドリーvsバレンシア戦は同2日に先送りされている脇で、他のマドリッド勢はこの週末もリーガ戦があるんですが、先陣を切るのは土曜にバジャドリーのホームに乗り込む弟分のラージョ。こちらはいいニュースと悪いニュースがあって、丁度、水曜にベティスのアレックス・モレノのアストン・ビラへの移籍が1350万ユーロ(約19億円)で決まり、彼がその前にいたラージョにも130万ユーロ(約1億8000万円)が入ってくることになったため、冬の市場での軍資金が少し増えたのは朗報。残念なのはベティス戦で再デビューを果たしたRdT(ラウール・デ・トマス)がまたしてもヒザの靭帯を痛め、休場になってしまったことでしょうか。

まあ、リーガ再開後、2部のアラベスに負けたコパも含めて3連敗しているバジャドリーは現在9位、コンフェレンスリーグ出場圏の7位まで勝ち点3というイラオラ監督のチームにとっては、2023年初白星を挙げるにはいい相手かもしれませんけどね。ちょうどそちらと同じレベル、降格圏から勝ち点2しか離れていない13位の弟分仲間、ヘタフェの方が日曜のエスパニョール戦でより必勝が求められるかと。そちらには丁度、木曜に昨季後半はボルハ・マジョラルと一緒にローマからレンタル移籍して、1人だけ帰還。今季前半もサンプトドリアに貸し出されていたゴンサロ・ビジャルが今度は買取オプション付きで到着しています。

彼ならクラブにも馴染んでいるはずですし、降格圏19位に落ちている相手を倒して、コリセウム・アルフォンソ・ペレスのファンを喜ばす助けをしてくれるはずですが、やはり一番気掛かりなのは前節をCL出場圏外5位で終えたアトレティコ。というのも火曜にロンドンで目撃されたジャアン・フェリックスのチェルシーへのレンタル移籍がとんとん拍子で決まり、うーん、半期でレンタル料1100万ユーロ(約16億円)というのは、早くもウォルバーハンプトンで3試合に出場して買取オプション条件をクリア。5000万ユーロ(約70億円)での完全移籍が決まったクーニャと共に、今年はヨーロッパの大会がまったくなく、厳しいクラブの懐には有難い話ではあるんですけどね。

チェルシー入団が決まった後、「I’m a player that wants to have the ball and play with happiness(ボクはボールを持ちたい、幸せにプレーしたい選手)」と言っていたジョアンが木曜のフラム戦で先発デビュー。あろうことか、危険なタックルを敵にかまして一発退場してしまったことは、こちらは買取オプションがなく、夏には2027年まで契約を延長したアトレティコに戻ってくるため、まあいいんですが、おかげで今、シメオネ監督のチームにはFWがモラタ、コレア、そしてほぼMF化しているグリーズマンだけしかいないんですよ。

おまけに今週はカラスコも負傷と、ただでさえ、ゴール日照りに見舞われがちな彼らにとってはいくら、日曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からの対戦相手がヘタフェ、バジャドリーと同じ勝ち点のアルメリアとはいえ、不安しかない?といっても補強候補ナンバーワンのメンフィス・デパイはバルサがスペイン・スーパーカップ決勝を終えないと、戻って来ませんからね。

DF陣でも前節、フェラン・トーレスとプロレスもどきのガチンコ対決を繰り広げ、2試合の出場停止処分を受けたサビッチに代わってスタメンに入るエルモーソがこれまた、レッドカード常連とあって、攻守に心配の種は尽きず。せめて4位のベティスに試合のないこの週末、何とか勝ち点3を貯めて、CL出場圏に返り咲いてほしいものですが、さて。実際、首位バルサとは勝ち点14、2位のお隣さんとも11もの差がありますからね。今や、アトレティコファンが望めることはそのぐらいしかないんですよ。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください